[2021_01_26_02]福島第1原発 2、3号機の格納容器上部で約2〜4京ベクレル 原子力規制委調査(毎日新聞2021年1月26日)
 
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福島第1原発 2、3号機の格納容器上部で約2〜4京ベクレル 原子力規制委調査

 東京電力福島第1原発事故について、原子力規制委員会は26日、2、3号機で丸いフラスコ状の「原子炉格納容器」上部の蓋(ふた)に当たる部分が、極めて高濃度の放射性物質に汚染されていたという調査結果の中間報告書案を明らかにした。格納容器内の底部などにある溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)周辺と同程度の放射線量で、廃炉作業の遅れなど影響が懸念される。

【福島第1原発の汚染水処理の流れ】

 規制委は2013年から原発事故の調査や分析をしていたが、核燃料が溶け落ちる「メルトダウン(炉心溶融)」が起きた1〜3号機内は放射線量が高く人が入れないため、調査を中断。放射性物質に汚染されたがれきが撤去されるなどして線量が下がり、19年10月に再開していた。
 報告書案によると、蓋の部分は「シールドプラグ」と呼ばれ、円盤状で3枚重ねになっている。2号機の蓋の内側部分に付着したセシウムを推計したところ、約2京〜4京ベクレル(京は兆の1万倍)、3号機では約3京ベクレルになった。放射線量は毎時10シーベルト前後とみられ、近づくと1時間以内に死ぬほどの強さだ。
 大量のセシウムが付いた理由については、原発事故直後に蓋の部分で受け止めたためで、屋外に漏れるのを防ぐ役割を果たしていたと結論付けた。ただ、1号機は2、3号機より少ない約160兆ベクレルだった。水素爆発により、蓋の部分が変形した影響とみられる。
 蓋の部分は、1〜3号機とも直径約12メートル、厚さ約60センチの鉄筋コンクリート製。規制委の事務局がある原子力規制庁の担当者は「大量のセシウムは予想していたが、ここまで集中した汚染は想定していなかった」と話した。人が近づけないことから、廃炉作業で動かすのは困難な状況という。
 規制委の更田(ふけた)豊志委員長は「燃料デブリがずいぶん高い所にあるようなもの。(作業中、放射線の影響を防ぐための)遮蔽(しゃへい)をどうするのか」と廃炉作業の課題を指摘。東電の担当者は「蓋の部分をどうするかは見通しが立っておらず、今後検討したい」と話した。
 一方、3号機の水素爆発について、事故当時の映像を分析したところ、爆発が連続して起きていたことが明らかになった。これまでの原発では想定されていなかった水素以外の可燃性のガスの発生が考えられ、今後の安全対策ではそうしたガスも考慮した議論が必要になりそうだ。
 報告書案では、政府の事故調査・検証委員会や東電が「複数回成功した」と評価した3号機のベント(排気)にも触れ、原子炉内の圧力のデータなどから「不完全な形で2回実施されただけだった」とまとめた。ただ、不完全なベントでも圧力は下がっていたことから、事故の進展への影響は考えにくいという。
 報告書案は今後、意見公募(パブリックコメント)などを経て、正式にまとめられる。規制委は、今後も調査を続けていく。【塚本恒】

 ◇「不測の事態」どう対処 電力会社に課題

 福島第1原発事故では、津波による停電やメルトダウンの影響で原子炉内の温度や圧力、原子炉を冷やす水の水位といった主要なデータを観測器で十分に測れなかった。このため、事故時に何が起きていたのかを解明する際のハードルになった。
 水素爆発を起こす前の1号機では、水位計の誤表示や運転員の研修不足もあり、炉心を冷やす「非常用復水器(IC)」を機能させなければならないのに、止めたままにしてしまっていた。観測器が事故で厳しい状況の中でもデータを測れるよう国の規制が強化された。
 今後は万が一の時、実際に機能させられるのかが課題になる。牟田仁・東京都市大准教授(原子力安全工学)は「不測の事態が起きた時、国も電力会社もどう対処するかを考え続けなければならない」と指摘した。【塚本恒】
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