[2022_05_31_06]北海道電力 泊原発の運転認めない判決 廃炉は命じず 札幌地裁 (NHK2022年5月31日)
 
参照元
北海道電力 泊原発の運転認めない判決 廃炉は命じず 札幌地裁

 北海道泊村にある北海道電力・泊原子力発電所について、周辺住民などが「安全性が不十分だ」と訴えていた裁判で、札幌地方裁判所は「津波に対する安全性の基準を満たしていない」として、北海道電力に原発を運転しないよう命じる判決を言い渡しました。津波対策が不十分だとして原発の運転を認めない司法判断は初めてです。
 北海道電力・泊原発1号機から3号機について、周辺住民など1200人余りは「津波や地震への安全性が不十分だ」と主張して運転を禁止し、廃炉にすることなどを求める訴えを起こしていました。
 10年余りにわたる審理では、津波対策が十分にとられているかなどが争点となり、原告側は「福島第一原発の事故のあと新設された、今の防潮堤は地震による液状化で、支持地盤が沈む可能性があり津波を防げない」などと主張しました。
 31日の判決で札幌地方裁判所の谷口哲也裁判長は「泊原発には津波防護施設が存在せず、津波に対する安全性の基準を満たしていない」とする判断を示し、北海道電力に対し泊原発の1号機から3号機すべてを運転しないよう命じました。
 津波対策が不十分だとして原発の運転を認めない司法判断は初めてです。
 一方、原告が求めていた原発の廃炉や使用済み核燃料の撤去は認めませんでした。
 泊原発は平成24年に定期検査のため3号機が発電を止めて以降、10年にわたり3基すべてで運転を停止した状態が続いています。

傍聴席から「やったー」

 法廷では裁判長が原発を運転してはならないという判決の主文を読み上げると、傍聴席から「やったー」という声が上がっていました。

原発訴訟 過去の司法判断

 原子力発電所をめぐって裁判所が住民側の訴えを認めたケースはこれで11件となり、11年前の福島第一原発事故の後では9件目です。
 原子力発電所の運転停止や設置許可の取り消しを求める訴えは、昭和40年代後半から各地の裁判所に起こされましたが、「具体的な危険があるとはいえない」などとして退けられてきました。
 平成15年に福井県の高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる裁判で、名古屋高裁金沢支部が国の設置許可を無効とする判決を言い渡し、これが住民側の訴えを認めた初めての判決でしたが、最高裁で取り消されました。
 平成18年には、金沢地裁が石川県の志賀原発2号機の運転停止を命じる判決を言い渡しましたが、高裁で取り消されました。
 一方、平成23年に福島第一原発の事故が起きたあとは住民側の訴えを認める司法判断が増えています。
 平成26年には、福井地裁が福井県の大飯原発3号機と4号機の運転停止を命じる判決を言い渡しましたが、高裁で取り消されました。
 また、運転停止を命じる仮処分の決定も相次ぎ、福井県の高浜原発3号機と4号機では平成27年に福井地裁、平成28年には大津地裁が2度にわたって運転停止を命じました。
 関西電力は平成28年3月、大津地裁の1回目の決定が出た際に運転中だった3号機の原子炉を停止させ、司法の判断で運転中の原発が停止した初めてのケースとなりました。
 その後、運転停止の決定は高裁で取り消され、高浜原発3・4号機は再び運転を始めました。
 また、愛媛県の伊方原発3号機では平成29年とおととし1月に広島高裁が2度、運転停止を命じる仮処分の決定を出しました。
 2つの決定はその後、別の裁判官の判断で取り消され、伊方原発3号機は去年12月に運転を再開しています。
 おととし12月には大阪地裁が、大飯原発3号機と4号機の国の設置許可を取り消す判決を言い渡しました。設置許可に関して住民側の訴えを認めた判決は、平成15年の高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる判決以来2件目で、福島第一原発の事故後、初めての判断でした。
 国は控訴しています。
 去年3月には、茨城県にある東海第二原発について、水戸地裁が原発事故が起きた際の避難計画の不備を理由に再稼働を認めない判決を言い渡し、住民側と事業者側の双方が控訴しています。
KEY_WORD:金沢地裁_運転差し止め判決_:泊_運転差し止め_:FUKU1_:IKATA_:MONJU_:OOI_:SIKA_:TAKAHAMA_:TOMARI_:TOUKAI_GEN2_:廃炉_: