[2021_04_14_11]原発処理水の海洋放出、衆院選争点化へ 「もろに影響」与党動揺(時事通信2021年4月14日)
 
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原発処理水の海洋放出、衆院選争点化へ 「もろに影響」与党動揺

 東京電力福島第1原発事故に伴い、長らく懸案となっていた処理水の海洋放出を菅義偉首相が決断した。
 処理水をタンクにため続ける対応に限界が迫る中、政府は「先送りできない課題」と理解を求めるが、野党は「県民無視」(立憲民主党の枝野幸男代表)などと一斉に批判。秋までにある次期衆院選の争点に据える構えで、与党には動揺が広がった。
 「もうこれ以上は避けて通れない。そういう中で判断した」。海洋放出を正式に決めた13日、首相は記者団に自身の決断の正当性をこう訴えた。風評被害に苦しむ福島県民の理解を得るため、自らが先頭に立って説明に努める考えも示した。
 今回の決定に先立ち、首相は全国漁業協同組合連合会の岸宏会長と7日に会談。岸氏は反対の姿勢を崩さなかったが、首相はそれから1週間足らずで押し切った。政府は「安全性はクリアした」(首相周辺)との立場だが、首相自身が全漁連や福島県民に説明を尽くしたとは言い難い。風評被害を抑えられる保証もなく、政府関係者は「次期衆院選の福島は難しくなる」と逆風を認める。
 実際、野党は衆院選を見据え、「争点になる。風評被害は感情的な影響が大きい」(立憲幹部)とみて批判のトーンを強めている。隣県宮城選出の安住淳国対委員長は党代議士会で「時間切れで海洋放出しかないという結論に導いたとすれば許されない」と非難し、福山哲郎幹事長は記者団に「風評被害対策について具体的に何も示されていない」と語った。共産党の志位和夫委員長は「地元の声を無視した強権的決定に断固抗議し、方針の撤回を求める」とツイッターに投稿した。
 自民党は表向き、選挙への影響を度外視して首相の決断を後押ししている。二階俊博幹事長は記者会見で「選挙のことでうんぬんではない。(決定を)支持したい」と表明。佐藤勉総務会長も会見で「選挙がどうのこうのという話ではない。正しいことをしている」と語った。
 だが、衆院議員の任期満了まで半年余りとあって、党内には不安の声が満ちている。ある中堅議員は「衆院選への影響はもろだ。このタイミングで決めるのは本当にひどい」と憤りを隠さない。別の中堅も「争点にされると厳しい」と漏らす。
 公明党の山口那津男代表は、処理水の扱いを含む原発事故対応が旧民主党政権下で始まったことを記者団に指摘、「当時、政権を担っていた方々がもう少し事実の経過に対して責任を持って発言をしていただきたい」と反論した。
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