【記事70240】社説 伊方原発乾式貯蔵施設 国策破綻のツケ 地元に負わすな(愛媛新聞2018年5月26日)
 
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社説 伊方原発乾式貯蔵施設 国策破綻のツケ 地元に負わすな

 四国電力伊方原発でたまり続ける使用済み核燃料の問題で、四電は、敷地内での「乾式貯蔵施設」の設置に向け、安全協定に基づく事前協議を県と伊方町に申し入れた。施設は貯蔵容量が約1200体、2023年度に運用を開始する予定という。
 使用済み核燃料は、国の核燃料サイクル政策に基づき、青森県の日本原燃再処理工場へ運ぶ計画となっている。だが、工場は20年以上も完成延期を繰り返し、使用済み核燃料プールはほぼ満杯。伊方からの搬出は現時点で全く見通しが立たず、新たな施設に半永久的に留め置かれる懸念が拭えない。核燃サイクルの破綻は明らかだ。国には抜本的な政策の見直しを強く求める。これ以上、地元に負担を押しつけることは許されない。
 乾式貯蔵施設は、使用済み核燃料をプールで一定期間、冷却した後、放射線を遮る金属容器「キャスク」に入れて空気循環で冷やす。東京電力福島第1原発事故のように、冷却機能を失うリスクがあるプールと比べて安全性は高いとされている。
 四電の佐伯勇人社長は、県庁で中村時広知事に対し、施設は耐震性や放射線の遮蔽(しゃへい)機能が保たれる設計になっているとして安全性を強調した。ただ、原子力施設はテロの脅威もある。審査する国の原子力規制委員会や県の専門家委員会は、多角的に検証することが欠かせない。
 伊方原発の使用済み核燃料プールは容量の限界が迫る。1号機に続き、2号機の廃炉が決まったことで2基分のプールが使えなくなる。四電は司法判断で停止中の3号機が運転再開した場合、24年度ごろに容量を超過するとみている。施設の運用開始はこれに間に合うよう設定された。
 佐伯社長は、乾式貯蔵施設を「あくまでも一時貯蔵」と主張した。だが、伊方から燃料を搬出する時期は明言しなかった。これでは、住民の不安を解消することは難しい。四電と県、伊方町が結んだ安全協定では、再処理工場へ燃料を搬出することが明記されている。将来的に見通しが立たなければ協定違反にもつながり、容認できない。
 核燃サイクルは少なくとも、「資源の有効利用」の柱だった高速増殖炉もんじゅが廃炉となった時点で、抜本的な見直しが急務だった。にもかかわらず、先日公表された国のエネルギー基本計画案では核燃サイクルを維持する方針が盛り込まれた。問題の先送りを続ける国の姿勢は無責任に過ぎる。まずは、政策の失敗を認めるべきだ。
 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場や、3号機などが実施するプルサーマル発電で出る使用済みプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料の取り扱い方法も決まっていないなど、原発を巡る根本的な問題は、長年解決されないままだ。今こそ立ち止まり、使用済み核燃料を発生させないよう脱原発へかじを切ることこそが将来世代への責務だ。

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