【記事54999】「人口多い特殊性に理解を」 原子力政策めぐり東海村長(東京新聞2017年6月13日)
 
参照元
「人口多い特殊性に理解を」 原子力政策めぐり東海村長

 日本原子力発電(原電)東海第二原発(東海村)の立地・周辺六市村でつくる「原子力所在地域首長懇談会」(座長・山田修東海村長)は九日夜、国の担当者らを招いた意見交換会を東海村で開いた。終了後、取材に応じた山田村長は、避難計画づくりの困難さを訴え、不明瞭な国の原子力政策をただした。内閣府のほか、原子力規制庁と資源エネルギー庁の担当者が出席した。取材での山田村長の発言要旨は次の通り。 (酒井健)

 −国との間に、どのようなやりとりがあったのか。

 広域避難計画は理論上、(原発から五キロ圏の)PAZは即時避難、(三十キロ圏の)UPZは屋内退避。九十六万人が一斉に避難するわけではないと(内閣府は)言うが、人はそんなに冷静に動けない。
 首長側からは、実態に即した避難計画をつくらないと実効性はないという意見があった。この地域の持つ特殊性が、国の担当者にどこまで伝わっているのかという思いはある。

 −特殊性とは。

 多くの首長が、人口の多さが、ほかの(原発を抱える)地域とは違うと考えている。人が実際に行動する時の困難さは際立っているんじゃないかというのが共通の思い。内閣府は個別に支援していくと言うが、限界はあると思う。納得できるところまでは、なかなかいかない。
 安定ヨウ素剤の事前配布がPAZだけだと、UPZは必要な時に配布できないのが実態。指針の見直しも含めて考えてほしいという意見があった。規制庁は、実態を見据えて今後、検討すると。
 あとは立地の考え方。東京電力福島第一原発事故以降、立地自治体と隣接自治体の境界に何の意味もなくなった。発電所からの距離感に差がなくなっている。時代の変化を見ると、考え方を見直す時期では、という意見があった。資源エネルギー庁からは明快な回答は得られなかった。

 −国と意見交換した感想は。

 住民を守る首長の立場からすると、実態をよく見てほしいと思う。避難計画の策定も、自治体の責務と言われればやらざるをえないが、非常に困難。安定ヨウ素剤の配布にしても、本当に住民のことを考えたら、どのような形にした方が良いのか。現場を知っている私たちが一番、感じている。そこにきちんと寄り添って考えてもらいたい。今の指針やルールを変えることも考えてほしい。

 −懸念は解消されたか。

 まだ解消されていない。国は縦割りだが、首長はすべてに対応しなければならない。いろいろな課題をぶつけたが、納得できる明快な回答はなかった。現時点での限界かもしれない。
 再稼働について、誰が本当に責任を持って住民に理解を求めていくのか。事業者(原電)なのか、国なのか、強く意見を述べていた首長もいた。

KEY_WORD:TOUKAI_GEN2_: