[2018_04_11_01]「主力」再生エネ 水差す声 欠点強調、原発必要論に固執(東京新聞2018年4月11日)
 
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「主力」再生エネ 水差す声 欠点強調、原発必要論に固執

 経済産業省の有識者会議が十日まとめた二〇五〇年に向けたエネルギー戦略の提言は、表面上は再生可能エネルギーを「主力電源」に位置付けているが、数値目標は示していない。その一方で、原発については「脱炭素化のための選択肢」であることを明示し、原発を将来的にも堅持するお墨付きを与えている。日本のエネルギー政策が「再生エネ拡大・原発縮小」という世界的な潮流から逆行する懸念は拭えていない。 (伊藤弘喜)
 提言は、再生エネの位置付けを従来の「有望かつ重要」から「主力電源化を目指す」に格上げした。「基幹電源」や「重要電源」としていた原発からは「重要」「基幹」といった文言が外れた。経済界の反発が根強くある「脱炭素化」も明示した。
 「経産省が『再生エネ主力化』や『脱炭素化』を言うようになったのは前進だ」。エネルギー戦略研究所の山家公雄所長は一定の評価をする。
 しかし、提言全体を通して繰り返されるのは、再生エネ推進論に対するけん制だ。「期待は高いが、世界で繰り広げられる挑戦は再生エネだけではない」「世界の投資額と設備量では火力・原子力をしのぐが、発電量では主力ではない」など水を差すような注釈が目立つ。
 温暖化対策の重要性を言いながら、再生エネには欠点もあることを強調し、「やはり原発も重要」という理屈につなげる思惑が透けて見える。
 エネルギー基本計画の見直しを議論する審議会の委員を務める東京理科大大学院の橘川武郎教授(エネルギー産業論)は「五〇年でも原発が重要だと言うことで、三〇年度の目標比率を変えないための口実をつくりたかったのでは」とも指摘する。
 ここ数年太陽光発電の世界的な価格が低下し、福島第一原発事故を受けた規制強化で原発建設・維持コストが上昇している。それにもかかわらず経産省は四年前のエネルギー基本計画で決めた三〇年度の発電に占める再生エネ比率22〜24%、原発比率20〜22%の目標を次期計画でも変えず原発再稼働を急ぐ方針。そのための理屈として長期的な観点からみても原発は重要と強調する戦略だ。
 「経済性などに優れた原子炉や廃棄物処理に向けた技術開発が重要」との表現には、とん挫したもんじゅの後継機の開発や核燃料リサイクル技術などばく大な費用がかかる技術開発の継続を正当化しようとの思惑ものぞく。
 福島原発事故を経験しながら日本の再生エネの取り組みは遅く、現時点の導入レベルも長期的な目標も主要国で最低水準だ。原発を重視する余り、再生エネ拡大の目標をはっきり打ち出さなければ投資を呼び込めず、「主力化」はただの掛け声に終わりかねない。脱炭素化からも遠ざかることになる。

<エネルギー基本計画> 国の中長期的なエネルギー政策の指針で、政府に策定が義務付けられている。2003年10月に最初の計画がつくられ、おおむね3年ごとに見直して閣議決定する。電力やガスなどエネルギー企業の投資計画にも影響を与える。現計画では「原発依存度を可能な限り低減する」と明記しながらも30年度時点で発電電源に占める割合を現在の1・8%(16年時点)から2030年度時点で20〜22%に引き上げる方針。再生エネは22〜24%にする計画だ。経済産業省は今夏に次期計画をまとめる。

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