[2019_02_24_01]除染土再利用に地元反発=最終処分量減が背景−福島・東日本大震災8年(時事通信2019年2月24日)
 
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除染土再利用に地元反発=最終処分量減が背景−福島・東日本大震災8年

 東京電力福島第1原発事故で出た除染土の再利用をめぐり、放射線への不安が根強い地元住民らが反発を強めている。
 環境省は公共工事などで除染土を再利用し、安全性を確認する実証事業を計画。背景には、最終処分場に運び込む除染土を減らしたいとの思惑がある。

 ◇あり得ない提案
 「被災地にああいう提案をするのはあまりにもばかにしている。(除染で)集めた土をまたそこに埋めるというのはあり得ない」。福島県南相馬市に住む無職大森照夫さん(69)は憤りをあらわにする。環境省の実証事業には反対の立場だ。
 時事通信社が入手した資料などによると、環境省は昨年12月、同市を通る常磐自動車道の工事で除染土を再利用する実証事業の計画を議会に説明した。実証事業で環境省は、汚染されていない土を上にかぶせることで、原則1キロ当たり8000ベクレル以下の除染土を再利用する考えだ。しかし、同市では再利用に反対する地元住民の市民団体が結成され、署名活動を進めている。取材に対し同省は「地元にきちんと説明する前なので話せない」と、コメントを避けた。
 二本松市でも実証事業が計画されていたが、住民らの強い反発を受け白紙になった経緯がある。
 除染土は今も福島県内の仮置き場に保管されており、環境省は最長30年保管する中間貯蔵施設(同県双葉町・大熊町)への搬入を順次進めている。だが中間貯蔵が終わった後、除染土を全量保管できる最終処分場を確保するのは「実現性が乏しい」とみる。除染土の再利用が進めば、それだけ最終処分量は少なくなる。
 再利用には、除染土の仮置き場の早期解消への期待もある。中間貯蔵施設への運搬は長期化が予想され、南相馬市では、搬出に最長15年かかるとの試算も出た。仮置き場は住民の帰還を妨げる要因の一つになっている上、農地の上にある除染土を取り除かない限り営農再開もできない。

 ◇地域再生のため選択
 一方、原則立ち入り禁止の「帰還困難区域」に指定された同県飯舘村の長泥行政区では、再利用の実証事業を受け入れた。これにより、5年後の避難指示解除を目指す「特定復興再生拠点区域」の面積が広がった。行政区長の鴫原良友さん(68)は、地域の住民と何度も話し合ったといい、「仕方ない。中には『汚染土を入れると人が住めなくなるぞ、それで良いのか』という人もいた」と振り返る。地域再生のための選択とはいえ、住民の思いは複雑だ。

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