[2019_05_10_01]福島第一原発事故の現在と加速される原発再稼働の問題 福島第一原発は津波で放射能放出事故が再び起きる 各地の原発再稼働が福島第一原発事故対応を阻害する 原発再稼働阻止とは日本の仕組みそのものを問い直すことでもある 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)(たんぽぽ舎2019年5月10日)
 
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福島第一原発事故の現在と加速される原発再稼働の問題 福島第一原発は津波で放射能放出事故が再び起きる 各地の原発再稼働が福島第一原発事故対応を阻害する 原発再稼働阻止とは日本の仕組みそのものを問い直すことでもある 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)

1.津波地震の危険性
 福島第一原発の報道は、最近めっきりと減っており、依然として続く「原子力緊急事態」 このことを含め、現状認識が被災者と為政者の間で巨大な解離が生じている。大動脈で起きる解離は即、死につながるが、日本の現状はそれに近いのではなかろうか。
 除染と舗装により福島第一原発敷地内の空間線量は原子炉建屋内部以外はマスクや防護服はほとんど必要ないレベルまで低下しており、年間1万人以上の見学者を受け入れているという。
 しかし、リスクがなくなったわけではなく津波や地震への備えが不十分なことだ。
 現在の想定津波高は26m。3.11で破損し、多くの開口箇所がある建屋に大量の海水が浸入するだろう。そのため放射能放出事故が再び起きる。
 東京電力が進めている開口箇所を塞ぐ工事のペースは遅々としている。東電は2018年10月10日の段階で122箇所のうち61箇所まで塞いだと説明している。

2.未解決の汚染水問題
 汚染水の問題には2つのカテゴリーがある。1つは敷地に流れ込む地下水と降り注ぐ雨水が放射能に汚染されて環境中に流出していること。
 もう1つのカテゴリーが、原子炉を冷却するために水を循環させているシステムから出る汚染水で、トリチウムを大量に含んでいる「トリチウム汚染水」だ。
 この2つのうち、主に議論になっているのは「トリチウム汚染水」。東電は小さなタンクを増設し続けており約110万トンを敷地内に保管している。
 建屋には地下水と雨水と冷却用に投入している水が流入し、汚染した水の一部は環境中に流出し、大部分は吸い上げられてアルプス(トリチウムを除く放射性物質を低濃度まで除去する設備)を通して浄化され、再度「冷却に使用」されるラインと「タンクへ貯蔵」されるラインに振り分けられる。このうちの後者が「トリチウム汚染水」だ。
 原子力規制委員会は早期の海洋放出を求めているが福島県や地元の漁協などから、海に流すなとの強い要求を受けている東電は結論を出さず、国の汚染水処理対策委員会に下駄を預けている。
 その委員会が、地元と東京の3箇所で公聴会を開いた。意見表明を行った44人のうち海洋放出に賛成したのは2人。これを受けて汚染処理対策委員会は早期放出案を一旦中止し、対策の選択肢の中に長期保管を加えて検討することとしている。
 半減期の10倍の時間が経過すれば放射線量はほぼ1000分の1になるので、800兆Bqくらいと想定されている汚染水中のトリチウムは123年後には8000億Bqほどになる。それを100万トンで割れば1リットル当たり800Bqで、今の東電の基準1500Bq以下になる。

3.デブリは石棺で密封を
 溶けた燃料がどうなったのか。2017年に少し見えてた。ロボットカメラで調査し、1、2、3号機それぞれで燃料の溶け落ちた様子など格納容器内の状況が一定程度わかってきた。しかし、それを三次元的に把握できるには至っていない。
 デブリの場所は確認できても、それらが張り付いているのか浮いているのか、重さや固さは、持ち上げられるかもわからない。今は2019年度のどこかの時点でデブリのサンプリング調査をしようという段階だ。
 デブリにアクセスする方法も不明確だ。
 デブリを取り出すことを考える前に、30年ないし100年間は密封して管理することだ。まず10年くらいかけて水が出入りしないように「石棺」を造るべきだ。
 中途半端な状態でデブリをいじり出すのがいちばん危険だ。
 万が一にも臨界になったり水蒸気爆発を起こしたりすれば手に負えないからだ。東電もそれはわかっていると思うが、密封して管理するしかないことを地元に納得してもらえるまでは、あらゆる手段を尽くして頑張っているのだという姿勢を見せ続けるしかないのだろう。

4.各地の原発再稼働が福島第一原発事故対応を阻害する
 原発再稼動に日本中で巨額の資金が投じられている。東電でも柏崎刈羽原発にも6800億円が投じられている。福島第一に集中すれば、もう少しまともな対策が進められるだろうに。
 再稼働ありきの国や電力会社の姿勢は、資金や人材を、稼働も出来ない原発に投じながら「フクシマ」を無かったことにしようとしている。
 九州電力は川内と玄海原発を再稼働させた結果、管内の電力需要に比して過大な発電設備になったとして太陽光など再生可能エネルギーからの供給を強制遮断した。本末転倒である。
 他にも弊害が出ている。北海道電力の全道停電も泊原発の再稼働を当てにしているため本州連系線を含む送電網や新規発電所の整備が遅れた結果である。
 東海第二原発は、運転制限期間40年を超えており、本来は廃炉だが1740億円もの費用をかけて再稼働しようとしている。100万人いや、それ以上の人々の生命と生活を危機にさらしながら。
 再稼働への「意気込み」を醸成したのは国の「原子力をベースロードに」との方針だ。実態は現時点で再稼働している原発は9基だけ。
 「2030年に20%」など達成できるはずもないのだが、旗振りが続く限り「国策」に寄生して原子力産業は巨額資金を調達し続け、このツケは国民に回る。
 事故が起きればこれが数十、数百倍へと膨れ上がるだけだ。
 この「悪夢のサイクル」を止めなければ、どんな政権が出現しても変わらない。
 原発再稼働阻止とは日本の仕組みそのものを問い直すことでもある。
(「反改憲」運動通信第14期第9号 2019.2.28掲載より了承を得て転載)

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