[2019_10_31_02]99%体内に取り込まれるトリチウム水 トリチウムによる遺伝子レベルへの影響は低線量領域のほうが高い可能性 斉藤章一(双葉地方原発反対同盟)(たんぽぽ舎2019年10月31日)
 
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99%体内に取り込まれるトリチウム水 トリチウムによる遺伝子レベルへの影響は低線量領域のほうが高い可能性 斉藤章一(双葉地方原発反対同盟)

 原発や使用済み核燃料再処理施設から世界中で大量に垂れ流されているトリチウムは、人体にどのような影響を与えるのか。トリチウムによる被ばくは無視出来るほど少ないのであろうか?。
 「東京・千葉での降水中のトリチウム濃度」によると、1960年代の核実験によって天然レベルの100倍を超え、1963年の核実験禁止条約以降減少し今日に至るが、世界の原発や再処理工場、軍事用核施設から年々膨大な量のトリチウムが放出されておりその量は軍事関連施設を除いても2京129兆ベクレルにもなる。(前号「世界のトリチウム排出量」参照)
 日本の六ヶ所村再処理施設が本格稼働すれば更に約2京ベクレルが加わることになる。宇宙線などによる自然発生量は年7.2京ベクレルと推定されているから原発関連のトリチウムの排出量は地球環境に大きな影響を与えているであろう。
 さて、トリチウムはどれほど人体にとりこまれるであろうか?
 茨城大学理学部による論文「トリチウムの生物影響研究の最新の進歩」から見るとトリチウム水蒸気を吸入した場合体内への吸収率は98.7〜99.1%、平均98.7%であるという。
 大気中のトリチウムは水蒸気、水素ガス、炭化水素の状態で存在する。吸収率が高いのは水蒸気(トリチウム水)であるが、最も危険なのは炭化水素のような有機トリチウムである。
 論文中に日本の食品中のトリチウム濃度と日本人のトリチウム濃度の記述がある。
 「日本人(京都市)の組織に含まれる自由水のトリチウム濃度は、脳では2.6Bq/リットル、肺では3.3Bq/リットル、肝臓では3.3Bq/リットル、腎臓では6.1Bq/リットル…食品・水蒸気・飲料水などの摂取を加算した総トリチウム摂取量は1,588Bq〜2,274Bqとなる。…
 この数字を使って年間被曝線量当量を求めると0.000033〜0.000048mSv/年が求められた」という。年間被ばく指針の1mSvに比べるとかなり低い。
 放医研が1976年に発表した人間のリンパ球をつかって染色分体の切断数を研究(低レベル・トリチウムの遺伝的効果について)したものによると、(中略)トリチウムは人間の遺伝子を切断すること、現在の規制基準では異常遺伝子の発生につながる遺伝子分体の切断が自然発生の2倍に達することが確かめられた。
 注目点は(中略)高線量領域と低線量領域で線の傾きが変っていることである。低線量領域は傾斜が緩やかで、トリチウム濃度に対する切断率が高いことを表している。
 しかもこの領域は遺伝子分体の切断数が少ないため修復されることが増えるのだが、実はこの修復時に染色体異常が発生すると指摘している。
 高濃度では修復が間に合わず破棄されるが、低線量域では修復によって異常な遺伝子が生き残ってしまうのだ。
 このことはもう一つの問題を提起している。遺伝子レベルの影響は低線量領域のほうが高い可能性である。
 低線量被ばくにはまだよく分らないことが多い。そんな中で内部被ばくを軽視した被ばく評価に基づいて大量のトリチウムを環境に放出し続けることは許されることではない。
(双葉地方原発反対同盟発行「脱原発情報」 2019.10.20 No214より了承を得て転載)

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