【記事93820】伊方原発運転差し止め 「司法判断に振り回されている」 地元・愛媛に衝撃(毎日新聞2020年1月18日)
 
参照元
伊方原発運転差し止め 「司法判断に振り回されている」 地元・愛媛に衝撃

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)について、広島高裁が17日に出した運転差し止めの決定は、愛媛県内にも衝撃を広げた。受け止め方はさまざまだが、現在定期検査に伴い運転を停止している3号機は、今後再稼働させ3月29日に送電を始める予定だったが、この時期での再稼働は難しくなる見通し。四電は県庁で記者会見し、「決定を詳細に検討し、速やかに不服申し立てをしたい。定検は当面は今のスケジュールで進めていく」とした。

 ◇四電「速やかに不服申し立て」

 3号機を巡っては、山口、大分、松山、広島の各地裁や支部で仮処分申請などが相次ぎ、2017年12月には広島高裁で差し止めの決定が出された。同決定は18年9月に取り消され、同10月に再稼働した。裁判所の決定で運転ができなくなるのは2回目で、伊方町の高門清彦町長は発表したコメントの中で裁判所の判断で運転・停止が繰り返されることについて「安全で安定的な運転に影響を与えないか危惧する」と懸念を示した。地元住民からは差し止め歓迎の声も、運転継続を望む声も聞かれたが、「司法判断に住民は振り回されている」と疲労をにじませる人も。
 四電は記者会見で「運転の差し止めは電力会社だけにとどまらず、社会、経済に非常に大きな影響を与える。伊方発電所は原子力規制委員会の世界で最も厳しいと言われる基準をクリアした上でのもの」と主張した上で、「仮処分が複数の場所(裁判所)にわたってされてしまうのは、少なからず疑問を感じている」とした。

 ◇弁護団「裁判官の良心示した」

 一方、松山地裁で同様の運転差し止め訴訟を進めている「伊方原発をとめる会」と弁護団も記者会見も開き、「裁判官の良心を示した画期的な決定。(松山地裁の訴訟でも)勝訴の判決が得られるよう最大限努力する」との声明を出した。
 3号機を巡っては、原発の新規制基準で義務づけられているテロ対策のための「特定重大事故等対処施設」について、四電は設置期限から1年ほど完成が遅れる見通し。期限に未完成の場合、規制委は運転停止を命じる方針のため、決定が早期に覆って再稼働できたとしても、21年3月に停止する可能性がある。【木島諒子、遠藤龍】
KEY_WORD:IKATA_:2020_01_17_IKATA_SASHITOME: