[2019_01_07_04]高レベル放射性廃棄物 処分場選定へ マップ公表(NHK2019年1月7日)
 
参照元
高レベル放射性廃棄物 処分場選定へ マップ公表


地図の概要

 公表された全国地図は、国土全体のおよそ3分の2が薄い緑と濃い緑で示され、処分場として「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」とされています。
とくに濃い緑は沿岸部に沿って広がり、廃棄物の輸送の面でも好ましいとされています。
 また、島しょ部を含めてだいだい色の円が連なっている地域は主に火山から15キロの範囲が示され、地質の安定性から処分場として「好ましくない特性があると推定される」地域とされています。
 このほか、秋田県や新潟県、千葉県などに点在する銀色は、油田やガス田、炭田などの資源があるため、処分場として「好ましくない特性があると推定される」と位置づけられています。
 エネルギーの大消費地の首都圏では、千葉県から東京にかけて銀色の地域にガス田が広がっているほか、その中のだいだい色の地域は地層が比較的新しく、地盤が弱い地域とされています。
 また、静岡県中部から紀伊半島、四国、九州までの太平洋側の広い範囲が濃い緑に分類されていますが、この辺りは南海トラフの巨大地震が発生した場合、津波が到達することが想定されています。こうした場所が処分場の選定に向けた調査の対象となりうるかどうかについて国は、「処分場の候補地として具体的に決まった段階で、津波への対策を検討することは可能であり、現段階で見解は示さない」としています。
 このほか北海道は、条例を設けて、放射性廃棄物を持ち込ませないことを定めていますが北部と南部に広く薄い緑と濃い緑の地域が広がっています。
 国は、こうした条例があることは、理解活動を進めるうえで、考慮はするが、現段階で対応を変えるつもりはないとしています。
 また、青森県は、沿岸部を中心に濃い緑が広がっていますが、核のごみの中間貯蔵施設などがあり、国との間で、最終処分地にしないという約束を交わしていて、国は、「引き続き約束は遵守する」としています。
 東京電力、福島第一原発の事故のあった福島県について国は、「原発事故の収束など復興に全力をあげるなか、相応の配慮が必要で、高レベル放射性廃棄物の問題で、負担をお願いする考えはない」として住民に対し、処分場をめぐる対話活動は行わないということです。
「核のごみ」処分場選定に向け 初の全国地図を公表

 原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の処分をめぐり、国は、処分場の選定に向けた調査対象になる可能性がある地域を示した初めての全国地図を公表しました。近くに火山や活断層がないなどの科学的な基準から調査地の可能性が示された地域は国土の3分の2に上っています。
 原子力発電所の使用済み核燃料を再処理した際に出る、高い放射能がある高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」について、国は、地下300メートルより深くに埋める「地層処分」にする方針です。
 この処分場をめぐり、国は、近くに火山や活断層がないなどの科学的な基準に基づき、地域ごとの適性を示した全国地図「科学的特性マップ」を初めて作成し、公表しました。
 このうち、処分場として「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」は薄い緑色と濃い緑色で示され、面積にして国土のおよそ3分の2に上っていて、これらの地域は、将来的に処分場の選定に向けた調査対象になる可能性があるとしています。
 中でも、海岸から20キロ以内を目安とした地域は、想定される廃棄物の海上輸送に好ましいとして濃い緑で示され、こうした地域が一部でも含まれる市区町村は900余りに上るということです。
 一方、近くに火山や活断層があったり地盤が弱かったりする地域はだいだい色で、油田やガス田など資源がある場所は銀色で示され、いずれも処分場として「好ましくない特性があると推定される」としています。
 国は、この地図は処分場の選定に向けた第一歩だとする一方、自治体に調査の受け入れの判断を迫るものではないとしていて、今後、各地で説明会を開いて理解を求めたい考えです。
 ただ、調査対象となる可能性がある地域が広い範囲に及ぶうえ、安全性への懸念からこれまで調査の受け入れを表明している自治体はなく、調査地の選定は難航すると見られます。
 一方、使用済み核燃料の中間貯蔵施設などがある青森県と、東京電力福島第一原発の事故があった福島県について、国は「これ以上の負担をかけたくない」などとして、配慮して対応する方針です。

「核のごみ」とは

 高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」は、原発から出る使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムなどを取り出したあとの廃液をガラスで固めたものです。
 初期の段階では10数秒被ばくすると死に至る極めて強い放射線が出ていて、人が生活する環境から数万年にわたって隔離する必要があることから、国は金属製の容器に入れて地下300メートルより深くに埋める「地層処分」をする方針です。
 国内では、ことし3月末の時点で、青森県六ヶ所村や茨城県東海村の施設で2400本余りが保管されているほか、各地の原発には「核のごみ」のもととなる大量の使用済み核燃料がたまり続けています。

処分場選定難航の経緯

 いわゆる「核のごみ」の処分は、日本で原発の利用が始まって半世紀がたつ今も決まっておらず、原子力が抱える最大の課題と指摘されています。
 日本で処分場の選定が本格的に始まったのは平成12年でした。
 電力会社などが新たな組織をつくって全国の市町村から候補地を募集し、国も、応募した自治体に最初の2年間だけでも最大20億円の交付金が支払われる仕組みを設けました。
 しかし、平成19年に高知県東洋町が応募したあと住民の反対などによってすぐに撤回したほかは、応募はありませんでした。
 候補地選びが難航する中、国の原子力委員会は、平成24年、国民の合意を得るための努力が不十分だったとしたうえで、国が前面に出て候補地選びを行うべきだとする見解をまとめました。
 これを受けて、国は3年前、自治体の応募を待つ従来の方式に加えて、火山や活断層の有無などを踏まえ、国が自治体に処分場の選定に向けた調査を申し入れることができる新たな方式を取り入れ、その第一歩として今回のマップが公表されました。

処分場選定は3段階で調査

 今回公表されたマップを受けて、今後、自治体から応募があったり、国が自治体に調査を申し入れたりした場合、処分場の選定に向けた調査が行われることになります。
 調査は法律に基づいて3段階で行われ、はじめに、文献をもとに、過去の地震の履歴のほか、火山や断層の活動の状況などを2年程度かけて調べます。
 その次に、ボーリングなどを行い、地質や地下水の状況を4年程度かけて調べます。
 その後、地下に調査用の施設を作り、岩盤や地下水の特性などが処分場の建設に適しているか、14年程度かけて詳しく調べます。
 これらの調査は全体で20年程度かかることになっています。
 自治体が調査を受け入れると、最初の文献調査で最大20億円、次のボーリング調査などで最大70億円が交付金として支払われることになっていますが、国は、いずれの段階の調査も自治体の意見を十分に尊重し、自治体が反対する場合は次の調査に進むことはないとしています。

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