[2021_02_18_09]プルトニウム抽出 年最大「8トン」->「7トン」->「6.6トン」 六ヶ所再処理 数値変遷なぜ 識者「根拠のデータ示せ」(東奥日報2021年2月18日)
 
 日本原燃・六ヶ所再処理工場が本格稼働した際のプルトニウム抽出量を巡り、事業者や国が示す数値が変遷している。再処理工場で年間最大800トンの使用済み核燃料を処理した場合、事業指定を申請した1989年当時の抽出量は1%に当たる約8トンだったが、その後約7トンに下方修正、本年度は約6・6トンに変わった。使用済み核燃料の燃焼度低下や冷却期間の長さが要因とされるが、根拠となる詳細なデータは明らかになっていない。余剰プルトニウムに起因する管理の厳格化が叫ばれる中、識者からは事業者や国に明快な説明を求める声も出ている。
 「800トン再処理するとプルトニウムが6・6トン出る。プルサーマルで消費して、増えないようにするには12基(の原発)稼働が必要」。電気事業連合会の池辺和弘会長は新たなプルサーマル計画を公表した昨年12月、再処理工場完工を見据えた原発稼働にっいて、こう報道陣に強調した。
 再処理工場のプルトニウム抽出量は、各原発から搬入した使用済み核燃料の燃焼度などを基に算出する。原燃によると、再処理事業指定を国へ申請した89年3月時点では、設計ベースで平均燃焼度を4万5千MWd/tUと推定して抽出量を約8トンと試算。その後、実際に搬入された使用済み核燃料の燃焼度が想定よりも低かったことから、2010年2月の事業変更許可申請以降は、平均燃焼度を4万5千MWd/tUよりも低く見積もり、抽出量を約7トンとしていた。
 一方、本年度の「公称」約6・6トンは原燃発の数字ではない。昨年5月の衆院原子力問題調査特別委員会で、経済産業省電力・ガス事業部の村瀬佳史部長(当時)が、国会答弁で初めてこの数値に言及。当時は県関係者はもちろん、原燃ですら「この数値は初耳」だったという。
 同省は本紙取材に、使用済み核燃料の燃焼度や経過した時間を踏まえ、約6・6トンと割り出したと説明。「従前は約7トンと丸めた数字を言っていたが、説明ぶりを日々見直す中で実際はどれぐらいなのかと計算した。処理能力が減ったというわけではない」(担当者)とした。原燃は、使用済み核燃料が貯蔵プールで冷却されている点にも触れ「核物質には半減期があリ、冷却期間によって多少減少する」(原燃報道部)と補足する。
 現在、約45・5トンのプルトニウムを保有する日本。プルトニウムを原発で燃やすプルサーマル発電が停滞する中、新たなプルトニウムを生み出す再処理工場の本格稼働を見据え、国際社会の視線は厳しい。
 再処理工場の年間プルトニウム抽出量は当初の約8トンから30年余の歳月を経て単純計算で約1・4トン減少。保有と削減のバランスに寄与する形だが、約6・6トンの根拠となる燃焼度などのデータについて、事業者などは詳細を明らかにしていない。さらに、原燃によると、燃焼度は各原発の運転条件によって変動するため、抽出量が今後増減する可能性もあるという。
 かつて原子力委員会で委員長代理を務めた、長崎大学の鈴木達治郎教授は取材に、燃焼度の低下や冷却期間の影響で抽出量を約6・6トンとした妥当性を認めた上で「抽出量が減ればプルトニウムバランスも変わってくる。プルトニウムの適正管理の観点から、再処理工場の回収(抽出)量がいくらなのか、その前提となる燃焼度の低さなど正確な数字を公開するのが筋だ。機微情報ではなく、隠す必要はない」と指摘した。
(安達一将、佐々木大輔)
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