[2020_06_26_03]福島第一原発“処理水”海洋放出 地元が猛反発しても国は放出ありき〈週刊朝日〉(アエラ2020年6月26日)
 
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福島第一原発“処理水”海洋放出 地元が猛反発しても国は放出ありき〈週刊朝日〉

 「新型コロナウイルス感染拡大で旅館やホテルでの高級魚の需要が減り、ヒラメやスズキは半値以下。今も漁に出られない船が多い。そのうえ、処理水まで海に放出されたら、風評被害で漁業従事者の生活は成り立たなくなる。海洋放出には断固反対です」
 宮城県漁業協同組合の奥田一也指導部長は訴える。同漁協は6月15日、東京電力福島第一原発の処理水海洋放出を行わないよう国に求める要望書を、村井嘉浩・宮城県知事へ手渡した。
 同原発で発生した汚染水を浄化した処理水は増え続け、現在の貯蔵量は約120万トン。2022年には敷地内の保管場所が限界を迎えると言われる。
 経済産業省の小委員会が今年1月、海洋放出か水蒸気放出が最も現実的と示唆する提言をとりまとめ、各方面から反発が高まった。トリチウムは依然として含まれているからだ。
 国際環境NGO・FoE Japanの調べでは、岩手、宮城、福島、茨城、千葉、東京の38漁協が放出に反対している。同原発から最も近い漁港がある福島県浪江町でも、議会が全会一致で反対を決議した。
 「安易な放出などせず、陸上での保管を続け、その間にトリチウム除去技術の開発を進めるべきです」(発議者の高野武町議)
 国連特別報告者も6月9日、「有意義な協議がないまま海洋放出を急ぐ日本政府の姿勢には大変憂慮している」とする声明を出し、放出は「漁業関係者だけでなく、海外の人たちにも深刻な影響を与える」とした。
 こうした事態を受け、経産省は一般からの意見募集(パブリックコメント)期間を2度延長し、7月15日までとした。だが、方向性が変わる兆しは見えない。
 「今までに集まった2200件以上の意見には海洋放出に反対する内容も多い。ですが、反対が多ければ選択肢を見直すのかと言われると何とも言えません」(同省廃炉・汚染水対策チーム)
 脱原発社会の実現を目指す市民団体の原子力市民委員会で委員を務める伴英幸氏は、国は放出ありきの議論をしていると批判する。
 「大型タンクでの長期保管やモルタルで固めて半地下で処分するなどいろいろな案が出ているのに、場所がないなどと言って真剣に考えようとしない。このままでは1200兆ベクレルにも上る膨大な放射性物質が環境中に捨てられることになってしまいます」
 国は今夏にも処理方法を決めると見られている。(桐島瞬)
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