【記事93630】伊方3号機運転認めず 広島高裁、仮処分決定「活断層否定できぬ」(中国新聞2020年1月17日)
 
参照元
伊方3号機運転認めず 広島高裁、仮処分決定「活断層否定できぬ」

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、50キロ圏内にある島に住む山口県東部の住民3人が申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁の森一岳裁判長は17日、運転を認めない決定をした。原発周辺の断層帯が活断層である可能性が否定できないと判断。四国電の調査や新規制基準に基づく原子力規制委員会の審査を不十分と指摘した。運転の差し止めや禁止を命じる高裁レベルの決定は2件目。
 運転禁止期間は、山口地裁岩国支部で係争中の3号機の運転差し止め訴訟の判決が出るまでとした。四国電の佐川憲司原子力部副部長は「承服できない」と、同高裁に決定取り消しを求める保全異議と一時的に効力を止める執行停止を申し立てる方針を示した。
 3号機は2019年12月から定期検査で運転を停止中。3月末の運転再開を予定していたが、今後の司法手続きで覆らない限り、定期検査を終えても再稼働できない見通しとなった。
 伊方原発は沖合に九州から関西まで約440キロに及ぶ中央構造線断層帯が走る。原発の約600メートル沖の同断層帯について森裁判長は、活断層の可能性を指摘した国の地震調査研究推進本部の見解などを踏まえ「活断層である可能性が否定できない」と判断。海上音波探査で活断層でないことを確認済みとする四国電の主張を「調査が不十分」として退けた。
 3号機の再稼働を申請した際、原発の約8キロ沖の断層を活断層とし、その活断層を震源とする地震を想定した四国電の対策を認めた規制委の判断についても「過誤や欠落があったと言わざるを得ない」と断じた。
 原発から約130キロ離れた阿蘇山(熊本県)の噴火リスクに関しても、噴火時の火山灰などの降下物は四国電の想定の約3〜5倍に上るとし「四国電の想定は過小」と問題視した。
 19年3月の一審山口地裁岩国支部は申し立てを却下し、住民側が即時抗告していた。弁護団共同代表の中村覚弁護士は「中央構造線断層帯が活断層である可能性を初めて正面から認めた画期的な決定」と述べた。
 3号機を巡っては11年3月の東京電力福島第1原発事故以降、広島、松山、大分の各地裁でも住民が同様の仮処分を申し立てたが、一審はいずれも却下された。広島高裁は17年12月、抗告審で阿蘇山の噴火リスクを理由に運転を差し止める決定をしたが、四国電の申し立てに基づく異議審で18年9月、同高裁の別の裁判長が決定を取り消した。(松本輝)

 <クリック>伊方原発 四国電力の加圧水型軽水炉計3基の原発。2011年3月の福島第1原発事故後、全3基が定期検査のため運転を停止した。3号機(89万キロワット)は15年7月に新規制基準への適合が認められ、16年8月に再稼働。定期検査中の17年12月に広島高裁から運転を差し止める仮処分の決定が出て運転を停止したが、仮処分を取り消す同高裁の異議審決定を受けて18年10月に再稼働した。一方、1号機(56万6千キロワット)と2号機(同)は新規制基準を満たすには巨額の安全対策投資が必要で採算に合わないため、1号機は16年、2号機は18年に廃炉が決定した。
KEY_WORD:FUKU1_:IKATA_:2020_01_17_IKATA_SASHITOME: