[2020_10_25_03]【検証 トリチウム水】タンク保管 漏えい対策後手に 度重なるトラブル(福島民報2020年10月25日)
 
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【検証 トリチウム水】タンク保管 漏えい対策後手に 度重なるトラブル

 東京電力福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水を巡り、政府が海洋放出を軸に最終調整している。原発事故による避難や風評に苦しんできた県民は、処理水の処分方針を決める政府の動向を注視する。
 福島第一原発の4号機南側で、円筒形のタンクの建設が進む。原発事故前に広がっていた緑は消え、鋼鉄の無機質な造形物に置き換えられた。建設作業は十二月末までに完了する予定だ。タンク建設の「最終地」で、このエリアが完成すれば、東電が計画した容量の約百三十七万トンに達する。
 タンクには原発内で発生する汚染水を浄化した後に残るトリチウムを含んだ処理水が保管されている。事故当初から貯蔵し続け、増設を繰り返したタンクは千四十基を超える。処理水の量は百二十三万トンに上り、日々増え続けている。東電は二〇二二(令和四)年夏ごろに満杯になると試算している。

 ■地下水で増加

 二〇一一(平成二十三)年三月、1〜3号機で炉心溶融(メルトダウン)を起こし、原子炉建屋内に核燃料が溶け落ちた。
 この溶融核燃料(デブリ)を安定的に冷やすため一日当たり計二百十六トンを注水している。冷却し続けなければデブリの温度が上昇して水が沸騰し、放射性物質を含んだ蒸気が大気中に拡散してしまう危険性がある。
 デブリに触れた水が放射性セシウムやトリチウムなど六十四種類の放射性物質を含んだ汚染水となる。汚染水は吸着装置でセシウムやストロンチウムなどを除去した上で、再度注水する。
 デブリの冷却水は循環させているため、注水だけで量は増えない。だが、地下水が原子炉建屋に流れ込んだり、破損した屋根から雨水が入り込んだりして、量が増え続けている。
 タンクにためる水は多核種除去設備(ALPS)で六十二種類の放射性物質を取り除くが、トリチウムは除去できずに高濃度で残る。他に炭素14が排水の法令基準値より低い濃度で含まれている。

 ■急場しのぎ

 汚染水を浄化した処理水は当初、地上タンクの他にも、保管容量を増やすために敷地内に掘った地下貯水槽を活用してためていた。
 しかし、二〇一三年の地下貯水槽の使用開始後に処理水の周辺土壌への漏えいが相次いで発生したため、地上タンクに集約する方針に転換した。ただ、スピード最優先で建設されたタンクは鋼鉄製の部材をボルトで留める「フランジ型」だったため、接合部から水漏れが起きた。漏えいを防ぐため、タンクは「溶接型」に順次切り替えられた。処理水の漏えいなどトラブルが度重なってきた。
 地元で処理水の行方を気にしてきた大熊町の無職男性(72)は「知見がない中で急場しのぎの対応を迫られたのだろう」とみる。
 タンク内にためる処理水を減らすため、汚染水の発生そのものを抑制する対策も続けられている。
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