【記事73660】社説 北海道で震度7 不意を打つ脅威に備えを(茨城新聞2018年9月7日)
 
参照元
社説 北海道で震度7 不意を打つ脅威に備えを

 未明の北海道を最大震度7の地震が襲った。大規模な土砂崩れが起こり家屋がのみ込まれるなどして、亡くなった人やけが人が出ている。道内の全ての火力発電所が止まり、大手電力会社の管内全域で停電するという前代未聞の事態となった。
 今後も余震によって強い揺れの起こる可能性があり、揺れが強かった地域では、余震や雨による土砂災害に警戒する必要がある。電力の全面復旧には時間がかかりそうで、日本の電力システムの弱点があぶり出されたといえる。
 今回の地震は、地下37キロで断層がずれた内陸直下型だったとみられる。日本の内陸で起こる地震の震源は普通、20キロより浅い。それよりも深いと岩石の温度が高くなり変形しやすくなるため、地震を起こすエネルギーを蓄えられないからだ。
 ところが、今回の地震が起きたと考えられる「石狩低地東縁断層帯」では、20キロを超える深い場所で地震が起こる傾向にある。その理由はよく分かっていない。過去の地震活動を探る調査もほとんどできていない。この断層帯は南北に延び、「主部」と「南部」からなる。政府の地震調査委員会の評価によると、30年以内に大地震が起こる確率の高さは、南部が上から2番目の「やや高い」で、主部はその下のランクだった。
 地震の直前予知は現在不可能であり、発生確率を示す予測もあまり当てにならないことを、私たちは改めて認識する必要がある。政府の評価で最高ランクではないから大丈夫だと、決して考えてはならないのだ。
 震度7が観測されたのは阪神大震災以降6回目。熊本地震では2度も起きた。どれも想定外だった。不意を打つ脅威に備え何をすべきか、ぜひ家庭や地域で話し合い、実行に移してほしい。
 大規模な停電は、震源の近くにある北海道電力苫東厚真火力発電所が地震のために緊急停止したことで起きた。165万キロワットを発電できる同電力最大の火力発電所で、北海道全体の約半分の電力供給を担う。電力会社が送る電気はプラスとマイナスが常に入れ替わる交流で、1秒間に入れ替わる回数を周波数という。周波数が乱れると電気製品に悪影響を及ぼす。一定に保つには電力の需要と供給を一致させないといけない。
 緊急停止で電力供給が大きく減り、周波数の乱れによる発電機の損傷を避けようと他の3カ所の火力発電所も停止したことで、広域停電が起きた。1カ所の大規模電源に頼るシステムの弱さをさらけ出した格好だ。
 北海道と本州を結ぶ「北海道・本州間連系設備(北本連系線)」で送ることのできる電力は60万キロワット。現在90万キロワットに増強中だが、今回のような事態になれば全く足りない。
 電力自由化が進んだ欧米には、大きな送電網で電力を融通し合うシステムがある。ネットワークが大きいほど、広域停電は起こりにくく、小規模電源の接続にも対応できるので再生可能エネルギーの普及にも役立つ。
 北海道だけの問題ではない。地震など自然災害の多い日本では、電源を1カ所に集中させることのリスクは大きい。東日本大震災で学んだ教訓を忘れてはいないか。泊原発の周辺で、事故時に不可欠な放射線監視装置(モニタリングポスト)の一部が停止したことも問題だろう。

KEY_WORD:IBURIHIGASHI_:HANSHIN_:KUMAMOTO_HONSHIN_:KUMAMOTO_HONSHIN_:HIGASHINIHON_: