[2019_04_27_05]三たびの後退・骨抜きは法的にも許されない 東海第二原発は特重施設の工事計画の申請さえできていない 他社の「見通しの甘さ」以前の状態である 特定重大事故対処施設の経過措置に係る意見 大石光伸(常総生活協同組合)(20190426メモ)(たんぽぽ舎2019年4月27日)
 
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三たびの後退・骨抜きは法的にも許されない 東海第二原発は特重施設の工事計画の申請さえできていない 他社の「見通しの甘さ」以前の状態である 特定重大事故対処施設の経過措置に係る意見 大石光伸(常総生活協同組合)(20190426メモ)

A.(一般的解釈)

1.特定重大事故対処施設はただでさえ経過措置を設けられた妥協的な例外規則であって、期限内に完成できなければ規制委員会が運転停止を命ずる(順法)のは法律上あたりまえのこと。特段の事ではない。

2.そもそも、特定重大事故施設(規則42条)ならびに常設直流電源設備(規則57条)を、「信頼性を向上させるためのバックアップ対策として求めている」などとして経過措置を講じること自体が誤っている。
 改正炉規法で「大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行」い「行い、もつて国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的とする。」ことが第一条「目的」で明記されている。
 福島第一原発事故を教訓として改正された炉規法の「目的」にもとづく規則である以上、新規制基準「施行日」から直ちに適用すべきでものである。

3.それを新規制基準施行に際して基準施行(2013年7月)から5年(2018年7月)の経過措置としながら、早くも2015年には「審査に時間がかかった」ことを理由に「本体施設の工事計画認可を起算点として5年の経過措置」に後退させたことが第一の誤りであった。

 その際に、特定重大事故対処施設(および常設直流電源設備)は「信頼性向上のためのバックアップ対策だから」などという恣意的な理由づけ(こじつけ)をしたことが第二の誤りである。そんなことは「規則」のどこにも書いてない。

4.どうしてこれら特定重大事故対処施設や常設直流電源設備が「信頼性向上のためのバックアップ対策」であろうか。

 福島第一原発事故を教訓とするならばこれらがすべて整って完成してはじめて基準を満たすもので、運転が許可されるべきものである。
 実際にも原子炉を運転させながら並行して隣で敷地内の大規模な土木工事や掘削を行い、大断面の鉄筋の組み上げや大量のコンクリート打ちを行うことは原子炉運転への注意を散漫とし、保守管理を低下させる。

5.三たびの後退・骨抜きは法的にも許されない。「原則として」というのも許されない。電力会社はコスト削減のためには基準の後退・骨抜き工作を常にやってくる。これをやったら再び「規制当局が電力の虜」になったと大宣伝する。

6.更田らは特重施設を新たな規制基準の既存施設への適用にすり替えて「バックフィット」の運用問題とリンクさせようとしている。

 経過措置は「バックフィット運用に関する基本的考え方」(2015年)の「重要性・被規制者が対応するために必要な期間等を総合的に判断して個別に設定する」ことを持って、その前段の「重要性」を「特重施設はバックアップ対策」と貶めた上で、後段の「事業者が対応するための必要な期間」を、「総合的・個別に判断する」ことに流す布石の兆候が見られる。
 加えて「継続的な安全向上」とか「直ちにリスクが増大する訳ではない」「個別に事情を説明したいと言うのを拒むものではない」などという言い訳は反応を見てどちらにも転がることができるための予防的言辞である。
 電力側から出されたパブコメに対する規制委回答「期限が近づいた頃に、事業者に対しその時点の状況を確認した上で、規制委員会として必要な措置を講じることが現実的と考えています」という回答自身に彼らにつけ入るスキを与えている。規制委は今後の圧力を受けて「現実的な措置」を考案する可能性が高い。
 最低でも「バックフィット運用に関する基本的考え方」の後半部「なお、安全上緊急の必要性がある場合には即時に適用することもあり得る」「経過措置期間満了後その時点で適用される基準を満足していない施設については運転の前提条件を満たさないと判断する」ことを堅持すべきであることを求める。

B.(背景)

1.難燃ケーブル基準の適用を見ても、そもそも安全系のみに限定してみたり、代替措置をずるずる認めてきたことで、規制委員会の本性は明らかである。40年原則の骨抜きなどはその典型である。法の文言の解釈さえねじ曲げてでも許可してゆく更田規制委委員会の本性は、東海第二の日本原電の経理的基礎の審査でも明らかである。

2.規制基準の体系そのものが「段階規制」(基準適合性審査・設置変更許可→工事計画認可→使用前検査…新検査制度)などという規制手順が誤りである。

 基準の内容においても、設計基準事故(DBA)・重大事故(SA)の区分や、安全系とか非安全系とかに区分して、非安全系だから適用不要などという理由に常に利用されてきた。規制基準の体系自体の中に、常にこうしたダブルスタンダードの構造や抜け道を潜ませており、電力側は常にそこにつけ入って基準の骨抜きを図ろうとする。

3.表向き「厳しい態度の規制委員会」vs 「甘く見ていた電力会社」という構図で報じられているが、それは表層的な攻防でしかなく、「これ以上の規制の骨抜き・後退を許さないぞ」という「国民大衆の厳しい目」が規制委の後退・妥協を封じることができる。

C.(規制委員会の常習性と対処)

1.規制委員会(更田)は、「腰砕け」がこれまでの常である。

2.電力側は政治勢力を使って、再び妥協・骨抜きの圧力を高めるであろう。腰砕けさせないで身動きできないような国民包囲、これ以上の後退を許さないための「最低限、法・規定を遵守しろ」の圧力が必要である。

D.(東海第二原発・日本原電への追撃)

1.東海第二原発は工事計画申請においても使用前検査においても、特定重大事故対処施設についてはまったく検討されておらず、昨年10月8日に工事計画が認可されて半年経ってもなお特重施設の工事計画の申請さえ出来ていない。他社の「見通しの甘さ」以前の状態である。

2.東海第二差止訴訟原告ら住民は昨年当初より「特重施設を含めれば3000億円が必要でしょ」と国にも日本原電にも追及し、重ねてパブコメで「今後さらに特定重大事故対処施設に500億〜1000億円必要であり経営の見通しはない」としたが、規制委はなんらの回答もないまま「1,740億円が資金調達できればよし」として再稼働を許可した。

 経営には資金調達能力の限度、借入限度というものがある以上、経過措置であろうがなかろうが「少なくとも」基準適合に係る総額3000億円超の資金調達ができるのかについて審査されるべきであった。
 適合性審査で本体施設の工事費用1,740億円の調達についてしか、しかも東電の支援を前提とした外形的審査しかしていない以上、振り出しに戻って審査の無効とやり直しを求める。

3.日本原電に対して「特重施設の設計・施工計画も準備もできておらず期限内工事完了ができる可能性も、その資金調達の確実性もない以上、早々に再稼働を断念せよ!」と迫る。「どう見ても無理ではないか?」という世論づくり・雰囲気づくりに向けて世論を喚起すると共に、6市村首長会議・県への働きかけで包囲する。

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