[2021_01_17_01]社説 柏崎刈羽原発 「再稼働ありき」では困る(新潟日報2021年1月17日)
 
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社説 柏崎刈羽原発 「再稼働ありき」では困る

 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働への地ならしともいえる動きが目立っている。心配なのは、多くの県民のあずかり知らぬところで、着々と準備が進んでいるのではないかということだ。
 再稼働問題は、県民の暮らし、命に大きく関わる重要課題である。「再稼働ありき」で県民が蚊帳の外に置かれるようなことがあってはならない。
 昨年来、国や経済界からの再稼働圧力とも受け取れる動きが強まっている。経済産業省資源エネルギー庁長官らが度々来県し、花角英世知事のほか県議会最大会派の自民党と接触した。
 12月中旬には東京商工会議所の三村明夫会頭が柏崎原発を視察し、「これなら安心との印象を強く持った。前に進むよう期待したい」などと語った。再稼働への後押しとみられる。
 知事は原発の安全性を巡る県独自の「三つの検証」が終わるまでは、再稼働に関する議論をしないとしている。だが、事実上再稼働に向けた動きが進んでいる印象を受ける。
 こうした状況に県はきちんと向き合おうとしているか。疑念を生じさせる出来事があった。
 昨年末、検証を取りまとめる総括委員会の池内了委員長(名古屋大名誉教授)の新潟市での講演の発言が波紋を広げた。
 池内氏は、県に提出する報告書に「再稼働の是非を(意見として)提示したい」と語り、県民と意見を交わすタウンミーティング開催の意向も示した。
 これに対し自民党県議が「越権行為」と反発、知事は県議会で「再稼働の是非判断やタウンミーティングは、(総括委に)求めていない」と語った。
 池内氏と知事との見解の相違は、総括委の役割について県側が整理しきれていないことを物語ってはいないか。
 県の三つの検証は終盤に差し掛かった。東電福島第1原発事故の検証を進めた県技術委員会や、健康・生活委員会の生活分科会が報告書をまとめ、ほかも取りまとめや論点整理が進む。
 知事が繰り返してきた言葉を裏返せば、検証の終了を受けて再稼働議論を始めるということだ。検証が区切りに向かう中での混乱は、議論の準備ができているのか不安を抱かせる。
 三つの検証結果について知事は「県民と広く情報共有する」と説明した。では、どういう形で県民と情報共有するのか。
 知事は県議会の意見も聞き、再稼働の是非を巡る判断を示すという。自らの判断について「県民の信を問う」と公約しているが、その機会や方法、時期については示されていない。
 柏崎刈羽原発7号機は原子炉起動前に必要な検査が4月に終わる。今後の焦点は県や自治体が再稼働に同意するか否かだ。
 今年で発生から10年になる福島第1原発事故は、原子力災害による被害の深刻さを示した。
 再稼働を巡る知事の判断の妥当性を県民がチェックするためにも、県民が主体的に再稼働問題について考える環境づくりが大切になる。知事や県はそのことを肝に銘じてもらいたい。
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