[2018_03_11_03]送電網、空きあるのに接続拒む 電力参入 大手の壁(東京新聞2018年3月11日)
 
参照元
送電網、空きあるのに接続拒む 電力参入 大手の壁

 電気エネルギー源として、再生可能エネルギーは重要度を増し続ける。だが、いかに安定的に送電網へ電気を供給するか、設置する用地確保に伴う環境破壊をどう防ぐかなど、克服すべき課題はある。 (伊藤弘喜、山川剛史)

◆「予約済み」

 再生エネ事業を大規模に始めようとする際、必ずといっていいほどぶつかるのが、電力会社が保有する送電網への接続問題だ。電力会社が「送電線の容量に空きがない」として接続を拒んだり、億単位の送電線増強工事の費用を求めたりして、事業者側が計画を諦める例が全国で起きている。
 だが、必ずしも電力会社の主張が正しいとは限らないことが分かってきた。京都大の安田陽特任教授は一月、基幹送電線の利用率が全国平均で二割にとどまるとの分析結果を公表。原発など現実には稼働する見通しが立っていないにもかかわらず、「予約済み」として多くの容量を確保している実態が浮かんだ。
 再生エネで先行する欧州では「まずは接続し、運用してみて容量が足りなければ工事する」という方式を採る。安田氏は「電力会社が運用を工夫すれば、再生エネを接続する余地ができる」と指摘している。
 高科淳・資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長は七日、自然エネルギー財団主催のシンポジウムで講演。これまで全電源のフル稼働を前提としてきた空き容量の算定を実態に近いものにするなどして再生エネが使う容量を広げる方針を明らかにしたが、実現は不透明だ。

◆経済界の批判

 送電網を流れる電気は、少なすぎても多すぎても周波数に異常を生じ、停電を起こしやすくなる。このため電力会社は、電気の需要と供給の量をできるだけ一致させるよう、細心の注意を払う。
 太陽光にしても風力にしても、天気によって発電量が大きく変動する。経済界などが「安定性に欠ける」と批判する理由もここにある。数多くある再生エネの供給源の発電量が安定しないと、電力会社の立場からすれば、次の瞬間の全体の供給量を的確に予想するのは難しくなる。
 欧州では基本的に、再生エネを「変動的なもの」と割り切って、受け入れた上で対策を講じている。太陽光が好調で電気が余れば、上下二つのダムをもつ揚水式発電所を、大きな蓄電池のように活用するのが一例だ。揚水式発電は、余った電気でポンプを動かして上のダムに水をくみ上げ、電気が足りなくなる時間帯に放水して発電する。それでも電気が足りない時は工場に節電してもらい、逆にどうしても余る時は、再生エネ発電所に出力を抑えるよう指示する。
 また、最新の風力発電設備は出力制限など制御機能を備えており、安定性の課題は克服されつつある。

◆設置場所も

 再生エネ発電所はいったん造ってしまえば、維持費は比較的安く、原発のような放射能汚染を起こす心配もない。環境にやさしいエネルギー源といえる。ただし、山を広大に切り開いたり、農地をつぶしたりして、太陽光パネルを設置した事例も散見される。
 風が強い山地で風力発電する場合は、巨大なプロペラを山に運び上げるため、林道を切り開く必要がある。高速で回る風車が風を切る際に出す「ウオン、ウオン」という、特有の低周波による住民への影響も指摘されている。再生エネの設置場所を巡る課題は残っている。

KEY_WORD:_: