[2021_04_10_05]処理水処分、議論の最終盤に東電「不在」(河北新報2021年4月10日)
 
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処理水処分、議論の最終盤に東電「不在」

 東京電力福島第1原発の処理水処分問題を巡り、事故当事者の東電の存在感が薄い。柏崎刈羽原発(新潟県)のテロ対策不備問題などで謝罪行脚に追われ、処理水への対応は「政府一任」の様相。放出実行に向けて主体的な動きは見えず、政府方針待ちの姿勢を貫いている。
 政府と全国漁業協同組合連合会(全漁連)のトップ会談が首相官邸で実現した7日午後、東電の小早川智明社長は約1・5キロ先離れた本社ビルで柏崎刈羽原発に関する記者会見を開催した。
 会談への受け止めを問われると「政府のプロセスについては承知しておらず、コメントは差し控える」。10年越しの難題が最終盤に入っても、東電社長は素っ気ない反応を見せた。
 トップ会談の場に東電関係者の姿はなかった。全漁連の岸宏会長は菅義偉首相に「東電は安全性担保に極めて強い懸念がある。国が責任を持つことが大切だ」と要望した。
 小早川社長は5、6の両日に福島入りし、柏崎刈羽の問題や福島第1の情報公開不備など、原発の安全に関わる相次ぐ不祥事を首長らに謝罪したばかり。トップ会談が翌7日に設定されたことは間の悪さだけでなく、処理水問題への「東電不在」を印象づけた。
 原子力規制委員会の更田豊志委員長は2020年12月、処理水について「あたかも政府の問題になったかのような態度は許されない」と指摘。「社長の顔が見えない。しっかりリーダーシップを取ってほしい」と求めた経緯がある。
 東電は同年3月、処理水を海洋放出する場合の検討素案をまとめた。再処理や希釈などの手順は盛り込んだが、放出時の濃度や処分期間、風評対策などは積み残したまま。「素案」以降は東電としての考えを更新していない。
 「まずは政府方針を待ちたい」と繰り返す東電は、処理水放出の実施主体でもある。政府の陰に隠れ、信頼が地に落ちた状態で「放出決定」の日を迎える。
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