[2021_02_20_06]福島原発千葉訴訟控訴審判決−東京高裁で東電と国の責任を認める 地震本部公表の長期評価は科学的で評価できる対策を講じていれば、電源喪失には至らなかった 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年2月20日)
 
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福島原発千葉訴訟控訴審判決−東京高裁で東電と国の責任を認める 地震本部公表の長期評価は科学的で評価できる対策を講じていれば、電源喪失には至らなかった 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

○2月19日、東京高裁、白井幸夫裁判長は福島県から千葉県に避難した住民ら17世帯43人が、国と東電への損害賠償請求訴訟控訴審判決で、東電にだけ賠償を命じた一審の千葉地裁判決を覆し、国の法的責任をも認める逆転判決を下した。
 国が東電に対する規制権限を行使しなかったことを「違法」としたうえ、東電に計約2億7800万円の賠償を命令、そのうち約1億3500万円については国と連帯して支払うよう命じた。
 原発事故の避難者らが国と東電を訴えた集団訴訟は全国で30件で、高裁判決は3例目。国の責任について認めたのは、昨年9月の仙台高裁に続き2件目。

○判決では2002年の地震調査研究推進本部が公表した長期評価につい「相応の科学的信頼性のある知見であると評価できる」とし「経済産業大臣としては、長期評価が公表されたしかるべき時期に、東電に依頼するなどして長期評価に示された見解に依拠して福島県沖で発生する可能性のある地震による津波の評価をしていれば、福島第一原発に敷地高を大きく超える津波が到来する危険性があることを認識できた。」「防潮堤の設置やタービン建屋や重要機器室の水密化は想定でき、対策を講じていれば、電源を喪失する事態には至らなかったと認めるのが相当だ」と指摘した。
 そして避難についても「元の居住地へ帰還するか」「帰還を断念するか」といった「意思決定をしなければいけない状況に置かれること自体」が「精神的な損害だ」と認定し、避難生活に対する慰謝料に加えて、生活基盤が変わったことについても賠償する必要があると判断した。
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○【TMM:No4110】2021年1月20日(水)地震と原発事故情報−で紹介した
『★1.国の責任問う原発訴訟、「本丸」高裁判決の行方 判決次第では、国の原発政策は行き詰まりも 岡田広行さん(東洋経済解説部コラムニスト)の最新記事を紹介します』
 において「国や東電が恐れていること」として書かれた最後の文章を紹介する。
『なお、高裁判決で国や東電の責任や損害賠償が認められた場合、これまでに国が定めた賠償の目安である「中間指針」の見直し論が国政の場で持ち上がる可能性も高い。指針の見直しが実現した場合、さまざまな事情によって裁判を起こすことのできない大半の被災者への賠償額の上積みにもつながる。国や東電が恐れているのはそのことにほかならない。柏崎刈羽原発の再稼働にも影響が及びかねない。』
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