[2016_08_24_05]原子力規制委員会記者会見録(原子力規制委員会2016年8月24日)
 
参照元
原子力規制委員会記者会見録


●日時:平成28年8月24日(水)14:30〜
●場所:原子力規制委員会庁舎記者会見室
●対応:田中委員長他
<質疑応答>
○司会
 では、定刻になりましたので、ただいまから原子力規制委員会の定例会見を始めたいと思います。
 皆様からの質問をお受けしたいと思います。いつものとおり、所属とお名前をおっしゃってから質問の方をお願いします。
 それでは、質問のある方は手を挙げてください。
 カミデさん。
○記者
 フリーランス記者のカミデです。
 本日の委員会とは関係ない話なのですが、福島原発の凍土壁について質問します。外部の有識者からは、遮水壁は破綻したという言葉も聞かれておりますが、本日午前中に行われた経済産業大臣の会見に参加しまして質問いたしました。その後、次第に温度も下がっていって改善されていると、当初の方針どおり進めると明確に大臣は答えておりましたが、この凍土壁の問題について、課題なども含めて、改めまして、委員長、どうお考えか、お聞かせください。
○田中委員長
 前回の監視・評価検討会でも議論されていたと思いますけれども、要するに、凍土壁に限らず、東電は、こうやりますと言ったのが、ほとんど実際に実現していないということで、更田委員などからは別のことも考えるべきということもあったし、外部の有識者からは、破綻したというか、そういうことが言われていますね。ですから、そういうことを踏まえて、いわゆる汚染水の問題は経済産業省が責任あるわけではなくて、東京電力が自らの問題として、きちっと自らの判断をしなければいけないのだけれども、そういう点が少し欠けているなという印象は持っています。
 それから、前から申し上げていますけれども、1Fのリスクは、凍土壁というか、汚染水というのは、私から見たらリスクは最も小さいものの一つです。もっともっと大きい問題がいっぱいあります。先日も蜂須賀委員からスタックの問題も指摘されていたし、これから廃棄物、いっぱいあります。水処理をしたカートリッジも山のようにたまってきています。こういったものの方がはるかに放射能濃度としては高いわけで、そういったものをどうするのだと。あのままでは保管もできないような状況ですから、きちっとドライにして、半永久的に安全に保管できるような処置もしていかなければいけない。そのためには施設のことも要るでしょう。だから、タンクをつくり続けるという考え方をずっととっているのか、凍土壁が仮にうまくいったとしたって、水はどんどん出てきますので、どこまで作るつもりなのか、有限の敷地をどう利用するのか、全体像が全然見えていないのではないのかと、会議が終わった後、私は伝えておきました。経産大臣は凍土壁だけで議論しているようですけれども、我々はもっと広い視点から、長期的視点から見ていく必要があると思っています。
○記者
 そうすると、今日の大臣が言ったことについては、そんなに重い言葉としては委員長は受けとめる必要はないという感じでございますか。
○田中委員長
 いや、経産大臣の立場だったら、うまくいきませんだなどと口が裂けても言えないでしょう。国費を350億円とか注ぎ込んでいるのだから。
○記者
 わかりました。ありがとうございます。
○司会
 ほかにございますでしょうか。ヨシノさん。
○記者
 テレビ朝日のヨシノです。よろしくお願いします。
 JAEAがもんじゅの改善報告を提出しまして、違反状態が改善されたとか、早期の運転再開を目指したいというふうな会見をやりましたが、委員長の受けとめをお願いいたします。
○田中委員長
 保安規定を守るのは当然のことなのですね。それができましたと本人たちは言っているけれども、実際には、先日も保安規定違反が出ているように、なかなかそういうふうにいっていませんですね。今回のものを私も、だらだらと、長々と書いてあるのを随分我慢強く読みましたけれども、とてもとても。そもそも保安検査というのは現場の実務なのですね。ですから、技術者一人一人の能力の問題なのです、常日ごろ持っている。オールジャパン体制とか、理事長直轄体制とか、そういうことで保安検査がうまくいくとは、私もどちらかというと現場人間だから、そういうふうには思いません。ですから、そう簡単に、保安検査がどうこうということと、もんじゅに対しての勧告は全く別のものだと私は理解しています。
○記者
 ありがとうございました。
○司会
 ほかにございますでしょうか。前の方。
○記者
 愛媛新聞社のヤマモトと申します。伊方原発のことについてお伺いします。四国電力の社長が3号機を60年は運転したいということを会見で地元で言っているようなのですけれども、それについてどう思うかということを、お考えをお聞かせいただけますか。
○田中委員長
 社長がどういう御意見をお持ちかということについては、私から特に申し上げることはありませんけれども、60年運転したいということであれば、多分、そういう申請が出てくるのだろうなと。いずれ40年近くになればね。そういうことだと思いますけれども、それはけしからんとか、それがいいとか、そんなことを私から申し上げる立場にはありません。
○記者
 もう一点なのですけれども、国とか事業者が伊方原発は安全であると、お墨付きを得て再稼働を進めているわけなのですけれども、依然として地元の住民の間では、そういう国とか事業者の立場にもかかわらず、不安がすごく根強いと思うのですけれども、そういうギャップについてどう思うかということと、なぜそういうギャップが生じているのかということの認識をお聞かせいただけますか。
○田中委員長
 一般論から言うと、不安を持たない人は世の中に多分いないでしょう。どんな場合でも不安だと。まして1F事故が起きた後、不安キャンペーンみたいなものがありますから、当然そうなると思いますよ。だから、それをどうやって払拭していくかということは、大きな我々の課題だと思います。でも、それは一朝一夕になくならないと思います。
 ただ、少なくとも規制委員会、規制庁としては、1Fのような事故は二度と起こさないためのいろいろな規制をしていますし、防災避難のことについても、よく逃げられないではないかとか何とかとおっしゃいますけれども、1Fの反省を踏まえれば、無理な避難をすることによって、1,000人を超えるような犠牲者が出ているという、関連死を招いたという反省ですね。直接的に放射線被ばくによる急性障害という、国際的な、それは避けるべきだという事例は一個もないわけですね。
 そういうことから言うと、少し落ち着いて、仮にかなり困難な状況が生じたとしても、時間をかけて安全に避難できるようにということで、そういう指針になっているのですけれども、なかなかその理解が届いていない。理解させようとしないという世論かもしれないけれども、そういうところはあるように思います。ですから、私どもとしては、そういった我々の考え方の根本を御説明しながら、できるだけ不安の払拭に努めていくことが大事だと思います。ただし、指針はうちの所掌ですけれども、防災のところは内閣府です。ただ、内閣府と私どもは非常に密接にいろいろ相談していますので、そういったことも含めて努力はしていきたいと思います。
○司会
 ほかにございますでしょうか。ヤマグチさん。
○記者
 プラッツのヤマグチです。
 九州電力の玄海発電所の件でちょっとお伺いしたいのですが、審査会合も残すところ、あとわずかだというところで、進捗、スムーズにいっているかと思うのですが、委員長が、最初は、それこそ川内1、2号が先頭を切って再稼働にこぎ着けたというときと比べて、玄海のほう、審査会合といえども、まだ設置変更許可がおりる前の話ではあるのですが、そこら辺、比較されたときに、審査、もしくは九州電力の対応の仕方で何かしら発展等、お感じになったような部分とか、スムーズにいっているような部分とか、何か違いめいたものはお感じになるところはございますでしょうか。
○田中委員長
 今の御質問だと、川内と比較してということであれば、事業者が川内の経験を生かして玄海の申請を対応しているというふうには理解、多分そうだと思います。玄海については、元々、比較的早い段階でいわゆる地盤関係のところとか、津波のとこ4ろは済んでいるので、そういう意味では、そういう川内の経験も含めて、玄海は比較的早く進むのだろうなという、審査会合を見ているとそんな感じはしますけれども、いろいろな状況があって、そのうち、順番になるのだろうと思いますけれども、そういう感じではないでしょうかね。何か余り答えになっていないかもしれない。御趣旨が何となくよく分からないので。
○記者
 比較されたときに、少し審査過程もしくは事業者の対応の仕方で、前回と比べた場合にスピード感があるとか、何か。
○田中委員長
 そこはちょっと私も、更田さんの方とか、そっちの方がいいと思うのですが、私は余り細かいニュアンスまではよく承知しておりません。ただ、川内のときは手探りみたいなところがあったと思うのですが、今度はある程度相場観というのを持っているのだと思いますので、それなりの自信を持ってどういう対応をすればいいかという取組はしているのだと思いますけれども。
○記者
 玄海は間もなく審査会合も終盤にというところで、委員長御自身が御覧になって、特に課題めいたものは、今のところ、お見受けされない。
○田中委員長
 私の理解では、大きな問題は大分もう済んでいるのではないかと思っていますけれどもね。
○記者
 ありがとうございました。
○司会
 ほかにございますでしょうか。
  では、今、手を挙げている2人の方で終わりにしたいと思います。
まず、そちらの方。
○記者
 新潟日報のナガノと申します。
 東京電力・柏崎刈羽についてお伺いします。一部報道で、審査について、また優先審査にすると規制委員会が方針を固めたという報道もありますが、こちらについての事実関係を教えてください。
○田中委員長
 報道は知っています。今日いっぱい、たくさん出ていたから。でも、報道されているような事実があったとか、そういう相談を受けたことも何もありません。私の理解では、柏崎刈羽については、耐震設計のところでまだ残っているということもありますし、いくつか大きな課題が残っていて、そもそもが東京電力という実施事業者という問題もありますし、いくつかこれから問題があると思うので、優先になるかどうかというのは分かりません。
 ただ、まさに今は横一線に近いのではないでしょうかね。島根も少し、そういう意味では、宍道断層の扱いで耐震、Ssが上がったことによって、いろいろ問題が出てきているというようなこともありますし、ほかもいろいろあるので、B関係については、まだそこまで言えるような段階ではないような気がしますけれども、もう少し先に行かないと分からないと思います。
○記者
 関連で、委員長に報告はされていなくても、現場レベルでそういう話になっているということはあるのでしょうか。
○田中委員長
 現場レベルでどうなっているかは分からないけれども、この前、東海2号炉の審査のとき、更田委員がいずれはそういうことも必要になるかもしれないというような発言をしていたというのは承知していますけれども、それがどこになるかということまでは言っていなかったと思いますけれどもね。
○記者
 ありがとうございました。
○司会
 では、最後に、ミヤジマさん。
○記者
 FACTAのミヤジマです。
 更田先生が東電に対してタンク増設の行政命令を出すと。これは再三におっしゃっているのですね。これは国民から見ても、差し迫った危機があるから、そうおっしゃっているわけなのですよね。私はそれは共通の認識なのですが、果たしてそれは今、委員会の皆さんの中で、非公式でも、やはり民間上場会社にそういうことを求めるというのは大きな決断ですから、委員会としてのコンセンサスがある程度できているのかどうか伺いたい。
 これは、それとあわせて総務課長に伺いますが、その場合、何の権限に基づいてどういう行政命令を出すのか。それから、委員会決定となるのか。やはり規制ではなくて、これから将来にわたる危機に対して、この委員会がどういう行政命令を出せるかというケースは、私は、今回問われていると思うのですが、その法律のたてつけはどうなっているのか伺いたいです。
○田中委員長
 まず最初のところですけれども、委員会委員の中で合意が得られているとか、そういうことではなくて、1Fの監視検討会、先日も、余りにも凍土壁の問題を含めて、らちがあかないので、更田さんが、とにかく予測されるというか、まさに心配される津波とか、そういうことを踏まえて、早く内蔵の放射能を下げるということだから、そういう意味でそういうアイデアを出されたのだというふうには理解していますけれども、委員会として合意したとか、議論したということではありません。
○松浦長官官房総務課長
 法律上のたてつけですけれども、原子炉等規制法の64条の3に、行政処分としての措置命令を出せることになっておりますので、当然、行政処分ですので、こちらを出すとなれば、委員会決定ということになると思います。
○記者
 それで、結局、伺いたいことは、それは炉規制法のは分かるのですね。だけれども、こういうのは一般的には業法規制だと思うのですよね。だから、今回のケースは、凍土壁がうまくいかないということを認めたくない行政庁が1つあるわけです。
 それに対して、今、東京電力は、タンクを増設すると言えば、凍土壁が余りうまくいっていないということを認めたことになるから、私ども、要するにジャーナリズムの観点からしたら、東京電力はさっさと作りますと言わないように見えるのです。だとしたら、法律のたてつけからすれば、設置法上、やはり凍土壁を作るということをやったのは経産省ですから、経産省に対して実は勧告をするようなのが本来の在り方だと私は思うのですけれども、東京電力に対して規制庁がタンクを作れではなくて、やはり汚染水のオペレーション全体を、にらんでいるのは経産省ですから、経産省のやはり指導ということを言うのが、僕は、もんじゅと同じたてつけだと、そっちが本質だと思うのですけれども、その辺はどうお考えなのでしょうか。
○田中委員長
 お金は確かに、先ほど申し上げましたように、国費が出て経産省が主掌でやっているわけですから、そうですけれども、国民の目から見たら、やはりこの水の問題の責任は東電が持つべきだし、実際に事業としてやっているのは東電ですから、まず、東電がどう判断するかということをきちんと責任を持ってやるべきだというのが基本ですよね。そういう観点から、タンク、本当に増設を要請するかどうかもまだ決まっているわけではありませんけれども、そういうことになるのだと思うのです。
 うまくいかないというのを認めるのが嫌だから突っぱねているという、そういうこともあるのかなと、今、感心して聞いていたのだけれども、そういうメンツの問題だけでこの問題をやるとすると、これは大間違いだというふうに思います。
○松浦長官官房総務課長
 法律上の話を申し上げますと、当然、御承知のことだと思いますが、勧告は強制力がございません。経産大臣に対して勧告して報告を求めることはできますが、強制力はございません。ただし、炉規法の事業者に対する強制処分に対しては、強制力がございますので、そういった効果の違いはございます。いずれにしても非常に大きな問題なので、委員会でどのように判断されるかということだと思います。
○田中委員長
 それから、技術的な話ですけれども、水を減らすということだけがよく議論されるのですが、原子炉をドライアップするということが、今後、廃止措置の最終段階で必要になってくるのです。だから、凍土壁の努力をしていると同時に、今、現存しているリスクを減らすという意味のタンク増設というのと別に私は矛盾しないような気もするのです。その辺をどう判断されるかということです。ですから、本当にそういうことで時間がかかるのだったらば、防潮堤をもっときちんとやれという話もあるよという議論もしていたと思うので、その辺の判断も含めてよく考えていく段階ではないのかと思いますが。
○記者
 よく分かりました。
 総務課長がおっしゃるように、確かに炉規制法の強制力というのは分かりますけれども、それは最後の最後の話ですよね。基本的に上場会社ですから、そんな簡単ではないと思うのですよね。基本的には、やはり経産省が実質的に汚染水対策のことは握っているわけですから、私は、行政庁が行政庁にもっとしっかりやれと言うのが常識的な順番だと思います。強制力云々は分かるのです。だけれども、そう簡単にできる話かと。更田さんはそういうふうにおっしゃいますけれども、本委員会で議論もなっていないことで民間会社に出すぞ、出すぞと言われても、それは何かブラフとしか私には聞こえないものですから、その辺はやはりたてつけを守られた方がいいのではないかと思うのですけれどもね。
○司会
それでは、本日の会見はこれで終わりたいと思います。お疲れさまでした。

KEY_WORD:田中俊一: