[2012_10_10_02]2030 あおもりの未来 原発依存から自立へ 最終処分地「ノーと言えぬ」 六ヶ所村議「勉強会」今は封印(東奥日報2012年10月10日)
 
 「最終処分事業の必要性や安全性について十分に国民的理解を得るには至らなかったことが大きな要因」。5日に開かれた県議会原子力・エネルギー対策特別委員会で、資源エネルギー庁原子力立地・核燃料サイクル産業課の野田耕一課長は、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の最終処分地の選定作業が進んでいない理由を苦渋に満ちた表情で語った。
 政府は新たなエネルギー・環境戦略に「青森県を最終処分地にしないとの約束は厳守する」と明記。さらに、国が原子力施設立地自治体と電力消費地域と協議する場を設置し、最終処分地の確保に向けた取り組みなどについて結論を見いだしていく作業に直ちに着手する−とした。

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 処分地の選定を行う原子力発電環境整備機構(NUMO)広報部によると、現在、自治体を含めて問い合わせは来ているが、手続きの第1段階となる文献調査への公募に名乗りを上げようとする具体的動きはないという。
 資源エネルギー庁は2011年4月の統一地方選後に、全国の複数の自治体に文献調査実施を同時に申し入れる方向で検討していたが、福島原発事故で先送りされた。
 野田課長は今後の取り組みについて「国の一層の関与の在り方を含めてしっかりと検討を進めていく」と述べるにとどめた。新戦略で明記されても、廃棄物を一時貯蔵している本県がなし崩し的に処分地になるのでは−との県民の不安は依然消えない。

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 核燃料サイクル施設が立地する六ヶ所村議会では震災前、最終処分地受け入れも視野に入れた勉強会開催を模索する動きがあった。10年9月、新むつ小川原開発対策特別委員会で、NUMOに対する説明会開催の要請を決めたが、その後議員の足並みが乱れたことなどから実現しなかった経緯がある。勉強会開催を模索した村議たちには、今もその気持ちがくすぶっているのだろうか。
 村議の1人は「放射性廃棄物の処分について、先行きが見えないうちは本格的な議論にならないだろう。しかし、私自身、処分地受け入れを『ノー』とは言えない」と本音を漏らした。
 橋本猛一・村議会議長に最終処分地をめぐる議論について問うと「震災後、本会議や委員会で取り上げられたことはない。急いで議論しなければならない問題だとは考えていない」と答えた。ただ、「次の世代が向き合うことになるだろう」と付け加えることも忘れなかった。
 多くの村議は処分地受け入れを容認する気持ちが震災後も消えていないとみられるが、国と県の確約の存在や原発事故から時間がたっていないため胸の内に秘めている。ただ、将来的には再び受け入れを視野に入れた動きが出てくる可能性は否定できない。
 東通村議会では有志が震災前、高レベル処分事業を含む原子力関連の勉強会を開いたことがある。(月舘憤司、古川靖隆)

 最終処分地選定作業

 最終処分地は(1)過去に起きた地震、噴火などを資料で調べる「文献調査」(2)ボーリングや地質調査を行う「概要調査」(3)地下に施設を建設し、地層の物理的、化学的性質を調べる「精密調査」−の3段階で絞り込み、最終決定する。精密調査地区の選定は平成20年代中頃、建設地選定は平成40年前後を目標にしているが、極めて厳しい状況だ。第1段階の文献調査について、原子力発電環境整備機構(NUMO)が2002年から全国の市町村を対象に公募を開始。07年に高知県東洋町が初めて応募したが、町長選で反対派候補が当選し撤回した。これを受けて、国の前面に立った取り組みを求める声が高まり、同年、国による申し入れ方式も導入した。
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