[2018_07_18_04]豪雨災害で原発にも影響 伊方原発(四国)、泊原発(北海道)で浸水、敦賀原発(福井県)でフェンスの破損 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)(たんぽぽ舎2018年7月18日)
 
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豪雨災害で原発にも影響 伊方原発(四国)、泊原発(北海道)で浸水、敦賀原発(福井県)でフェンスの破損 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)

◎ 豪雨災害により広島、岡山県など広範囲で大規模な土石流、洪水被害が発生し、200名以上が死亡、行方不明になりました。ご冥福をお祈りすると共に被災された方々に御見舞い申し上げます。

◎ 深刻な災害になった原因の一つが、中国地方に頻発していた地震の影響との指摘があります。
 最大震度6弱を観測した2016年10月21日の、中国地方を震源とするマグニチュード6.6の地震、あるいは水害の中心地になっている広島県南部に影響を与えた2014年3月14日の地震(マグニチュード6.1、最大震度5強)などがありました。

◎ 中国・四国地方は中央構造線の動きやフィリピン海プレートの沈み込みの影響で地盤に歪が溜まりやすく、東北地方太平洋沖地震の影響もあって、最近は特に地震が頻発しています。
 直接の被害が小さくても地盤に亀裂が入れば、大雨の時土砂崩れのきっかけになるでしょう。地質的には亀裂が入りやすい土壌で、立木が根こそぎ崩れ落ちる表層崩壊が多発したこと、山裾間際まで宅地開発がされていたことでも被害が大きくなりました。
 中国、四国、九州地方の地盤や地質は、花崗岩質の岩盤が風化して出来たマサ土(真砂)が多く、もともと崩落しやすいところに地震と大雨が重なったのだと思います。

◎ さて、西日本では原発は平たいところに建っていません。後背地に山を抱えるところが多く、地震や豪雨災害で崩落した場合のリスクは大きいと思います。
 その警告であるかのごとく、今回の豪雨災害時の雨で伊方原発と北海道泊原発で雨水の流入、敦賀原発では敷地で崩落が発生し、敷地境界フェンスが倒壊したというのです。

 この問題で私は、川内原発の審査結果に対する異議申立を行い陳述しました。それを引用します。これは川内に限った話ではなく、大飯、高浜など後背地に崖や山を抱えるところ、造成地盤のある柏崎刈羽原発も同じことです。

◎ 地震本部に置かれている地震調査委員会は中国地方のマグニチュード6.8以上の地震発生予測を今後30年間に50%、島根原発のある北部は40%としています。
 原子力規制委員会は島根原発で想定した地震が宍道断層の断層長さ32キロでマグニチュード7.7、基準地震動820ガルとした中国電力の評価を妥当としています。
今後この基準地震動評価についても問題としなければなりません。

「陳述書」2015年6月26日より

地盤安定性

◎ 大雨が降る度に、どこかで土砂崩れ災害が起きるのが南九州地方の現実である。火山灰質の土地柄で切り立った崖地も多いから仕方がない面もある。
 川内原発も同じように、堆積土の地層と火山灰質の地層が混在する地盤に建っている。地盤が悪いことは立地段階でも問題を起こしていた。
 通常、原発の立地地点には安定した地盤が要求される。建設前には地盤の安定性を調査するためにボーリングが行われるが、成績の悪いボーリングコアは捨てられ、差し替えられた。
 これが内部告発で明るみに出ると、国会でも取り上げられ、大きな事件に発展した。
 九州電力はコアを捨てたことは認めたが、あくまでも不必要なコアなので問題ないと主張した。
 しかしボーリングにはコストが掛かるしボーリングがおこなえる場所も無限にあるわけではないので、「不要なコア」が捨てるほどあるとは考えられない。
 まして「地盤の脆弱さ」が明らかになるようなボーリングコアを捨てたのならば、それは証拠隠滅である。誠実に地盤調査をして質の悪い場所をきちんと報告していたら立地できない。そう考えてコアを差し替えたと考えるのが自然である。そのような調査は、そもそも不正である。それだけでも立地不適とすべきだった。

◎ 国に提出する資料や国の検査では、必要以上にデータを「きれいに見せたい」
ために改ざんしたり、施設内部を「きれいに見せる」ために過度に清掃するなどの出来事はよく起きる。実態を隠し、検査に合格するために必要な水準以上の「取り組み」を行うため、余分な被曝もする。
 ボーリングコアの差し替えは、川内だけでなく北陸電力志賀原発でも目撃され写真も撮られた。こういう背景のある場所なので、ただでさえ疑わしいのだが、九州電力は地盤安定性の評価書の図面や配置図などを白抜きにして公表した。やはり後ろめたいことをしている自覚があるのだろう。

◎ それでも、わずかに分かる所を見て驚いた。地盤安定性とは、特に地盤崩壊に対して安定であるかをみるのだが、例えば1を下回ると崩落の可能性のある「安全率」については、原発の後背地斜面に相当する場所で「2」という数字が書かれていた。
 これはあまりに小さすぎる。せめて安全率は3を超える値が必要だ。
 福島第一原発事故では、5、6号機への外部送電鉄塔が建っていた場所の上が崩落し、巻き込まれた鉄塔が倒壊、送電線が切断された。地震に伴う地盤変状、つまり液状化が崩落の原因になったと見られる。

◎ この地盤の安定性は、事故後に東電が解析したところ「0.6」であったという。
1を下回っていたから崩れて当然といわんばかりだが、事故前に評価をしていたら「2」などとしていた可能性は高い。
 逆に、1以下と評価していて何の対策もしていなかったならばそれだけで違法だ。ただし対策はさほど難しくも高コストでもないから評価値は一定以上あったのだろうと思われる。

◎ 川内原発で「2」とされた地盤に「累積雨量が1000ミリを超える豪雨の後に襲う基準地震動を超える地震」という条件を与えて解析したらどうなるだろうか。
 現在進行形で、九州南部を襲っている豪雨被害の数値だ。おそらく一瞬にして崩れ落ちる。
 そのうえ、図面で見て取れる崩落の仕方は「深層崩壊」であり、深い場所の地層境界に沿っての崩壊になると考えられるのだ。これでは原発は埋まってしまうだろう。

まとめ
 以上が、川内原発が運転できない理由だ。それを認めない規制委員会の今回の
決定は、不当であり撤回するべきである。

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