[2021_04_14_24]東電と政府が答えるべき3つの疑問 福島第一原発の汚染水問題(東京新聞2021年4月14日)
 
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東電と政府が答えるべき3つの疑問 福島第一原発の汚染水問題

 東京電力福島第一原発の事故収束作業の大部分を占めてきた汚染水問題は、13日の政府方針決定で浄化処理した水の海洋放出へ踏み切ることになった。東電や政府は「廃炉を進めるため」に放出処分とタンク解体による敷地確保の必要性を強調するが、根拠を見ていくと矛盾が浮かぶ。(小野沢健太)

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◆タンク増設の敷地は足りない?

 福島第一には処理水をためるタンクが約1000基あり、137万トン分の容量がある。現時点の貯蔵量は9割を超える約125万トンで、2022年秋ごろに満水となる見通し。東電や政府はタンクの増設余地は「限定的」とするが、本当に余地がないかはあいまいだ。
 タンクエリアは旧式のボルト締め型タンクを解体した跡地が一部残る。北側に広がる廃棄物置き場の敷地も活用できるはずだが、斜面が多く地盤も弱いとして消極的だ。
 敷地外での保管は、原発に隣接する中間貯蔵施設や、およそ8キロ離れた東電が保有する福島第二原発などが検討された。
 除染で出た汚染土を保管する中間貯蔵施設について、政府は当初の目的にないタンク建設となると、地権者の同意が必要で難しいと突っぱねた。福島第一以外は「移送ルートの自治体の理解が必要。急いでいるからできない」という。

◆タンク解体と廃炉作業の見通しは?

 東電と政府は処理水を処分すれば、タンクを解体して空きスペースがつくれると主張してきた。東電は敷地を確保して、原子炉内に溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しに向けた模擬実験施設や訓練施設、それ以降に取り出したデブリや使用済み核燃料の保管施設などを設ける計画という。
 しかし、空きスペースを確保できるのか。処理水の放出は、東電の計画で30年程度かかる。処理水に含まれる放射性物質トリチウムの総量は約860兆ベクレルで、年間の放出水準である22兆ベクレル以下にすると、単純計算で39年。約1000基のタンクは年間30基程度が空になるが、解体の見通しは示されていない。そもそも、汚染水の発生がゼロにならない限り、タンクは必要であり続ける。
 また、肝心の原子炉内のデブリは、人が近づけないレベルの放射線量が壁となり、取り出せるかも見通せない。12日の衆院決算行政監視委で、デブリ取り出しを問われた東電の文挟誠一副社長は「具体的な検討はこれから進める」。デブリの保管場所が必要になる工程までたどり着けるのかも不確かだ。

◆地元の理解が得られない場合は?

 政府や東電は15年、福島県漁連に「関係者の理解なしに海洋放出などの処分はしない」と約束した。梶山弘志経済産業相は方針決定後の会見で、理解が得られない場合は放出しないのかを問われ、「理解をいただく努力をする。それに尽きる」と言及を避けた。
 約束がある以上、実際には放出に踏み切れない可能性が残る。その場合は処理水がたまり続けることになるが、保管の継続は「困難」と切り捨てるだけで、代替案を用意していない。
 汚染水問題では、急造のボルト締め型タンクからの水漏れ事故など、東電の甘い見通しによって事態を深刻化させてきた。都合の悪いことを考えようとしない姿勢は今も変わらず、処理水の行き場がない危機的状況に陥る恐れがある。
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