【記事69990】社説:原発4基再稼働 多重事故への備えない(京都新聞2018年5月14日)
 
参照元
社説:原発4基再稼働 多重事故への備えない

 安全性や避難体制が確立されないまま、原発の再稼働を続けていいのだろうか。
 関西電力大飯原発4号機が再稼働した。
 福井県内では昨年、関電高浜3、4号機、今年3月には大飯3号機がそれぞれ再稼働した。これで、近接する4基の原発が同時に動いている状態になった。
 原子力規制委員会の審査に合格し、福井県知事の同意も得てのことだが、事故時の避難計画は、両原発が同時に事故を起こすことを想定していない。
 両原発は14キロしか離れていない。関電は美浜原発3号機など他の3基の再稼働も目指す。京都府や滋賀県の住民にとっては、重大な問題だ。
 京都府の西脇隆俊知事は関電に安全対策の徹底を求め、滋賀県の三日月大造知事は再稼働反対の姿勢を明確にした。
 東京電力福島第1原発の事故の後、国は原子力災害対策指針などで避難する手順を決めた。
 重大事故が起きれば、周辺住民は放射能汚染の検査を受け、府県境を越えて避難する。
 大飯原発の場合、広域避難計画に基づき、30キロ圏内の住民15万8千人が避難経路の途中で検査を受ける。京都や滋賀の住民も含まれる。
 まず車を検査し、基準を超えた場合は人も検査し、必要なら除染作業も行うが、混乱なく進むとは限らない。入念に行えば避難が遅れ、不十分なら避難先とのトラブルが起きかねない。
 天候にも影響される。福井県内では今年2月、国道8号で1000台を超える車が豪雪で3日間にわたって立ち往生した。国道8号は避難経路の一つである。
 政府は、同時事故を想定した防災訓練を今夏に実施し、避難計画の実効性を検証するという。なぜ、それまで待てないのだろうか。仮に避難計画の実効性に問題があれば、運転を取りやめるのか。理解に苦しむ対応だ。
 再稼働に伴い、使用済み核燃料も積み上がる。関電の原発の敷地内にある貯蔵プールは約10年で満杯になる。関電は中間貯蔵施設の候補地を福井県外で探しており、今年中に明らかにする方針だが、難しいとの指摘もある。
 日本原電は東海第2原発について、立地の東海村だけでなく、周辺5市からも同意を得る協定を結んだ。関電も、安定稼働を目指すなら同様の対応を取るべきではないか。
[京都新聞 2018年05月14日掲載]

KEY_WORD:OOI_:TAKAHAMA_:MIHAMA_:FUKU1_:TOUKAI_GEN2_: