[2021_03_12_03]3・11東電福島第一原発事故から10年 事故原因について…「重要機器の地震による損傷」は「可能性」のままで確定されていない 蓮池透(新潟県在住)(たんぽぽ舎2021年3月12日)
 
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3・11東電福島第一原発事故から10年 事故原因について…「重要機器の地震による損傷」は「可能性」のままで確定されていない 蓮池透(新潟県在住)

項目紹介

1.事故原因の究明・対応の検証
2.損害賠償
3.廃炉作業
4.汚染水
5.再稼働ありきの新規制基準
6.原発再稼働とエネルギー政策

1.事故原因の究明・対応の検証

・4つの事故調査委員会:国会、政府両事故調では、継続調査の必要性を提言。
・国や東京電力などの関係機関が、真剣にフォローアップせず。
・国会事故調:「安全上重要な機器の地震による損傷の可能性も否定できない」
 新潟県検証委員会:「重要機器が津波だけでなく、地震の揺れで損傷した可能性がある」
・申し訳程度の原子力規制委員会の「東京電力福島第一原子力発電所における事故分析に係る検討会」は道半ば。
・未だに「重要機器の地震による損傷」は「可能性」のままで確定されていない。

2.損害賠償

・東京電力:「最後の一人まで賠償貫徹」(「3つの誓い」の1番目)
・被害者の方々の間には不公平感が生じ、対立や分断が起きている。
・政府は避難指示を次々と拙速に解除。
・「復興」のイメージ付けと補償負担の削減を睨んだ施策。
・その仕上げが「復興五輪」:どこが復興なのか、復旧さえほど遠い!
・帰還した住民は10%台にも満たない。
 「安全神話」が崩壊して「復興神話」が跋扈(ばっこ)。
・切り捨てられた自主避難者:現在の正確な避難者数は国も地方自治体も把握していない。
・全国で約30件ある集団訴訟:3件は高裁判決;国と東京電力の責任を認めたのは2件。
・東京電力の賠償支払額の累計(除染費用を含む)は、2021年2月現在で9兆7338億円に上り、来年度には10兆円を超える見通し。
・東京電力及び新電力を含む電力会社が払う負担金で返済され、多くは電気料金に転嫁。
・福島第一原発事故に係る「消滅時効」は10年であり、3月11日でちょうど10年。
・東京電力は、「消滅時効に関して柔軟な対応をする」としているが、果たしてその決意は実行されるか?

3.廃炉作業

・燃料取り出し2021年内開始:30年〜40年で廃炉を完了。
・超超楽観的な計画:廃炉は今世紀中には完了しない。
・燃料デブリの取り出しは、ロボットなどを使った遠隔操作。
・ロボットによるトライアル:約880トンの燃料デブリをいわば耳かきで収集。
・取り出し技術はいつ実現:初号機の技術が他号機に適用できる保証はない。
・廃炉作業は遅々として進まず、自ずとスケジュールは延び延びになるのは自明。
・先日ようやく3号機の使用済燃料の取り出しが終了したばかり。
・更田委員長も、「最終完了の時期をうんぬんするのはまだまだ先だ」と認めた。

4.汚染水

・汚染水の貯蔵量は2月18日現在で約124万7千トン:一般のドラム缶に換算すれば約620万本、皇居のお堀の水の約2.6倍。
・国や東京電力は、海へ希釈・放出したいのが本音。
 汚染水を「処理水」と言い換えるのは、「風評被害」対策検討と同義。
・地元の漁協組合等の了解を得れば良いという国内に限った問題ではない。国際問題だ。
・なぜ海洋放出か大気放出かの二者択一なのか?
・石油コンビナート級の大型タンクでの長期保管という選択肢もあり。
・希釈して30年をかけて海洋放出するのであれば、大型タンク貯蔵でトリチウムの減衰を待てばいい。
・事故後10年が経過しても、漁獲されたクロソイから、500ベクレル/kgの放射性セシウムが検出されたばかり。
・貯蔵タンク設置に限界?
 敷地北側には7、8号機建設予定地や、敷地外にも広大な土地あり。
・再稼働のための安全対策工事に要する何兆円ものお金を、汚染水の「無毒化(トリチウム除去)」研究開発に充当するべきではないか!

5.再稼働ありきの新規制基準の策定

・新基準はわずか1年で策定:相変わらず第5層は対象外、「安全基準」を「規制基準」と言い換え、事故の原因さえ特定されておらず、教訓とする材料もないまま。
・世界一厳しい基準はウソの「対症療法基準」:
 「コア・キャッチャー」や「二重格納容器」の設置はなし。
・事故は、原発の抱えるアキレス腱を露呈し、テロリストにとって格好のヒントを与えた。
・「テロ対策」にも踏み込んだとされるが、特定重大事故等対処施設(特重施設)を設置すること、それも「執行猶予」5年で、お茶を濁した。
・原発の「テロ対策」について包括的な規制基準になっていないどころか、法令上も体系的な整備がなされていない。日本の対策は脆弱そのもの。
・原発運転期間40年ルールの例外的延長は、致命傷。

6.原発再稼働とエネルギー政策

・電力供給安定化、カーボンニュートラルを理由に再稼働。
・BWR急先鋒の東京電力の再稼働。
・保安規定に「7つの約束」という精神論を記載するという異常な対応でようやく認可。
・内部通報により、IDカードを不正利用した中央制御室入室が公に。
・その最中に行われた安全対策工事完了に伴う住民説明会実施期間中に工事未完了が発覚、説明会終了後も未完了が次々と明らかに!
・これらにより、住民の東京電力に対する信頼感は地に堕ちた
・保安規定、核物質防護規定に抵触する:柏崎刈羽の再稼働は、新潟県知事の同意を前にして、暗礁に乗り上げた。
・原発依存であるが故にアップデートされないエネルギー政策。
・この冬の厳寒で年初電力が逼迫:原発が3基しか稼働していなかったのが原因ではない。
・原発に依存するあまり、エネルギー政策を現実的なものにアップデートすることができない構造的な問題が根幹。
・電力自由化が大きく影響:価格競争が激化し、燃料や設備を余剰に持てないことや、原発再稼働に期待して、供給余力となる老朽火力発電所などを閉鎖したことも要因の一つ。
・安倍政権の2014年策定のエネルギー基本計画:原発を30年度時点で比率20〜22%とする目標:一方で経産省は電力自由化を推進。
・再生可能エネルギーを主力電源とする方針を掲げるも固定価格買い取り制度(FIT)を市場連動型へと抜本的に見直すどっちつかずの政策。
・早急に原発依存から脱却し、確固たるエネルギー政策を掲げ、電力会社に設備投資のインセンティブを与え、健全な電力市場を保つことが電力供給の安定化にとって必須事項。(了)
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