[2017_09_06_02]<原子力規制委>柏崎刈羽、審査合格へ…東電、事故後初(毎日新聞2017年9月6日)
 
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<原子力規制委>柏崎刈羽、審査合格へ…東電、事故後初

 原子力規制委員会は6日の定例会で、東京電力が再稼働を目指す柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)について、事業者としての適格性を議論した。適格性を否定する意見は出なかった。技術的な審査はほぼ終了しており、近く新規制基準に適合したことを示す審査書案をまとめる。福島第1原発事故を起こした東電の原発が新基準に合格する見通しになったのは初めて。福島第1原発と同じ沸騰水型としても初の合格となる。【鈴木理之】

 東電は柏崎刈羽原発の再稼働を収益改善の柱と位置づけている。しかし、新潟県の米山隆一知事は福島第1原発事故の原因の検証を優先する方針で「検証には3、4年かかる」と述べており、審査に合格しても早期の再稼働は見通せない。
 東電は2013年9月、新基準に基づく柏崎刈羽6、7号機の審査を申請。規制委は沸騰水型原発のモデルケースとして集中的に審査を進めた。
 審査では、防潮堤の地盤で液状化の可能性が判明するなど、前提条件の変更が相次いだほか、今年2月には事故対応拠点となる「免震重要棟」の耐震性不足を社内で把握しながら、規制委には事実と異なる説明をしていたことが発覚。規制委は東電の広瀬直己社長(当時)を呼び、審査の申請書の総点検を求め、東電は6月に再提出した。
 審査に際し、規制委は東電が重大事故を起こした当事者であることを重視し、原発の安全性に対する考え方や福島第1原発の廃炉に臨む姿勢を文書で提出させたほか、2度にわたって小早川智明社長ら経営トップから意見聴取するなど、他の原発の審査より踏み込んだ異例の対応を取った。

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 ◇見えぬ東電の覚悟…解説

 福島第1原発事故を起こした東電に再び原発を運転する資格があるのか−−。柏崎刈羽原発6、7号機の審査を巡っては、この点が大きな焦点となった。
 6日、原子力規制委員会が「適格性」を大筋で認めたことで、同原発は審査合格に向けて大きく前進したが、東電の原発稼働に対し国民の納得を得るには課題が残る。
 規制委は今回、通常の技術的審査に加え、新規制基準には明記されていないにもかかわらず、東電の原発事業者としての適格性を見極める異例の対応を取った。「(重大事故を起こした)東電と他の会社とは違う」(田中俊一委員長)との判断に加え、福島第1原発の廃炉を巡り、汚染水処理などの方針決定を政府に頼りすぎているとの不満が規制委にあったからだ。
 田中委員長は「福島の廃炉をやりきる覚悟と実績を示すことができなければ、運転をする資格はない」と強い言葉で東電に迫った。東電は社長名の文書や2度にわたる経営トップへの聞き取りで、「廃炉をやり遂げる」と強調したが、汚染水や放射性廃棄物の処分について、具体的な「覚悟」や「実績」が示されたとはいえない状況だ。
 東電の「適格性」をどう判断したのか、規制委には丁寧な説明が求められる。【柳楽未来】

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 ◇柏崎刈羽原発
 新潟県柏崎市と刈羽村にまたがり、7基の原子炉を持つ東京電力の原発。7基の合計出力は821.2万キロワットと、1カ所の原発としては世界最大級。1〜5号機は沸騰水型、6〜7号機は改良型沸騰水型の原子炉。6号機は1996年、7号機は97年に運転開始。2007年の新潟県中越沖地震で想定を超える揺れに見舞われ、3号機の変圧器で火災が発生するなどの被害が出た。

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