[2021_01_30_03]大雪で原発から避難できるのか 柏崎刈羽近くの住民「実効性ある計画を」(毎日新聞2021年1月30日)
 
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大雪で原発から避難できるのか 柏崎刈羽近くの住民「実効性ある計画を」

 今冬の記録的な大雪で、厳冬期に東京電力柏崎刈羽原発からの避難ができるのかという疑問が、原発近くの住民から出ている。新潟県が2019年に策定した広域避難計画では、積雪による交通障害の影響は考慮しておらず、多数の住民を避難させられるかが改めて問われる事態になっている。【内藤陽】

【福島第1原発の汚染水処理の流れ】

 「先日の大雪でも本当に逃げられるのか、私たちにとっては切実な問題だ」。柏崎刈羽原発から5キロ圏(PAZ)に暮らす柏崎市と刈羽村の住民団体が29日、積雪時でも避難できる実効性ある計画の策定などを求めて記者会見した。近く、県、市、村などに大雪時の避難に関する要請書を送る。
 PAZは原発の重大事故時に、自家用車やバスなどで住民の即時避難が求められる区域。柏崎刈羽では、柏崎市と刈羽村にまたがる区域に約2万人が暮らしている。高齢者ら要支援者も多い。
 団体によると、この大雪で3日ごろから生活道路の通行障害が発生。8日から積雪が急増し、除雪が間に合わず、外出もままならない状態が1週間近く続いた。JRやバスは運休し、小中学校も臨時休校。15日ごろからかろうじて通行できるようになったが、この間通行止めや渋滞が発生し、融雪でスタックする車が続出した。PAZ内は山あいに比べて雪は少ないものの、過去にも1メートルを超える積雪を観測したところがあるという。
 住民から「今何をすべきか意見交換しよう」との声が上がり、2度の会合を経て、住民約20人が参加する「原発事故即時避難5キロ圏(PAZ)住民の会」(吉田隆介共同代表)を結成した。吉田さんは「(大雪では)車庫から車が出せないし、出せても移動できない。どうやって即時避難すればいいのか、行政には腰を据えてしっかり議論してほしい」と訴えた。
 県などは、地域住民も参加した冬季では初となる避難訓練を、市内の山あいで26日に実施した。陸上自衛隊の大型雪上車や県の防災ヘリコプターなどを使い、孤立したという想定の集落から実際に住民を避難させた。
 しかし同団体は「PAZではこの訓練は役に立たない」と指摘する。今回の訓練は原発から30キロ圏のUPZで実施した。この区域では住民はまず屋内退避をして、放射線量が上昇した区域の住民だけを域外避難させる。しかしPAZでは全住民を即時避難させるため、避難までの時間が少なく、対象の住民も多数に上るためだ。吉田さんは、「冬季訓練自体は否定しないが、こちらはすぐに避難しなければならないのにそれができない。避難が困難と判断するなら再稼働はしないでほしい」と訴えた。
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