【記事66617】規制委国会決議 徹底せず 避難施設不十分(東京新聞2018年3月9日)
 
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規制委国会決議 徹底せず 避難施設不十分

 東京電力福島第一原発事故を受け、原子力施設の安全を担う「原子力規制委員会」が設置される際、政府に対応の充実などを求めた国会決議が、採決から五年九カ月となる現在、十分に徹底されていないことが分かった。決議が求めた緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)や、住民の一次避難施設の整備は十分と言えず、原発を推進する安倍政権の下、国会が指摘した懸念はおざなりにされている。 (大杉はるか)
 決議は民主党政権時代の二〇一二年六月、規制委設置法案を審議した衆参両院の環境委員会で採択された。計四十項目に上る。決議提案者の加藤修一・元公明党参院議員は「設置法(の中身)が粗く審議時間も短かったので、決議でできるだけ縛りを掛けたかった」と説明する。
 福島の事故でオフサイトセンターが事故炉から近すぎて使用できなかった反省から、「適切に離れた場所」への設置を求めた。
 内閣府原子力防災担当によると、オフサイトセンターは事故後、原発近くにあった六カ所が、原発から五キロ以上離れた場所に移設された。だが津波で浸水した東北電力女川原発(宮城県女川町など)では建設されていない。
 決議では、事故直後に放射線から身を守る一次避難施設の整備も求めた。建設中を含め二百四十三カ所が設置されたが、設置に必要な避難計画は、百三十五の原発周辺市町村のうち二十五市町村で未作成。避難計画が決まらないと一次避難施設も整備できない。日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)や中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)周辺で遅れが目立つ。
 ほかにも、規制委の委員個人の研究や委員が所属する研究室が、委員就任前三年間に原子力事業者から受けた寄付金を公表するよう求めている。
 同委のウェブサイトによると、委員の研究室などに日本原子力研究開発機構など四カ所から研究費計約千六百万円、原発メーカーの日立GEニュークリア・エナジーなどから計百六十万円超の高額寄付があった事実を、決議通り掲載している。
<原子力規制委員会> 原子力施設の安全を一元的に担う行政組織。以前は原発を推進してきた経済産業省の外局「原子力安全・保安院」などが原発の安全を担っていたが、福島の事故を防げなかった反省から環境省の外局として2012年9月に発足した。原発の再稼働で、新規制基準への適合を判断している。設置法は「専門的知見にもとづき中立公正な立場で独立して職権を行使する」と定める。

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