【記事76350】<伊方原発>再稼働し臨界に 近隣の島、避難計画に不安(毎日新聞2018年10月27日)
 
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<伊方原発>再稼働し臨界に 近隣の島、避難計画に不安

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町、出力89万キロワット)が27日未明に再稼働し、同日夜には核分裂反応が安定する「臨界」に達した。30日に送電を開始する。全国で稼働中の原発は西日本の5原発8基となった。
 3号機は、東京電力福島第1原発事故を受けて策定された新規制基準に基づき2016年8月に再稼働。定期検査のため運転を停止中の昨年12月に広島高裁が運転差し止めの仮処分決定を出し、運転できなくなった。ただ今年9月25日、同高裁の異議審が差し止め命令を取り消し、再稼働が可能になった。四電は原子力規制委員会の検査を経て11月28日に営業運転を開始する予定だ。
 一方、近隣住民の不安は消えない。「実際に事故が起きたら、島民の避難は後回しにされるのではないか」。原発の南約11キロにある離島・大島(同県八幡浜市)では、地元で区長を務める伊藤優士伸(ゆしのぶ)さん(70)が伊方原発がある佐田岬半島を見つめた。
 島民は約230人。重大事故が起こった場合、海路で避難する計画だ。ただ、今月あった県の防災訓練では目玉だった自衛艦の使用が波浪で中止された。
 島の港に大型船は接岸できない。これまでの訓練で使ってきた漁業取り締まり船に乗れる人数は約20人で、最寄りの八幡浜港に一度に避難することは困難だ。そこで今月12日の大地震を想定した県の原子力防災訓練で計画されたのが、海上自衛隊の艦船「げんかい」による避難。約200人を収容できる艦船を沖に停泊させ、海自のボートで島民を輸送する予定だった。
 しかし、当日は晴天だったものの海上では強い風が吹き、訓練は取りやめになった。中村時広知事は「強引にやろうと思えばやれたが、もしもの事があってはならない」と理解を求めた。
 伊方原発は東西約40キロの細長い半島の付け根にあり、沖合には国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」が走る。地震、津波、原発事故という複合災害の恐れも指摘されてきた。それだけに「せめて船には皆の前に姿を見せてもらいたかった」との思いが消えない。
 島の北東部には廃校の校舎を活用した一時避難施設がある。ただ、施設から離れた島の南側に住む酒井周二さん(84)は「妻は寝たきり。事故の際はリヤカーに乗せて避難するつもり」と言う。伊藤さんは「大島を避難のあり方を考えるモデルにしなければ」と決意を語った。【木島諒子】

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