[2021_04_16_03]“汚染水”処理で頼みの綱ALPSは8年間「試験運転」のまま! 仰天の運用実態(日刊ゲンダイデジタル2021年4月16日)
 
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“汚染水”処理で頼みの綱ALPSは8年間「試験運転」のまま! 仰天の運用実態

 「県民が積み重ねてきた風評払拭の努力を後退させることのないよう国が前面に立ち、万全な対策を講じて欲しい」
 福島第1原発の海洋放出を巡り、福島県の内堀知事は15日、梶山経産相にそう訴えた。未曽有の事故の苦汁をなめ続けてきた福島にとって、風評再燃は切実な問題。しかし、汚染水の処理を手掛ける東電と政府に地元の理解を得る努力は見られない。
 そんな姿勢を象徴するのが、汚染水を浄化処理する多核種除去設備「ALPS」の運用実態だ。2013年に東電が導入後、現在まで8年間も「試験運転」のままなのだ。
 14日の参院資源エネルギー調査会で、共産党の山添拓議員が問題を取り上げ、「(ALPSの)本格運転前の使用前検査すら終わっていない」と追及。原子力規制委員会の更田豊志委員長は「汚染水をいかに処理して貯留するかが非常に急がれた。使用前検査等の手続きは、飛ばしている部分があると思う」と明かした。
 規制委にALPSの運用について尋ねると、「(核種の)除去性能の確認で運用している」(1F事故対処室)と言う。政府は海洋放出を「安全」と喧伝するが、“頼みの綱”の性能はいわば「確認中」。ハッキリしていないのだ。
 「規制委の委員長が、本格運用の検査手続きを『未了』と認めたことは非常に重大です。汚染水処理の条件すら整っていないことがハッキリしました。政府にも東電にも、処理を担う資格はないのです」(エネルギー政策に詳しい龍谷大教授の大島堅一氏=環境経済学)

■懸念を「風評」として圧殺

 第1原発敷地内のタンクに貯蔵されている汚染水の7割には、ALPSで除去できないトリチウム以外にも、規制基準以上の放射性物質が残っている。この事実が18年に発覚するまで、政府と東電は「トリチウム以外は除去できている」と言って、国民を欺いてきた。
 発覚から2年以上経ち、政府は13日に「ALPS処理水」の定義を変更。「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水」と、コッソリ修正した。
 「政府は定義変更の理由に『風評被害の防止』を掲げ、安全性への危機感を『風評』として圧殺しています。海洋放出決定で懸念を広げているのは政府と東電なのに、風評被害を持ち出すあたり、盗人猛々しいと言わざるを得ません」(大島堅一氏)
 政府と東電の存在こそ、風評払拭の妨げである。
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