[2021_01_14_05]今年冬、全国(特に西日本)で電力不足問題が発生−寒波のため 3.11の教訓=東西間の融通が今も不拡大 「広域停電を防ぐために原発の再稼働と新増設を」との主張がはびこり出す 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年1月14日) |
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日経エネルギーネクストに「3.11以来の電力不足でも国が節電要請を出さないワケ」という記事が掲載されている。 年末年始から先週までに今シーズン最大の寒波が日本中に襲来し、特に西日本の電力受給割合が軒並み100%近くに迫った。 報道では主要な原因を「LNGの不足により国内供給力が減少したため」とした。設備はあるのに稼働できないということだ。 東京電力が95%のピークを記録した1月3日には、使用実績が3,728万kWにたいし、供給電力は3,908万kWだった。これは設備か稼働していないから高くなったことが分かる。 一方、1月12日に94%に達した時には5,094万kWに対して供給力は5,405万kWだった。これは今年一番の電力使用量に跳ね上がったことによる。 過去に広域で電力が逼迫したのは、3.11直後に東日本で計画停電が実施された時と、北海道地震により苫東厚真火力が停止した後に北海道で広域停電が起きたことに起因する電力不足に陥っていた時だ。 しかし今回はかなり様相が異なり違和感を持った。 3.11の際に教訓とされた、東西間(東電と中電)の相互融通が今も拡大されていない。 現在も断続的に発生している西日本電力不足の際も、多くは東電の供給力は80%台後半を維持している。 西日本への大規模融通が可能なら逼迫度はもっと緩和されたはずだが、東電の50サイクルから中部・北陸の60サイクルに直接は送電できないので、周波数変換設備を通さなければならない。 その容量は現状120万kWしかないのでは、原発1基分の電力しか西日本に送電できない。(*) (*)周波数変換設備(FC)は2020年度末までに新信濃FCを90万kW増強(120万kW→210万kW)するため現在、工事中。 さらに90万kWを増強(210万kW→300万kW)する計画だが、ルートは未定という。 このまま逼迫が続けば、いずれ広域停電を引き起こす。 しかし国は1月12日まで「節電要請」をしなかった。 コロナ自粛要請下でさらに電力消費も減らせとはいえないということか。 今の政府がいかに危機に対して脆弱かを、またも露呈した。 西日本豪雪の予報が出ていてもNEXCOに対して道路閉鎖の要請もしないから、またしても1000台以上の大規模な立ち往生が発生した。 2018年に福井県で起きた同種の事件の教訓として、除雪車を増やすなどしたらしいが通行車両を減らせなければ同じことは起こる。 事前の道路封鎖は公権力にしか出来ないことである。 いまのところ新聞論調では見られないが、いずれ「広域停電を防ぐために原発の再稼働と新増設を」との主張がはびこり出す。 いや、今回の広域逼迫はそれを狙っているのではないかと勘ぐりたくなるくらいだ。 広域停電被害をなくすためにも、小規模分散型の再生可能エネルギーと蓄電システムへの投資及び電力館の連携強化を電力会社に促す制度・仕組みを作らせなければならない。 コロナ感染爆発の影でブラックアウトの危機が今この国を襲いはじめている。 |
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