[2021_01_31_01]破損、ゼオライト散乱 除去の見通し立たず 第一原発建屋地下の土のう(福島民報2021年1月31日)
 
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破損、ゼオライト散乱 除去の見通し立たず 第一原発建屋地下の土のう

 東京電力が福島第一原発事故発生当初、汚染水から放射性物質を吸着するために二つの建屋地下に投入した鉱物「ゼオライト」の土のうが劣化し、破損していることが明らかになった。東電は遠隔操作のロボットを使い、土のうを回収する方針を決めた。しかし、土のうから水中に散乱した高線量のゼオライトを除去する方法は固まっていない。事故発生から間もなく十年となる中、新たな課題として浮上している。
 高線量のゼオライトの土のうは、原発事故発生前に廃棄物処理建屋の設備操作室があった「プロセス主建屋」と保温材などを焼却し減容化していた「高温焼却炉建屋」の地下の水中に沈んでいる。
 東電は事故発生直後、溶融核燃料(デブリ)の冷却で大量に生じた汚染水をためるため、二つの建屋を貯水槽代わりにした。ゼオライトは汚染水の濃度を下げるため緊急的に投入され、プロセス主建屋に十六トンの約八百袋、高温焼却炉建屋に十トンの約五百袋残る。
 土のうの一部は破損し、中身が流れ出ている。劣化の度合いは置かれた場所や部材の違いで異なり、全てを取り除くためには詳細な状態把握が急がれる。
 土のうの表面の放射線量は最高で毎時三〜四シーベルトで、一時間浴びれば半数の人が亡くなるほど極めて高い。
 東電はロボットの遠隔操作による(1)水中回収(2)気中回収(3)地下階への仮置き(4)グラウト注入による固化−の四つの手法を検討し、放射性物質の飛散防止などを目的に水中回収に絞り込んだ。
 水中回収は遠隔操作のロボットで土のうを集め、地上階に送って脱水後、保管容器に詰める計画。四月にも基本設計に着手し、二〇二三年度以降の作業開始を予定している。
 その後、汚染水を抜き取る計画だが、水中はゼオライトなどの細かな粉末で濁っている上に、土のうに触れると堆積物が舞い上がる。東電は、英国などでの水中での放射性廃棄物の回収実績を基にする考えだが、水中に散らばったゼオライトに対応できるかは不透明だ。
 政府と東電は、放射性物質トリチウムを含んだ処理水の処分方針決定を急ぐが、この他にも建屋にたまる汚染水、ゼオライトなどの放射性廃棄物、使用済み核燃料の処分など課題は山積している。
 原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志委員長はゼオライトを例に挙げ、放射性廃棄物の処分に関する検討に着手するよう東電に求めている。
 原子力規制庁東電福島第一原発事故対策室の竹内淳室長は「ゼオライトをはじめ、放射性廃棄物の処分や搬出に関する検討は廃炉の完了に向けて重要。全てのゼオライトを除去するためにも、東電は事前の想定を十分に積み重ねるべき」と指摘する。
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