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地震調査委員会の長期評価(活断層編)
 
 − 兵庫県南部地震(1995)以降の主な活断層地震 ー 
 
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初めに
 
 地震調査研究推進本部の地震調査委員会が行う長期評価は、政府が発表する地震に関する評価であることから、原発の耐震評価や、裁判で引用され、重要な判断材料となっています。しかし、長期評価の手法は、科学の世界では仮説のようなものですから、新たな地震が起きるたびに、検証が求められます。仮説に即さないことが多数起きるのであれば、その仮説を見直すことが求められます。
 この長期評価の成り立ちは、1995年の阪神大震災に対する反省から始まっています。よって、以下では1995年以降の11件の活断層タイプの地震をとりあげ、長期評価の手法の有効性を調べています。
 私は、地震の専門家ではありませんので、厳密な検証はできませんが、専門家まかせにするのではなく、多少正確さにかけるとしても、自らの手で、検証することは意味があることと思いますので。よろしかったら、ご覧ください。
 
目次
 

 
(1)2000/10/06 鳥取県西部地震(M7.3)発生 関連記事一覧 Wikipedia
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●地震の第一報
六日午後1時半ごろ、鳥取県西部を震源とする強い地震があり、同県の境港市と日野町で震度6強、西伯町と溝口町で震度6弱、米子市と岡山県新見市、香川県・小豆島などで震度5強を観測、西日本の広い範囲で強い揺れを感じた。(後略)
 
鳥取県西部で震度6強 47人負傷、家屋全壊も M6以上の余震の恐れ 東奥日報  2000/10/07
 
●地震調査委員会等による地震の評価
調査委は今年7月、中国地方の活断層を対象に、今後30年以内にマグニチュード(M)6.8以上の地震が起きる確率を公表。同県など北部区域の確率を40%と高く算定していた。
 北部区域にはM7以上の大地震を起こす恐れがあるとされる長さ20キロ以上の主要活断層はないが、M7級の鳥取県西部地震も同様に地震前に断層の存在が知られていない場所で起きた。委員長の平田直・東京大地震研究所教授は「地表に活断層が現れていなくても、被害を及ぼす地震が起こる可能性は全国どこでもあるが、中国地方の北部区域はその典型的な例といえる」と話した。
 
鳥取県西部の地震活動の評価 地震調査委員会 2000/11/08
ひるがえって,今回の地震で生じた地震断層に沿って,今回と同程度の変位が繰り返し生じた場合,明瞭な活断層地形が形成されるであろうか.たとえ短い再来間隔を考えたとしても,そのような可能性は低いと思われる.即ち,断層変位が数本の断層線に分散し,個々の断層線での変位量が数10cm程度以下となる場合,断層活動の繰り返しによっても明瞭な断層変位地形を作ることは難しいのではないだろうか.
 
2000年鳥取県西部地震の地震断層調査 活断層・古地震研究報告  2001/09/27
 
●当地震は調査委の長期評価に沿うか検証(当HP筆者の見解)
 当地震は地表に活断層の無い所で起きた。地震調査委の活断層の長期評価の手法はこの地震の場合は有効では無かったことは明らかである。
 なお、現地の詳細調査で、地表に変位量の小さな地震断層と思われるもの見出されたが、仮に今回のような変位が繰り返し起きたとしても、明瞭な断層変位地形を造るのは難しいということであるから、M7.3という大きな地震であっても地表に地震断層を残さない。地表に地震断層ができることを前提として評価している長期評価の手法の有効性は無いといえよう。

 
(2)2003/07/26 宮城北部地震(宮城県連続地震)M6.4発生  関連記事一覧 Wikipedia
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●地震の第一報
宮城県北部で26日、震度6弱以上の地震が一日に3度という観測史上初の連続地震が発生した。近い将来起きると予測されるマグニチュード(M)7クラスの「宮城県沖地震」を誘発する可能性は低いとみられるが、5月にも震度6弱の地震を経験した同県住民の不安は募る。大規模地震は全国どこでいつ起きてもおかしくなく、住宅の耐震化など「備え」の大切さを改めて浮き彫りにした。
 
宮城北部 連続地震 大地震歴ない「旭山撓曲」 急転「直下型」 毎日新聞  2003/07/27
 
●地震調査委員会等による地震の評価
○今回の地震は地殻内の地震であり、プレート境界で発生した1978年宮城県沖地震や沈み込む太平洋プレート内で発生した本年5月26日の宮城県沖の地震とは性質の異なる地震である。今回の地震活動が地震調査委員会が想定している宮城県沖地震に与える直接的な影響はほとんどないと考えられる。
 
2003年7月26日宮城県北部の地震の評価 地震調査委員会  2003/07/26
地下構造を調べるために人工地震を使った探査が行われました。その結果,地表付近から深さ2kmに延びる断層が発見され,須江断層と名前がつけられました。須江断層付近の地質調査からは,この断層は約2000万年前より古い時代に活動した正断層と考えられます。須江断層の位置と余震分布を詳しく調べると,宮城県北部地震は須江断層の延長,地下深くで発生したこと,さらに須江断層は,現在では断層西側地域がせり上がる逆断層として活動したことがわかりました。
 
内部直下型地震と活断層のすがた_宮城県北部地震 東北大学  2018/03/29
 
●当地震は調査委の長期評価に沿うか検証(当HP筆者の見解)
 当地震は旭山撓曲(撓曲とは地層が波打っている状態)という活断層と断定されていない場所で起きたものであり、活断層の長期評価の手法は有効ではなかった。しかし、その後、人工地震を使った探査で、約2000万年前より古い時代に活動した須江断層が再活動したものであるということが明らかになった。活断層は第四紀(約260万年から現在)で起きたものであると定義されているため、当地震のように2000万年前に起きた断層の再活動は活断層と評価されない。よって、この須江断層によっても、活断層の長期評価の手法は有効ではないことは明らかである。

 
(3)2004/10/23 新潟県中越地震(M6.8)発生  関連記事一覧 Wikipedia
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●地震の第一報
新潟県中越地方をマグニチュード(M)6.8の強い地震が襲った。小千谷市では、余震も含めて震度6強の揺れが連続した。震度6強は03年の宮城沖県北部地震以来。気象庁は今後も震度6強の揺れが続く可能性があるとして、警戒を呼び掛けている。(中略)
 この地震について、国の地震調査委員の島崎邦彦・東京大教授は「地表近くまできている地下の断層が割れて起きた」とみる。
 震源の西側にある「長岡平野西縁断層帯」について、国の地震調査研究推進本部は13日、今後30年以内にM8クラスの地震が起きる確率は2%と予測していた。震源とこの断層帯は近くにあり、島崎教授は「地震を起こしたのがこの断層の一部かどうか、調べなければならない」と指摘する。(後略)
 
新潟で震度6強 震源浅く 重力超す1500ガル 小千谷観測 毎日新聞  2004/10/24
 
●地震調査委員会等による地震の評価
○今回の活動域周辺には、余震分布と平行に分布する活断層が複数存在する。今回の活動とこれらの活断層との対応は不明であるが、本震の西側約10kmの長岡平野西縁断層帯は西に傾斜する逆断層と評価しており、今回の震源が同断層帯の東方に分布していることから、同断層帯が活動したものではないと考えられる。
 
2004年10月23日新潟県中越地震の評価 地震調査委員会  2004/10/24
このひずみを解消するため断層がずれ、地震となる。今回の震源周辺には、西10キロにマグニチュード(M)8級の地震を起こすとされる長さ80キロの長岡平野西遠断層帯があるなど、複数の活断層が集まっている。
 国土地理院は、今回動いた断層は長さ約21キロ、幅約10キロで、最大1,8メートルずれたと推定する。ただ、断層は地表にあらわれておらず、特定できていない。今回のM6.8は「地表にでるか出ないかぎりぎりの大きさ」(津村健四朗地震調査委員長)で、地下6キロにも及ぶ柔らかい堆積層に隠される可能性もある。
 
直下型 脅威まざまざ ひずみ集中、断層ずれ 発生間隔長く詳細不明 福井新聞  2004/11/03
 
●当地震は調査委の長期評価に沿うか検証(当HP筆者の見解)
 当地震では明瞭な断層が地表に現れておらず、未知の断層により起きた地震であり、活断層の長期評価の手法は有効ではなかった。

 
(4)2005/03/20 福岡県西方沖地震 M7.0発生 関連記事一覧 Wikipedia
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●地震の第一報
福岡沖玄海地震は、「地震が少ない」とされてきた九州北部ではまれな大地震となった。地震の規模を示すマグニチュード(M)7.0は新潟県中越地震(M6.8)を上回り、最大震度「6弱」という揺れは、01年3月の芸予地震に匹敵する。地震大国・日本に「安全地帯」はないことが改めて浮き彫りになった。(中略)
 海底の場合、掘削調査ができないため、どこに断層があるかは分かっていない。独立行政法人・防災科学技術研究所(茨城県つくば市)の岡田義光企画部長は「この断層は、博多湾を隔てて内陸の警固断層の延長線上にあり、両者は関係があるかもしれない。21日に開かれる政府の地震調査委員会で検討したい」と話す。
 
福岡沖玄海地震 列島に「安全地帯」なく 未知の活断層動く 警固断層との関連指摘も 毎日新聞  2005/03/21
 
●地震調査委員会等による地震の評価
また断層帯北西部で発生した2005年の福岡県西方沖の地震は、これまでに活断層が確認されていなかった場所で発生した地震である。地震後の調査においても、震源域付近の海底面に活断層の証拠となる明瞭なずれや段差などは検出されていない。この要因として、海域であることによる調査の困難さに加え、縦ずれ成分の少ない横ずれ断層においては音波探査によって地形や地質のずれを検出することが困難であることが考えられる。
 
警固(けご)断層帯の長期評価について 地震調査委員会  2007/03/19
 
●当地震は調査委の長期評価に沿うか検証(当HP筆者の見解)
 当地震は、地震調査委が述べているように、これまでに活断層が確認されていなかった場所で発生している。そして、地震後の調査において、震源域の海底面で明瞭なずれや段差などが検出されなかったことから、活断層の長期評価の手法は有効ではなかった。

 
(5)2007/03/25 能登半島地震(M6.9)発生 関連記事一覧 Wikipedia
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●地震の第一報
25日午前9時42分ごろ、北陸を中心に強い地震があり、石川県の七尾市、輪島市、穴水町で震度6強、志賀町や能登町などで震度6弱、珠洲市で震度5強を観測した。(後略)
 
石川で震度6強 1人死亡189人けが 175棟被害、2500人が避難 東奥日報  2007/03/26
 
●地震調査委員会等による地震の評価
○能登半島西方沖には、北東―南西方向に延びる長さ約20kmの南東傾斜の逆断層が確認されており、その一部が今回の地震に関連した可能性もある。また、余震域の南東側には邑知潟(おうちがた)断層帯が存在しているが、今回の地震は邑知潟断層帯にほとんど影響を与えていないと考えられる。
 
平成19年(2007年)能登半島地震の評価 地震調査委員会  2007/03/26
既知の活断層ではなく、未知の断層が動いて大地震を起こすケースが相次いでいる。三年前の新潟中越地震も今年三月の能登半島地震も、全く知られていない断層が動いて、予想外の大きな揺れを起こした。
 
社説 原発の耐震度、基準は甘く備えは薄い 日経新聞  2007/07/18
00年の鳥取県西部、04年の新潟県中越、05年の福岡沖、07年の能登半島、08年の岩手・宮城内陸、いずれの地震も長期評価の対象外。そして東日本大震災。
 
揺らぐ地震学予知予算_乏しい成果 朝日新聞  2011/10/18
その断層の直上の海底地形には、部分的に傾斜の変化が認められ、数10cmの変動(断層を境として南東側隆起)が海底で生じたと考えられる。このような海底の傾斜の変化は、1988年に産総研(当時の工業技術院地質調査所)が行った調査では認められないことから、2007年能登半島地震で海底に生じたものと考えられる。この海底の変動が観察される場所は、今年5月に海上保安庁が実施した地形調査によって畝(うね)状の隆起が観察された場所と一致する。
 以上のことから、2007年能登半島地震を発生させた断層は、過去約2万年間に1〜2回活動していること、また、この地震でも海底までわずかに変動を生じたことが明らかになった。
 
能登半島地震の震源域で変動を確認 産総研  2007/07/30
 
●当地震は調査委の長期評価に沿うか検証(当HP筆者の見解)
 当地震では、地上部では明瞭な断層が現れていなかった。海底では、その後の調査で数10センチの変位があったという報告があった。これは1988年に産総研で行った調査と比較することでわかったものである。では何故1988年の調査で活断層とわからなかったか、調査法の向上により、分かるようになったかもしれない。しかし、海底の活断層の調査は元々精度が悪く、地表部のようなトレンチ調査もできない。専門家ではないので、はっきりと明言できないが、地震が発生した場所を後付けで、選択的に集中して調査して、やっと分かったというのが実態ではないのか。
 よって、活断層の長期評価の手法は、海底部の調査の困難さを考えると、有効性に乏しいと思われる。

 
(6)2007/07/16 新潟県中越沖地震(M6.8)発生 関連記事一覧 Wikipedia
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●地震の第一報
また、専門家からは、中越地域の地下構造の詳細な調査を求める声も強い。今回の震源は海底で、政府の地震調査研究推進本部による活断層調査の対象から外れていた。震源の東側には長岡平野西縁断層帯があるが、陸上より調査が難しいからだ。
 
ひずみ集中帯で多発 「中越は活動期」証明 海底断層調査は不十分 毎日新聞  2007/07/17
 
●地震調査委員会等による地震の評価
今回の地震に伴う、海底でのずれは確認できなかった。しかし、余震分布から推定される南東傾斜の断層面の浅部延長は、既知の活断層に連続している可能性がある。
 
平成19年(2007年)新潟県中越沖地震の評価 地震調査委員会  2008/01/11
ところが、00年の鳥取県西部、04年の新潟県中越、07年の新潟県中越沖と、大地震を想定しなかった断層でM7前後の地震が相次いだ。「短い活断層で大きな地震は起きない」という従来の常識は覆されてしまった。
 
岩手・宮城内陸地震から1年 警戒活断層を倍以上に 覆された従来の常識 朝日新聞  2009/06/12
東電は1号機着工翌年の79年から85年にかけて、原発前の沿岸60キロ、沖合30キロの範囲で、音波を使って海底の様子を調べた。その結果、長さ約4キロ(図中のA)、約7キロ(同B)、約1.5キロ(同C)、約9キロ(同D)の4本を確認した。東電はBが今回の地震の原因となった可能性があると見ている。しかし東電は当時、A、B、Dは活断層ではなく「死んでいる断層」、Cは「短いので影響が小さい」と判断し、いずれも耐震設計上はまったく考慮していなかった。(後略)
 
活断層見逃した可能性 79〜85年資料 専門家が分析 長さを過小評価 朝日新聞  2007/07/20
 
●当地震は調査委の長期評価に沿うか検証(当HP筆者の見解)
 当地震の震源は海底であった。しかし、海底でのずれは確認できなかった。
 東電が79〜85年にかけて行った音波調査では、今回の地震の可能性があると見る断層(断層B)を活断層ではなく「死んでいる断層」と判定していた。
 しかし、この断層Bが当地震の震源断層だと確定する調査結果はでてこなかった。今、現在でも、どの断層が動いて起きたか不明である。よって、当地震に対する活断層の長期評価の手法は有効ではなかったと考えられる。

 
(7)2008/06/14 岩手・宮城内陸地震(M7.2)発生 関連記事一覧 Wikipedia
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●地震の第一報
岩手・宮城内陸地震から3日目。記者は震源地に近い岩手県一関市厳美町の槻ノ木平地区にヘリコプターで入った。国道の橋が折れ曲がって垂れ下がるなど深いつめ跡が残る。しかし、岩手・宮城県で全壊した住宅は計4戸、半壊は6戸だけだった。過去最大の加速度4022ガルを記録した強烈な揺れにもかかわらず、住宅被害が少なかったのはなぜか。(後略)
 
岩手・宮城地震 震源地近く 短周期多かった地震波 浅い震源 毎日新聞  2008/06/17
 
●地震調査委員会等による地震の評価
岩手・宮城地震を起こした断層は、そもそも活断層と位置づけられてもいなかった。「20キロ以上」という物差しだけで活断層を評価することは限界に来ていた。
 
岩手・宮城内陸地震から1年 警戒活断層を倍以上に 覆された従来の常識 朝日新聞  2009/06/12
00年の鳥取県西部、04年の新潟県中越、05年の福岡沖、07年の能登半島、08年の岩手・宮城内陸、いずれの地震も長期評価の対象外。そして東日本大震災。
 
揺らぐ地震学予知予算_乏しい成果 朝日新聞  2011/10/18
さらに長期評価は東日本大震災は言うまでもなく、2008年の岩手・宮城内陸地震(M7.2)など近年の大きめの地震も予測することができず、実用性にも大いに疑問が持たれている。
 
未熟な地震学 東奥日報  2011/11/10
熊本のみならず、岩手・宮城内陸地震や新潟県中越地震など近年起きた地震も軒並み、発生確率が低いとされた地域で起きました。阪神大震災も起きる直前の発生確率はわずか0.02〜8%。やはり「関西には大地震はこない」などと言われていました。
 
熊本地震と阿蘇山噴火、南海トラフは関連するのか 島村氏に聞く ダイヤ  2016/04/21
 
●当地震は調査委の長期評価に沿うか検証(当HP筆者の見解)
 当地震では明瞭な断層が地表に現れておらず、未知の断層により起きた地震であり、活断層の長期評価の手法は有効ではなかった。

 
(8)2011/03/12 長野県北部地震(M6.7)発生 関連記事一覧 Wikipedia
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●地震の第一報
12日午前3時59分ごろ、長野県栄村で震度6強の地震があった。新潟県中越も6弱、群馬県北部と新潟県上越で5強を観測。
 
長野北部震度6強 中日新聞  2011/03/12
 
●地震調査委員会等による地震の評価
○3月12日3時59分頃に長野県・新潟県県境付近の深さ約10kmでマグニチュード(M)6.7(暫定)の地震が発生した。この地震により長野県栄村で最大震度6強を観測した。その後、震度6弱を観測する余震が2回発生するなど大きな余震が発生した。
○この地震の発震機構は北北西−南南東方向に圧力軸を持つ逆断層型(暫定)で、地殻内の浅い地震である。
 
2011年3月12日長野県・新潟県県境付近の地震の評価 地震調査委員会  2011/03/13
 
●当地震は調査委の長期評価に沿うか検証(当HP筆者の見解)
 当地震では明瞭な断層が地表に現れておらず、未知の断層により起きた地震であり、活断層の長期評価の手法は有効ではなかった。

 
(9)2014/11/22 長野県神城断層地震(M6.7)発生 Wikipedia
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●地震の第一報
22日午後10時8分ごろ、長野県北部で震度6弱の地震があった。気象庁によると、震源地は長野県北部で、震源の深さは約10キロ、地震の規模はマグニチュード(M)6.8と推定される。
 
長野で震度6弱 M6.8 4人負傷 東奥日報  2014/11/24
 
●地震調査委員会等による地震の評価
○現時点での現地調査では、地表地震断層が白馬村北城から白馬村神城に至る約9kmの区間で確認された。本震の震央西方の白馬村北城塩島付近では、最大約90cmの上下変位を伴う東側隆起の地表変状が確認された。
○この震源域付近には糸魚川−静岡構造線活断層系の一部である神城断層が存在している。今回の地震は神城断層の一部とその北方延長が活動したと考えられる。
 
2014年11月22日長野県北部の地震の評価 地震調査委員会  2014/12/09
地震調査研究推進本部が想定していた地震規模は 活動区間が22kmから55km、規模は M 7.5からM 8.5 程度[28][29]で約千年に一回であったが、実際に2014年に発生した地震は30kmよりも短い区間が活動し、規模も一回り小さい M 6.7 でマグニチュードの過大評価が生じていた[30]。
 
長野県神城断層地震 Wikipedia  2018/03/18
 
●当地震は調査委の長期評価に沿うか検証(当HP筆者の見解)
 当地震は総延長26kmの神城断層の一部が動いたものであった。活断層の長期評価の手法は、この地震に関して有効性があったと認められる。

 
(10)熊本地震[2016/4/14(M6.5)・4/16(本震)(M7.3)] 発生 記事一覧 Wiki
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●地震の第一報
14日午後9時26分ごろ、熊本県益城町で震度7の地震があり、九州中部を中心に西日本の広い範囲で強い揺れを観測した。15日午前0時3分ごろにも震度6強を観測するなど、余震とみられる強い地震が続いた。益城町を中心に家屋が倒壊する被害が相次ぎ、県などによると、下敷きや火災で2人が死亡し、1人が心肺停止。意識不明の人もいる。各病院では少なくとも200人以上が手当てを受けたという。
 
熊本地震震度7 2人死亡 M6.5 倒壊多数、火災 けが200人超 東奥日報  2016/04/15
 
●地震調査委員会等による地震の評価
その調査から、国の地震調査委員会は、日奈久断層帯のうち南側の八代海区間を「30年以内の地震発生確率が最大16%」と評価。九州で最も活動度が高く、国内でも危険性の高い活断層帯で、両断層が合わせて動くと最大M8.2の地震が起こる可能性があると指摘していた。
 
中林一樹氏 古い住宅の耐震化急務 井村隆介氏 活断層調査を役立てよ 東奥日報  2016/04/16
国の地震調査研究推進本部によりますと、熊本県を縦断する日奈久断層帯は3つの区間に分けられ、このうち北東側の「高野・白旗区間」が3日前の震度7を観測した地震でずれ動いたとみられています。この区間とは別に、活動が活発になったと指摘されている、日奈久区間ではマグニチュード7.5程度で、さらに南側にあたる八代海区間ではマグニチュード7.3程度の地震が起きる可能性があると指摘されています。また、国の地震調査研究推進本部は地震が起きる確率を日奈久区間では最大で6%、八代海区間で最大16%として、高いグループに属しています。
 
気象庁 地震活動の範囲 南西側に広がる NHK  2016/04/17
熊本地震で4月16日の「本震」の震源となった布田川断層帯(布田川区間)は、今後30年以内の発生確率は「ほぼ0〜0.9%」とされた。ごく低い確率にしか思えないこの数字が意味する発生確率は「やや高い」だ。(中略)
 小さな数字になってしまうのは、数百〜数万年に1回起きる確率を「今後30年以内」に当てはめるからだ。このため地震本部は断層単独ではなく、「九州中部でマグニチュード(M)6.8以上の地震の発生確率は18〜27%」という地域全体の数値も示していた。それでも危険性の理解が進んだとは言い難かった。(後略)
 
検証 熊本地震 小さく見える発生確率 耐震基準 地域で差 毎日新聞  2016/05/15
震源となった布田川、日奈久(ひなぐ)断層帯は専門家の間ではよく知られた活断層で、未知の断層などではありません。またこの地域は、地震による強い揺れが懸念される地域として政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が作った全国地震動予測地図=1=でも「今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」として、濃い赤色で色付けされています。今回、想定外だったのは断層が阿蘇山の南麓(なんろく)まで走っていたことが分かったことくらいでしょう。
 
そこが聞きたい 熊本地震の教訓 山岡耕春氏 毎日新聞  2016/07/16
地震調査研究推進本部では、主要活断層で発生する地震の長期評価、活断層の地域評価の結果を公表しているが、今般の熊本地震の発生時点では、布田川断層帯(布田川区間)における今後30年以内の地震発生の確率は、ほぼ0〜0.9%と評価しており、我が国の主な活断層における相対的評価として、「やや高い」と説明していた(後略)
 
活断層長期評価の表記見直しについて(案) 地震推本  2016/08/16
 
●当地震は調査委の長期評価に沿うか検証(当HP筆者の見解)
 当地震は、地震調査委員会が布田川断層帯(布田川区間)における今後30年以内の地震発生の確率は、ほぼ0〜0.9%と評価していた場所で起きたものである。この0.9%という確率は一見非常に小さいようにも思えるが、調査委の説明によれば、我が国の主な活断層における相対的評価として、「やや高い」となるとのことである。よって、確率の面では疑問を感じないではないが、活断層の長期評価の手法は概ね有効であったと思われる。

 
(11)2016/10/21 鳥取県中部地震(M6.6)発生 関連記事一覧 Wikipedia
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●地震の第一報
21日午後2時7分ごろ、鳥取県中部の倉吉市と湯梨浜町、北栄町で震度6弱の地震があった。岡山北部で震度5強。島根県隠岐でも震度5弱を記録、関東から九州にかけての広い範囲で揺れを観測した。気象庁によると、震源地は鳥取中部で、震源の深さは約11キロ。地震の規模はマグニチュード(M)6.6と推定される。鳥取、岡山両県と近畿3府県で計17人がけがをした。(後略)
 
鳥取中部 震度6弱 M6.6 17人けが、余震頻発 瞬間の揺れ 熊本級 東奥日報  2016/10/22
 
●地震調査委員会等による地震の評価
調査委は今年7月、中国地方の活断層を対象に、今後30年以内にマグニチュード(M)6.8以上の地震が起きる確率を公表。同県など北部区域の確率を40%と高く算定していた。
 北部区域にはM7以上の大地震を起こす恐れがあるとされる長さ20キロ以上の主要活断層はないが、M7級の鳥取県西部地震も同様に地震前に断層の存在が知られていない場所で起きた。委員長の平田直・東京大地震研究所教授は「地表に活断層が現れていなくても、被害を及ぼす地震が起こる可能性は全国どこでもあるが、中国地方の北部区域はその典型的な例といえる」と話した。
 
鳥取中部の地震 未知の断層が原因 政府調査委見解 毎日新聞  2016/10/22
 
●当地震は調査委の長期評価に沿うか検証(当HP筆者の見解)
 当地震に関しては、地震調査委は「これまで知られていない長さ10キロ以上の断層がずれて起きた」とする見解であった。よって、活断層の長期評価の手法は有効ではないという事例となるはずだった。
 しかし、同年(2016年)7月に中国地方の活断層を対象に、今後30年以内にマグニチュード(M)6.8以上の地震が起きる確率を公表。同県など北部区域の確率を40%と高く算定していた。よって、従来の評価法では手法は有効ではないが、地域全体に範囲を広げた新手法では有効であったと考えられる。

 
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発生日 地震名 マグニチュード 最大震度 長期評価手法の有効性(※) 特記
(1) 2000/10/06 鳥取県西部地震 7.3 6強 ×
(2) 2003/07/26 宮城北部地震(宮城県連続地震) 6.4 6強 ×
(3) 2004/10/23 新潟県中越地震 6.8 7 ×
(4) 2005/03/20 福岡県西方沖地震 7.0 6弱 ×
(5) 2007/03/25 能登半島地震 6.9 6強
(6) 2007/07/16 新潟県中越沖地震 6.8 6強 ×
(7) 2008/06/14 岩手・宮城内陸地震 7.2 6強 ×
(8) 2011/03/12 長野県北部地震 6.7 6強 ×
(9) 2014/11/22 長野県神城断層地震 6.7 6弱
(10) 2014/04/16 熊本地震 7.3 7
(11) 2016/10/21 鳥取県中部地震 6.6 6弱
 
※ ○:有効性有り △:一部有効性有り ×:有効性無し

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