[2019_03_12_03]社説:地震予測改定 警戒怠らず次に備えを(京都新聞2019年3月12日)
 
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社説:地震予測改定 警戒怠らず次に備えを

 東日本大震災8年のきのう、被災地は鎮魂の祈りに包まれた。
 これだけの地震が起きた後は、しばらく大地震は起きないはず。そう思いたいが、油断は禁物だ。
 東北から関東地方の日本海溝沿いの海域で、今後30年間にマグニチュード(M)7〜8の大地震が起きる可能性が高いとする予測を、政府の地震調査委員会が公表した。
 確率90%以上の場所もある。復興の取り組みを加速させつつ、防災・減災の力を高める必要がある。改めて大津波からの避難対策や対応を徹底してもらいたい。
 今回の予測は2011年11月にまとめた長期評価を改定したものだ。政府は震災後の新知見を踏まえ、海溝型地震の発生確率の見直しを進めている。
 注目されるのは宮城県沖でM7・9程度が「ほぼ0%」から「20%程度」に、福島県沖のM7〜7・5程度も「10%程度」から「50%程度」に引き上げられた。宮城県沖は新たに算出したM7〜7・5程度が「90%程度」となった。
 日本海溝沿いでは1978年の宮城県沖地震など、過去にもM7〜8の地震が繰り返し発生。東日本大震災に比べると小さいが、相当な規模と言える。どの海域でも発生確率が非常に高く、心配だ。大きな揺れだけでなく、高い津波が沿岸部を襲う恐れがある。
 東日本大震災と同じ場所でM9程度の超巨大地震が起きる確率は「ほぼ0%」とする一方、隣接する場所で同規模の地震が発生する可能性を「否定できない」とした。ところが、規模や確率はデータ不足で明らかになっていない。
 「東日本級」の超巨大地震が発生しうるならば、その可能性の評価を前面に出して伝える必要があったのではないか。調査委の慎重姿勢に対しては、原発事故の再発を危ぶむ専門家からも「危険の芽から目をそらし、及び腰だ」との批判が根強い。
 というのも2002年の予測では大津波の危険性が指摘されていたのに「過去に確認されていない」「根拠不足」と重視されなかったからだ。対策に動きださないまま事故を迎えた苦い教訓を調査委関係者は忘れるべきではない。
 原発運転再開を急ぐ電力各社は負担増につながる防災想定の見直しには消極的だが、最悪の事態を想定した対策が求められよう。
 東北関東沖だけでなく、南海トラフなど巨大地震の可能性は全国各地にあり、いつでも起こりうる。このことを肝に銘じて警戒を怠らず、次の災害に備えたい。

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