[2021_02_17_01]東北新幹線 突かれた弱点 福島沖地震 耐震補強の対策急務(産経BIZ2021年2月17日)
 
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東北新幹線 突かれた弱点 福島沖地震 耐震補強の対策急務

 福島、宮城両県で震度6強を観測した地震の影響で、東北新幹線は一部区間の運休が24日前後まで続く見通しだ。JR東日本は2011年の東日本大震災などを教訓に設備の耐震補強を進めてきたが、損傷した電柱は未施工で「弱点」を突かれた形だ。受験生など影響を受ける人も多く、社会のインフラとして地震対策を急ぐ必要性が改めて浮き彫りとなった。

 就職活動や受験にも

 15日午前、JR盛岡駅近くのバスターミナルには長蛇の列ができた。就職活動で仙台に向かう大学3年、古坐藍さん(21)は「こんなに混むなんて」と驚きを隠せない。仙台市内の予備校に通う福島市の男性(20)は運休の影響で東京の私立大受験を諦めた。ホテルの予約をキャンセルし、国立大に絞ることにした。
 JR東によると、今回の地震で東北新幹線の新白河(福島県)−古川(宮城県)間では電柱約20本が傾くなどの被害が出た。通過する列車があれば、車両を傷つける恐れがあった。那須塩原(栃木県)−盛岡(岩手県)間のうち、16日に一ノ関−盛岡間で運転を再開させるなど復旧を急ぐが、狭い場所で重機を使うため複数の作業を同時にできず、全面再開にはなお時間を要する。14、15日で計約4万8000人に影響した。
 JR東は大規模災害の度に、電柱や高架橋などの耐震補強工事を実施。電柱は東日本大震災後、東北・上越の両新幹線で28年度までに計約5000本を補強する。20年度末までに44%の工事を終える予定だ。ただ、南関東と仙台周辺を優先しており、今回損傷した約20本は29年度以降に補強の必要性の有無を検討する対象だった。他方、施工済みの設備に被害は確認されていない。
 東日本大震災では電柱、架線、高架橋など計1200カ所が損傷し、全線再開に約50日かかった。JR東は今回の地震について、電柱などの構造物にダメージを与える「短周期の揺れ」の大きさが大震災以上だった地点もあると分析。「震災後の対策は一定の成果を上げたと言えるのではないか」と理解を求める。

 安全への投資

 ただ、今後もこれまで通り安全への投資が続けられるかどうかは懸念が残る。新型コロナウイルス禍の乗客減で、21年3月期の連結業績予想は4500億円の赤字の見通し。コストを削減しても安全対策に影響しないよう保守作業の機械化などで効率を高める考えだ。ある幹部は「技術を集め、安全に運行する責務がある」と気を引き締める。
 名古屋大減災連携研究センター長の福和伸夫教授(地震工学)は「安全のためにどこまでコストをかけるか。優先度の高いものを見極める必要がある」と指摘。「自然災害は常に弱いところを突いてくる。少しでも弱点を減らすよう対策を取るべきだ」と話している。
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