[2016_04_06_01]川内原発 福岡高裁宮崎支部の決定要旨(毎日新聞2016年4月6日)
 
参照元
川内原発 福岡高裁宮崎支部の決定要旨


  九州電力川内原発1、2号機の再稼働差し止めを認めなかった6日の福岡高裁宮崎支部の決定要旨は次の通り。

 【司法審査の在り方】
 どのような事象でも原子炉施設から放射性物質が放出されることのない安全性を確保することは、少なくとも現在の科学技術水準では不可能だ。わが国の社会がどの程度の危険性であれば容認するかの社会通念を基準として判断するほかない。

 【新規制基準の合理性】
 基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)の策定、耐震安全性確保や重大事故対策に関する新規制基準に不合理な点はなく、施設が新基準に適合するとした原子力規制委員会の判断も不合理とは言えない。九電は相当の根拠、資料に基づく説明を尽くした。
 基準地震動を上回る地震のリスクはゼロではないが、耐震安全性の確保の観点から新基準は極めて高度の合理性を有する。住民に直接的かつ重大な被害が生じる具体的な危険が存在するとは言えない。

 【火山の危険性】
 火山の噴火時期や規模を的確に予測できるとする規制委の前提は不合理だが、日本全体で見れば破局的噴火は約1万年に1回程度だ。極めて低頻度で経験したことがない規模の自然災害の危険性については、安全性確保の上で考慮されないのが実情であり、無視できるという社会通念がある。このような危険性を自然災害として想定するかは政策判断に帰するが、現行法制度では想定すべきとの立法政策は取られていると解釈できない。立地不適とは言えない。

 【その他の危険性】
 竜巻による飛来物が使用済み燃料ピットに衝突し重大な被害が生じる具体的な危険があるとは言えない。テロリズム対策も新基準に適合するとした規制委の判断は不合理ではない。戦争による武力攻撃対策は国の防衛政策に位置づけられ、危険性を検討する余地があるとしても、九電による人格権侵害の恐れがあるとは言えない。

 【避難計画の実効性】
 避難計画は、施設からの距離に応じた対応策が合理的かつ具体的に定められていることを確認したとして原子力防災会議で了承されている。段階的避難の実効性や避難経路の確保などの問題点を指摘することができるとしても、避難計画が存在しないのと同視することはできない。原発の運転で、直ちに九電による人格権侵害の恐れがあるとは言えない。
(共同)

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