【記事10302】発生期にあった新潟地震 地殻変動、60余年のデータ 国土地理院 数年前から不安定 地盤もりあがり極限に 地震予知の手掛かりに 坪川国土地理院測地部長の話 宮地測地審議会長の話 地震で18センチも沈む(毎日新聞1964年8月17日)
 
 

※以下は上記本文中から重要と思われるヶ所を抜粋し、テキスト化したものである

 土地のかすかな上がり、下だりー地殻の変動ーをある期間、継続的に測量して地震の発生を予測することは、地震予知研究の重要テーマとなっているが、東京・目黒の建設省国土地理院測地部(部長・坪川家恒理博)は15日、新潟地震の震源地付近の4地点の過去60余年間にわたる克明な地殻変動のデータをまとめた。この結果、新潟地方はここ1、2年”地震の発生期”にあったことがわかった。大地震の震源地に近い場所で、過去の連続的な地殻変動をくわしくとらえたのは世界でもはじめて。文部省の審議会(宮地正司会長)でも「地震予知研究に有力な手がかりを与える貴重なデータだ」といっている。
 国土地理院測地部の説明だと、地殻変動を記録したのは新潟地震の震源地(粟島北方沖)から40キロ以内にあるA(鼠ヶ関=ねずがせき)B(府屋)C(蒲碍峠)D(村上市北方約10キロ)の各”一等水準点”。新潟平野一帯は日本でもっともひどい地盤沈下地帯であり、国土地理院は地盤沈下の実態を調査するため、明治33年(1900年)昭和5年(1930年)および昭和30年いらい4回同地域にある”一等水準点”の測量を周期的にやってきた。
 こんど地殻変動を解析した4点は、地下水くみ上げなど人工的な影響をほとんど受けない場所で、土地の自然変動をとらえている。
 4点の60余年間の変動をみると、1900年をゼロとした場合、50年間はほぼ似た上昇カーブを描き、7.5−10センチ盛り上がったが、昭和30年からD、C点の上昇は急カーブとなり、A、B点は横ばい状態を示し、35年以後C点は沈下するなど不安定な状態にあった。つまり、ここ数年新潟県北部では地盤が上昇の”極限”にあって、地殻内部にたまった地震エネルギーをささえられない危険状態を示していたという。

地震で18センチも沈む

 6月16日の地震発生後A一等水準点を測量したところ地震前に比べ18センチ近くも沈下し1900年以前まで戻ったことがわかった。今回の成果は28日、東京・銀座の科学技術庁防災科学技術センターで開かれる新潟地震報告会議で坪川部長から発表される。

地震予知のてがかりに

坪川国土地理院測地部長の話
 新潟の地盤地下調査のため測量をやってきたが、たまたま近くで新潟地震が起きたため世界的にも珍しいデータがとれた。地殻の変動は、局地的に違った形を示すので、いちがいにはいえないが、4水準点では、はっきりと地殻変動の不安定状態を示しており、地震予知研究の有力な手がかりになると思う。

宮地測地審議会長の話
 地震予知研究を地殻変動の面から進めていくことはこれまでも論議されているが、今回のデータはその重要さと可能性を示した貴重なものだ。地震のため上下変動のほか土地の面積もわずかながら変わる。土地の変動について組織的継続的に測量し、地震学者をはじめ各方面の専門家の協力のもとに研究を進めてゆけば地震予知にも目鼻がつくだろう。

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