【記事57820】東海第二の過酷事故に備え 日立市が広域避難協定 福島県17市町村との間で(東京新聞2017年8月4日)
 
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東海第二の過酷事故に備え 日立市が広域避難協定 福島県17市町村との間で

 日本原子力発電東海第二原発(東海村)の過酷事故に備え、日立市は三日、全市民約十八万三千人の避難先になる福島県の十七市町村との間で、広域避難に関する協定を結んだ。原発事故を巡り、県外自治体と協定を締結するのは笠間市に次いで二例目。 (越田普之)
 日立市は、市南部の一部が東海第二原発五キロ圏の予防防護措置区域(PAZ)にかかり、それ以外の地域も原発からおおむね三十キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)に入る。UPZの自治体には広域避難計画の策定が義務付けられており、市は年度内の完成を目指している。
 協定は全十条。広域避難の期間を原則一カ月とすることや、避難者の汚染検査(スクリーニング)と除染は茨城県が実施することなどと定められている。
 福島県郡山市での協定締結式に出席した日立市の小川春樹市長は「原子力災害はあってはならないが、万が一へ備える必要がある。お願いを快く受け入れていただいたことを、市民に伝えたい」とあいさつ。
 計画の実効性を確保するため、今後は市内二十三地区ごとに、避難先を視察してもらう考えを示した。
 最多の約四万三千人を受け入れる郡山市の品川萬里(まさと)市長は「市内の施設の収容力を改めて集計する」とバックアップを約束する一方で「北西へ風が吹いていると、放射性物質が飛ぶ方へ避難することになる。風向き次第でどこへ避難するか検討した方がいい」と懸念を示した。

 ◇ 
 日立市が協定を結んだ福島県の自治体は次の通り。
 ▽福島市、会津若松市、郡山市、いわき市、須賀川市、喜多方市、二本松市、田村市、伊達市、本宮市、桑折町(こおりまち)、国見町、大玉村、磐梯町、猪苗代町、三春町、小野町

◆進まぬ協定締結 30キロ圏内で半数以下
 東海第二原発から半径三十キロ圏には、十四市町村に九十六万人が暮らす。過酷事故が発生した時、各自治体は住民を円滑に避難させるため、避難所運営に必要な物資の提供や受け入れ期間などを、避難先となる自治体と取り決める協定を結ぼうとしている。しかし、町内避難の大子を除く十三市町村のうち、締結に至ったのは五市村だけだ。
 水戸市は昨年八月に県内九市町と計十万人が避難する協定を結んだ。残る十七万人の避難先となる栃木、群馬、千葉、埼玉、四県の約三十市町村とは未締結のままだ。市の担当者は「大枠は固まってきたが、まだ調整がついていない部分がある」として、年内の締結を目指している。
 大洗町と常陸大宮市は、県が示した県外避難先との話し合いが続いている。大洗町の担当者は「避難計画の策定に合わせ、来年三月までには結べるようにしたい」と話した。(山下葉月)

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