[2019_01_11_03]仏ASTRID凍結 日本の核燃サイクル完全破綻 今こそ核燃サイクルを止めて原発推進政策を放棄させよう! ウソにウソを重ね自滅する国に未来はない 国民は政権にNOを 渡辺寿子 (原発いらない!ちば)(たんぽぽ舎2019年1月11日)
 
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仏ASTRID凍結 日本の核燃サイクル完全破綻 今こそ核燃サイクルを止めて原発推進政策を放棄させよう! ウソにウソを重ね自滅する国に未来はない 国民は政権にNOを 渡辺寿子 (原発いらない!ちば)


1.頼みのASTRID開発中止の衝撃

 11月30日衆院第二議員会館で「止めよう核燃サイクル政策」省庁vs議員と市民の院内集会が持たれました。タイミングよく(?)当日、日本経済新聞朝刊が「核燃サイクル継続に黄信号」との大見出しでフランス政府が高速炉実証炉「ASTRID(アストリッド)」の開発計画を2020年以降凍結する方針であることを日本政府に伝えたと報じました。
 「もんじゅ」の廃炉が決定したことを受けて日本政府はなんとかして高速炉開発と核燃サイクルを継続しようと企んで、フランスが進めようとしていたASTRIDの共同開発にすがったのでした。
 しかしフランスは自国の原発依存度を現在の7割以上から5割程度まで引き下げる意向を表明し、これに絡んで高速炉の実用化は急ぐ必要はないと判断した模様です。
 高速炉の開発は普通の原発よりはるかに難しい技術や多額の資金が必要とされ、ドイツなども断念しました。フランス政府は2019年で研究を中断し、2020年以降は予算をつけないで凍結する方針と見られ事実上開発中止です。
 核燃サイクル継続の大きな名目だったASTRIDの開発中止は日本政府にとって大打撃で、核燃サイクル継続に「黄信号」どころか完全に「赤信号」が灯ったいとうことで核燃サイクルは完全に破たんです。
 この報道について問われた経産省資源エネルギー庁の担当者はそういう報道はあるが、フランス政府から凍結の報告は来ていないとシラを切りました。
 政府のエネルギー政策や内部事情に通じている日本経済新聞がこの問題で虚偽報道をするとは考えられません。
 「中止」を「凍結」、「赤信号」を「黄信号」としているのは、政権への配慮、忖度でしょう。
 どうみても断末魔だった核燃サイクルはとどめを刺されたといえるでしょう。この際潔く核燃サイクル放棄を表明した方が、日本の将来のためになるでしょう。

2.さらにプルトニウム増やす施策

 この日は新高速炉計画の検討状況、建設・発電コストなどについて質問しましたが、ロードマップ作成中、検討中でまだ確定していないので公表できないという答え。プルトニウムを「削減」する時代にいまだに「増殖」を目指すのは矛盾である。「増殖」オプションは放棄したと考えてよいのですねと問うと、これも議論中なので答えられないという。都合の悪い質問にはすべて検討中、研究中なので今は答えられないという答えで逃げ、何一つまともな答えはない。
 原子力研究開発機構は、廃炉作業中の新型転換炉「ふげん」の使用済核燃料と、同じく廃止作業中の東海再処理施設にある使用済核燃料合計で731体をフランスに搬出し、現地で再処理し、プルトニウムを取り出すことを検討しているという。
 日本は現在海外にあるものを含めて47トンものプルトニウムを所有しています。余剰プルトニウムを持たないという国際協約に違反し、アメリカからも削減を求められていますが、プルサーマル発電で少量使うしか今のところ具体的削減策はありません。
 今回フランスへ送るものを全量再処理すれば、プルトニウムがさらに1.3トン増えます。ここに至っても日本はさらにプルトニウムを増やそうとしています。  (下)に続く

3.実現不可能なMOX再処理工場

 プルトニウム削減策の一つとして挙げられているのがMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化燃料)を作ってプルサーマル発電で使うことです。
 しかし現行のようにMOXを一度だけ利用する方法は非常なコストがかかるばかりで、目に見える位プルトニウムを削減するには膨大な数のプルサーマル発電所が必要となり、現実的ではありません。
 核燃サイクルの輪を途切れさせないためには、使用済みMOX燃料を再処理する再処理工場(第二再処理工場)が必要になります。
 しかし、この建設は具体的には何もなく、建設費用の試算もしていません。MOXの再処理は技術的に難しい上、経済的にも成り立つ見込みはありません。
 使用済みウラン燃料を一度だけMOXにして再利用する場合と、全量直接処分する場合を比較するとどの程度「資源の有効利用」になるのかと問うと1〜2割程度ウラン燃料の節約になるという答えでした。この程度の節約で厖大なコストをかけて一層やっかいな核のごみを増やすなど愚の骨頂です(MOXの再処理はもともと不可能ですが)。

4.日本を滅亡させる安倍政権に怒りの声を

 原子力規制委員会は近く六ヶ所再処理工場について新規制基準に適合したことを示す審査書案を取りまとめると報道されています。
 しかし「適合」のお墨付きが出ても、24回も完工延期された工場がすぐまともに動くとは考えられません。
 六ケ所再処理工場は2017年10月時点で建設費用が、当初予算7000億円の約4倍超(新規制基準対応で7500億円増額となり)の2兆9500億円(約3兆円)に膨れ上がっています。
 また、六ケ所再処理工場の着工から廃止まで40年間にわたる操業、廃止措置までを含めた総事業費が約14兆円に上ると予測されています(使用済核燃料再処理機構発表)。
 電力消費者や納税者から吸い上げたお金を危険で無駄なことにこれ以上注ぎ込むことを許してはいけません。
 核燃サイクルは、世界に伍していく一等国になるには「核武装能力が必要」との思い込みと、三菱重工など軍事・原子力産業へお金を注ぎ込むことを考えた悪質な国策です。
 核燃サイクル政策は日本の原子力政策の根幹でした。核燃サイクル政策が崩壊すれば、日本の原子力推進政策は止まるでしょう。大きな声を上げて核燃サイクルとすべての原発を止めるチャンスが到来しました。
 経産省は性懲りもなくもんじゅの後継開発について工程表をまとめ、実用化目標を今世紀後半(!)としました。再生可能エネ推進に力を入れず、原発再稼働と幻の核燃サイクルにしがみつく、日本を滅亡に導くアベ政権に怒りの声を上げ、引導を渡しましょう。 (了)

 (「原発いらない!ちば」ネットワークニュース2018年12月号より了承を得て転載)

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