【記事79220】避難計画 どうする事前同意 東海第二 今年の焦点(東京新聞2019年1月10日)
 
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避難計画 どうする事前同意 東海第二 今年の焦点

 東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発は昨年、原子力規制委員会から二〇三八年十一月までの運転延長を認められ、再稼働に必要な国の主要な手続きを終えた。ただ、課題は多く、実際に再稼働できるとは限らない。今年は、避難計画づくりの進み具合や、事前同意が必要な周辺六市村と原電の協議の運用をどうするのかなどが焦点になる。 (越田普之)
 「三市が避難計画を公表しているが、完成したとは思っていない。バスの確保なども期限を切らずに準備していく」
 計画の策定状況について、県原子力安全対策課の担当者はそう説明する。
 策定が義務付けられる十四市町村は昨年までに、住民約九十六万人の避難先になる県内外の自治体と協定を結び終えた。笠間、常陸太田、常陸大宮の三市が計画を作ったが、地震や津波などの複合災害や、避難先が被災した場合の対応も想定されていない。
 県は、第二の避難先を探し始めているが、見通しは立たない。さらに、高齢者や障害者ら一人で逃げられない人のためのバスや福祉車両も必要だが、確保できていない。
 どこまで計画の実効性を高められるのかがポイントになる。ただ、那珂市の海野徹市長のように「そもそも、実効性ある計画はできない」とする声は根強い。
 原電は二一年三月までに、再稼働に必要な事故対策工事を終える考えを示し、防潮堤など一部の工事はすでに始まっている。
 工事は約千八百億円にも上るのに、原電は「施設の安全を向上させるため」として、再稼働の意思を正式には明らかにしていない。こうした曖昧な姿勢に、首長たちのいら立ちは頂点に達している。
 「工事が終わって後戻りできなくなってから(再稼働を)認めろ、というやり方は受け入れられない」
 昨年十一月、東海第二の周辺六市村の首長と原電幹部が顔を合わせた会合で、水戸市の高橋靖市長が、そう語気を強めた。
 高橋市長は、意思表示をしないうちは、本格的な工事に着手しないよう原電に要求。これに原電は「会社としての方針は、少し時間をいただきたい」と回答。どう対応していくのかが注目される。

◆事前同意で原電と6市村 協議会の進め方議論を

 再稼働には、県と東海村に加え、水戸市など三十キロ圏に含まれる五市から同意を得る必要がある。
 水戸市や東海村など周辺六市村と原電が昨年三月に結んだ協定では、原電と六市村による協議会で「合意形成を図る」とした。その上で、確認事項として再稼働について「六市村が納得するまで、とことん協議を継続する」と明記。一市村でも反対していれば、再稼働できない仕組みになっている。
 昨年十一月、原電の和智信隆副社長が「(協定に)拒否権という言葉はない」と協定の趣旨を否定すると受け取られる発言をしたことに、村松衛社長が年末、六市村をまわり、首長と面会し謝罪。六市村関係者によると、村松社長は「納得いくまで協議は続く。ということは、それ以上前には進めないという考えです」と、一市村でも反対の場合は再稼働しないという協定の趣旨をあらためて確認したという。
 原電と六市村との協議が本格化するのは、東海第二の事故対策工事が終わってからとみられる。
 重要なのは、協議会の進め方で、現状では、議事を取り仕切る進行役や、公開か非公開かも含め、何も決まっていない。さらに、各自治体が、再稼働の是非について住民意思をどうくみとっていくのかもポイントになる。 (山下葉月)

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