【記事76920】<高松高裁>伊方原発避難計画「不十分」 早急な対策求める(毎日新聞2018年11月15日)
 
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<高松高裁>伊方原発避難計画「不十分」 早急な対策求める

◇「運転差し止め」住民側敗訴
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを同県の住民が求めた仮処分申請の即時抗告審で、高松高裁(神山隆一裁判長)は15日、申し立てを棄却した。決定では四電による大地震の揺れ、火山噴火の想定をいずれも妥当と判断。一方で半島の付け根にある原発周辺の住民避難計画を「不十分」とし、国などに早急な対策を求めた。
 昨年7月に松山地裁が仮処分申請を却下し、住民側が即時抗告していた。
 決定で神山裁判長は「災害の的確な予測は不可能」とし、リスク評価は「社会通念」が基準とした。その上で、耐震設計で想定する最大の揺れを650ガル(ガルは加速度の単位)とした基準地震動の設定を「最新の知見に照らして相当」と述べ、住民側が主張した阿蘇カルデラの巨大噴火の可能性も「相応の根拠で示されていない」と退けた。
 一方、伊方原発が佐田岬半島の付け根にあり、住民に高齢者や子供を多数含むことを指摘。「他原発より避難に困難が予想されるが、海路避難の輸送能力に懸念があり、屋内退避施設も不足している」とし、地元自治体や国に改善を求めた。
 住民側の薦田(こもだ)伸夫弁護団長は「棄却は容認できない」と述べ、最高裁への特別抗告などを検討する。
 佐田岬半島は東西約40キロの細長い地形で、重大事故時に先端側の住民約4500人が孤立する恐れがある。県や町の計画では船などで県内や大分県に避難する想定だが、先月の防災訓練では海路避難が悪天候で一部中止された。愛媛県原子力安全対策課は「訓練の実施や検証を通じて対策の向上を図る」と説明。伊方町の高門清彦町長は「実効性のある計画へ不断の見直しを行う」としている。
 伊方3号機を巡っては定期検査中の昨年12月、広島高裁が運転差し止めを命じる仮処分決定を出した。今年9月に同高裁の異議審で決定が取り消され、四電は先月27日に再稼働させている。【小川和久、木島諒子】
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