[2021_01_08_04]2020年の気象災害 トップ10の補償額は15兆円超(島村英紀2021年1月8日)
 
参照元
2020年の気象災害 トップ10の補償額は15兆円超

 2020年は世界的に地震や火山の被害が少なかった。これはたまたまで、地震や火山の被害は例年の被害は大きい。
 英国の保険組織によれば、危険度1位が東京と横浜、2位がニューヨーク(米国)、3位がマニラ(フィリピン)、4位が台北(台湾)、5位がイスタンブール(トルコ)、6位が大阪、京都と神戸、7位がロサンゼルス(米国)ということになっている。この調査は個人の安全性、サイバーセキュリティ、医療・健康環境、インフラの安全性を評価したもので、日本は地震のリスクゆえにランキングの高いところに入っている。
 2020年は地震や火山の被害は例年より少なかったものの、気象災害は多かった。
 1月にオーストラリアで発生した森林火災が制御不能になって拡大したことや、11月に大西洋での記録的な数のハリケーン、アジアでの洪水やアフリカでのバッタの大量発生などが大きかった。
 このうちサバクトビバッタが異常に繁殖し、農作物を食い荒らす被害が、アフリカ、中東、アジアの20カ国以上に広がった。このバッタは世界最古の害虫と言われ、旧約聖書やコーランにも登場する。体長5〜7センチメートル、体重約2〜4グラム。大きさや形から言えば、普通のバッタだ。
 だが、2018年の5月と10月、中東のアラビア半島の砂漠地帯を襲ったサイクロンのせいで、砂漠の地面が産卵に適した湿った状態になったので一気に繁殖した。
 バッタは人間の主食である小麦、コメ、キビ、アワを好んで食べる。バッタの大群は、たった1日で2500人分の食糧を食い尽くす。これらの炭水化物を多く食べることでバッタたちの成長は早まり、数が激増するのだ。
 この対策として殺虫剤を散布したために作物が売れなくなったり、残留した殺虫剤が原因で家畜の死亡が相次ぐという新たな問題が発生している。現地は踏んだり蹴ったりの状況なのである。
 バッタに限らず、これらトップ10の自然災害による死者数は少なくとも3500人にのぼる。また1350万人以上が避難を余儀なくされた。
 気象災害がこれほど多かったのは、地球の温暖化のせいである。1月にオーストラリアで発生した森林火災は制御不能なほど拡がったし、米国・カリフォルニア州の山火事もおびただしい住宅を焼いた。地球の温暖化にともなって海水温が上がり、ハリケーンや台風のエネルギーが増す。山火事も増える。アラビア半島の砂漠地帯に二度も上陸したサイクロンも地球温暖化のせいだ。
 災害でのトップ10の保険の支払額は15兆円を超えた。しかし損害の多くが保険外だった。このために実際の損失額は、はるかに多い。
 低所得国では気象災害に起因する経済的損失の4%にしか保険がかけられていなかった。一方、高所得国ではその割合は60%だった。つまり貧困国が大きな負担を負うのが災害の構図なのである。また、ひとつの国の中でも、環境災害は貧困層に偏って悪影響をもたらしているのだ。
 他方、カナダやグリーンランドなどには自然災害がほとんどない。うらやましい。
KEY_WORD:島村英紀_: