[2021_02_18_06]柏崎刈羽原発不祥事のもっと重大なこと… 「安全対策工事の未了が把握されていなかった」ことのほうがはるかに重大で危険性がある 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)〕(たんぽぽ舎2021年2月18日) |
参照元
◎ 2021年1月に発覚した柏崎刈羽原発での一連の不祥事に関して「ID不正入室」が強く批判されているが、さらに2月15日には7号機の安全対策工事が終わっていない箇所が「総点検」によって新たに発覚したことが報じられた。 私は原子力ではないが発電プラントの設計や運転の経験があるが、その現場感覚からいうと「ID不正入室」ばかりが大きく取り上げられることはむしろ不自然に感じている。 ◎ たんぽぽ舎の2/17メールマガジン【TMM:No4130】では、東電新潟本社の橋田代表がそれを把握していなかったことが批判されているが、実際に現場では大した問題ではないと認識していたのだろう。 「ID不正入室」は今回発覚しただけではなく、また柏崎刈羽に限らず、また東電に限らず至る所で日常的に行われていたと思う。他の原発あるいは他社でも今ごろ大あわてで隠蔽工作が行われているのではないか。 ◎ 中央制御室に不正入室というと「不審者が中央制御室に侵入して制御装置を勝手に操作して原子炉を暴走させる」といったシナリオが思い浮かぶが、それはあまり現実的ではない。 というのは現場では「顔パスが最も確実」だからである。 今回も不正入室といっても顔見知りの社員同士であり、不審者が侵入したわけではない。 ◎ そもそも制御室から故意に原子炉を暴走させるには、多くの制御機能を同時に操作しなければならないし、でたらめに操作をしても緊急停止シーケンスが働いてしまう。 どのスイッチや計器がどこにあるかなどを熟知していなければ操作もできない。かりに本当に破壊工作を企む者がいたとすれば、そんな悠長な方法ではなく別の方法を実行するだろう。 もちろん故意に原子炉を暴走させるには自爆覚悟である。 ◎ それよりも「安全対策工事の未了が把握されていなかった」ことのほうがはるかに重大で危険性がある。 何かの緊急事態が起きた時、ある装置がついていることを前提として操作員が判断・操作をしていたら、実際にはその装置が存在していなかったなどということになったら、意図に反した事態が展開してお手上げになるからである。 私がチェックしたかぎりこの問題に触れた報道はない。 「不正入室」のほうがニュース価値があることはわかるが、より本質的な報道が望まれる。 |
KEY_WORD:柏崎_他人ID不正入室_:KASHIWA_: |