[2020_05_02_01]東電予測、原発処理水放出で放射性物質30キロ拡散(日刊スポーツ2020年5月2日)
 
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東電予測、原発処理水放出で放射性物質30キロ拡散

 東京電力は2日までに、福島第1原発の処理水を海洋放出した場合に、放射性物質トリチウムがどこまで拡散するか予測を公表した。トリチウムの年間放出量が100兆ベクレルなら海水中の濃度が通常より高くなる範囲は南北約30キロ、沖合約2キロと見込んだが、地元漁業者は「福島からの放出に前のめりになっている。風評被害を助長しかねない」と不快感を見せる。
 東電によると、第1原発構内からの年間放出量を事故前の管理目標値である22兆ベクレルから、最大想定100兆ベクレルまでの間で4通りに分けた上で、過去の海流の状況や風速などを基にシミュレーションした。トリチウムは通常の海水にも含まれ、福島県沖では最大約1ベクレルが検出されている。
 年間100兆ベクレルの放出では、海水中の濃度が1ベクレルを超えるのは北側約10キロ、南側約20キロ。年間22兆ベクレルの場合は南北約3キロ、沖合約700メートルとした。東電担当者は「濃度が上がるのは原発付近に限られる」と説明する。
 これに対し「拡散の範囲が狭いから放出していいという話にはならない」とくぎを刺すのは小名浜機船底曳網漁業協同組合(福島県いわき市)の柳内孝之理事だ。県沖では第1原発から半径10キロ圏内の海域での操業を自粛しているが、100兆ベクレル放出の想定では一部が10キロ圏を超える。「操業範囲の議論にも影響しそうだ」と懸念した。
 第1原発では、地下水や雨水が原子炉建屋に流れ込み、事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)に触れて汚染水となる。多核種除去設備(ALPS)などで主要な放射性物質を浄化処理するが、トリチウムは取り除けない。処理水として構内でタンクに保管しており、今年3月時点の総量は約119万トンで、トリチウム総量は約860兆ベクレル。
 政府小委員会が2月、処理水は海や大気に放出するのが現実的だと提言。具体的な検討素案を求められた東電が今回、海での拡散予測を出したが、大気に関しては考慮すべき条件が多く困難だとして予測はしなかった。(共同)
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