[2019_05_20_01]「特重施設」建設遅れ 多々ある問題を整理する 地元自治体にとって明確な約束違反 「特重施設」はテロ対策でもバックアップ施設でもなく 福島第一原発事故を繰り返さないように国会事故調や政府事故調に指摘された問題を解決するために原子力規制委が要求した施設 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)(たんぽぽ舎2019年5月20日)
 
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「特重施設」建設遅れ 多々ある問題を整理する 地元自治体にとって明確な約束違反 「特重施設」はテロ対策でもバックアップ施設でもなく 福島第一原発事故を繰り返さないように国会事故調や政府事故調に指摘された問題を解決するために原子力規制委が要求した施設 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)


◎そもそも「特重施設」とはどんなものか

 特定重大事故等対処施設「特重施設」とは、新規制基準の策定に根拠を持つ新たな「過酷事故対策施設」です。
 この施設は私たちが要求したものではなく、原子力規制委員会が政府事故調や国会事故調により指摘された課題を解決するために必要として、各事業者に設置を義務づけたものです。
 もともとは新規制基準の告示5年に完成していなければならないものでした。
 これを5年先送りしたのは、経産省や事業者の圧力に屈したものと思っています。
 「特重施設」を義務づけたのは規制委であり、私たちでも自治体でもありません。
 これらを整備したら過酷事故の緩和策として機能するから、福島第一原発からの放出放射能量の100分の1以下とされています。
 ただし、セシウム137の放出量として。これは最悪の事故(想定される格納容器破損モード)が起こった場合の新規制基準の要求は100テラベクレル(100兆ベクレル)以下、これが福島第一原発事故の100分の1程度という意味です。

◎九州電力による「特重施設」の説明は次の通り

*規制基準において、原子炉補助建屋等への故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムにより、原子炉を冷却する機能が喪失し炉心が著しく損傷した場合に備えて、原子炉補助建屋等との離隔距離をもつ、又は頑健な建屋を設け、その建屋の中に原子炉格納容器の破損を防止するための機能を有する施設を収納することが要求されているもの。

☆問題点「1」テロ対策を口実として情報不開示により詳細が不明に
 「特重施設」は日本中未だ一つも出来ていません。しかも、審査を通過した川内原発のものですら、何の情報も明らかにされていません。
 資料については「特定重大事故等対処施設に係る工事計画の審査の進め方について」を踏まえ、非公開との記載が随所にあり、具体的な図面や設計仕様は分かっていないものが多く、使い物になるかどうか判断できませんから、こういった情報を一切開示しないものは使用に耐えない、と思うほかありません。
 なお、九州電力による説明は以下の程度です。
 「特定重大事故等対処施設の主な設備は、以下のとおり。」
                 (各号機に設置)
1.特定重大事故等対処施設の設置
 イ.原子炉冷却材圧力バウンダリを減圧操作するための設備・窒素ボンベ(加圧器逃がし弁用)(特重)を設置
 ロ.原子炉内の冷却及び原子炉格納容器内の冷却をするための設備・代替注入ポンプ、多目的貯水槽等を設置
 ハ.原子炉格納容器の過圧破損を防止するための設備・フィルタベントを設置
 ニ.水素爆発による原子炉格納容器の破損を防止するための設備・特定重大事故等対処施設静的触媒式水素再結合装置を設置
 ホ.特定重大事故等対処施設の機器へ電力を供給するための専用の電源設備・ガスタービン発電機等を設置
 ヘ.特定重大事故等対処施設として設置した機器を制御(操作・監視)するための設備・緊急時制御室を設置(1,2号機共用)

2.常設直流電源設備の設置(各号機に設置)
 現在設置済である常設の直流電源設備に加え、もう1系統の特に高い信頼性を有する電源設備の設置が要求されているため、常設直流電源設備(3系統目)を設置する。

3.緊急時対策所の変更(1,2号機共用)
 (いわゆる免震重要棟を設置する方針を止めてしまった施設。)

4.受電系統の変更(1,2号機共用)
 これら個別の機器類の図面はもとより、性能や仕様書は一切明らかにされていません。

☆問題点「2」電力会社の位置づけの不明確さが議論を混乱させる

 電力会社は「特重施設」をテロ対策、あるいはバックアップ施設と説明し、現在運転中の原発でも規制基準適合性審査において安全性は確保されているとの認定がされているから、「特重施設」はなくても問題がないとの立場を取っています。
 これは大きなウソ。
 「特重施設」はテロ対策でもバックアップ施設でもなく、福島第一原発事故を繰り返さないように、国会事故調や政府事故調に指摘された問題を解決するために規制委が要求した施設です。
 これら施設がなければ、安全対策が不十分であり、そのため福島第一原発事故を再発させない保障がないことになります。これは明確な約束違反です。
 施設の実効性以前に、自分たちがした約束に反しているのですから、運転停止は当然のことです。
 位置づけのすり替えを許さず、明らかにさせる必要がありそうです。

☆問題点「3」地元自治体にとっては明確な約束違反

 再稼働を認めるにあたり地元の自治体には福島第一原発事故のような事故を起こさないこと、そのために「特定重大事故等対処施設」をつくって、安全性を向上させることを宣伝していたはずです。
 これが完成しないまま、未だに運転を続けること自体、重大な約束違反のはずです。
 このうえさらに期限までに作れないと、堂々と表明するのですから、直ちに運転を差し止めるべく、地元自治体は動くべきです。
 そのような意味でも、自治体の長や議会は、原発の運転の是非について立場と考えを明らかにすべきだと思います。
 そのような趣旨での働きかけも必要です。
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