【記事67890】規制委の見解波紋 「決定つぶし」弁護団抗議 伊方原発(大分合同新聞2018年4月15日)
 
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規制委の見解波紋 「決定つぶし」弁護団抗議 伊方原発

【大分合同・愛媛伊方特別支局】原発の火山対策を巡り、国が示した見解が波紋を広げている。阿蘇の巨大噴火のリスクを理由に、広島高裁が四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転禁止を命じた後、原子力規制委員会が「リスクは社会通念上、容認される水準」との考え方を取りまとめたためだ。脱原発裁判を続ける弁護団は「広島高裁決定つぶしだ」と抗議している。

 原子力規制委員会は原発の再稼働審査で、「火山影響評価ガイド」を基に立地の適否などを判断している。昨年12月の広島高裁決定はガイドを厳格に適用した。伊方原発から約130キロ離れた阿蘇カルデラで約9万年前に発生した過去最大の噴火で「火砕流が原発敷地に到達した可能性が十分小さいとは評価できない」と指摘。規定に沿えば「立地不適だ」と結論付けた。
 「原発と火山」がクローズアップされる中、規制委の更田豊志委員長は今年2月、「巨大噴火に関する考え方を分かりやすくまとめてほしい」と事務局の原子力規制庁に指示。今月7日に見解を示した。
 「巨大噴火の発生は低頻度」と指摘。現在の火山学では、原発の運用期間に発生する可能性が「全くないとは言い切れない」としたものの、そうした事態を想定した法規制や防災対策が原発以外の分野では設けられていないことを「容認」の理由に挙げた。
 伊方原発3基のうち3号機のみを存続させると表明した四国電の佐伯勇人社長は27日、報道陣に「私どもの主張と平仄(ひょうそく)の合ったもの。必ず(広島高裁の異議審で)勝訴できると思う」と語った。
 脱原発弁護団全国連絡会は反発。13日、抗議声明を発表した。
 声明は、規制委が「1千万年に1回以上」の航空機落下による火災などを考慮している点に着目。6千年に1回程度の噴火を容認するのは不合理などと訴え、「広島高裁と同様の司法判断が出ることをけん制する意図がある」と強調した。

 大分地裁で続く伊方原発差し止め裁判にも携わる河合弘之共同代表らは「規制機関が電力会社を臆面もなく援護している。自分たちが定めたガイドを実質無効にしており、原子力規制の根本的崩壊だ」と批判している。

<火山影響評価ガイド>
 原子力規制委員会が策定した審査の内規。(1)原発から160キロ圏内にあり、将来の活動可能性がある火山について、原発運用期間(原則40年)に活動する可能性が十分小さいかどうかを判断する(2)判断できない場合は運用期間に発生する噴火規模を推定する(3)推定できない場合は、対象火山の過去最大の噴火規模を想定し、火砕流が原発に到達する可能性が十分小さいかどうかを評価する―と定めている。火砕流到達の可能性が十分小さいと評価できない場合は「立地不適」となる。

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