[2021_03_20_14]脱原発の小泉元首相が語る「経産省から抗議ない」ワケ(毎日新聞2021年3月20日)
 
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脱原発の小泉元首相が語る「経産省から抗議ない」ワケ

 「経済産業省の幹部から抗議が来るかと思ったが、一人も来ないね。なぜか。私が言ってることが本当だからだ。ケイサン(経産)省はケイサン(計算)違いをしている」。いつにも増して、小泉純一郎元首相の弁舌は滑らかで、会場を沸かせた。【毎日新聞経済プレミア・川口雅浩】
 2021年3月11日、東京・永田町の憲政記念館。小泉氏は自身が顧問を務める「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」主催の「福島原発事故から10年」と題したオンライン会議で講演した。

 ◇「全部ウソとわかった」

 小泉氏が「抗議が来るかと思った」というのは、原発はコストが安く、クリーンで安全という、経産省の主張に対し、「この三つの大義名分は全部ウソだとわかった」と、これまで全国各地の講演で主張してきたからだ。
 経産省の「計算」とは、東京電力福島第1原発事故後の15年に行ったコスト計算のことだろう。同省は安全対策や事故処理など「さまざまなコストをすべて盛り込んでも、原発は石炭火力など他の電源よりなお安い」と主張している。
 これに対し、小泉氏は「最近、東電は何と言っているか。損害賠償や廃炉にカネがかかるので、国に支援してくださいと言っている。原発は安いどころじゃない」と語気を強めた。
 これは東電の原発事故の賠償や除染にかかる費用が膨らんだため、政府が16年に事故処理費用の見積もりを従来の11兆円から22兆円に倍増し、東電など大手電力だけでなく、原発のない新電力にも負担を求めたことを指している。

 ◇「原発ゼロでやっていける」

 さらに小泉氏は原発から出る使用済み核燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃棄物について「今までに出てきた核のごみの処分だけでもたいへんなのに、電力会社は捨て場所を考えないでやってきた。これはもう、どうかしている」と、政府や電力会社の対応を批判した。
 小泉氏は「日本は原発ゼロでやっていけることを事実が証明している。やればできる」とも述べた。
 これは福島の原発事故後、国内では13年9月〜15年8月まで約2年間、原発が全基停止したが、電力需給に問題がなかったことを指している。小泉氏は「その間、北海道から九州まで停電ゼロ。原発ゼロでも停電などない」と語った。
 会場には鳩山由紀夫、菅直人の両元首相が訪れ、講演後、小泉氏と握手を交わした。このほか、細川護熙、村山富市の両元首相がメッセージを寄せ、日本は脱原発と自然エネルギーを推進すべきだとする「元首相5名による3.11宣言」を行った。
 この中で小泉氏は「原発問題に与党も野党もない。多くの国民の生命を危機にさらし、経済的にも破綻し、解決不可能な核廃棄物問題を抱える原発はなくすしかない」と主張。「私たちは日本政府に今一度、福島第1原発事故の教訓を踏まえ、原発ゼロと自然エネルギー推進に向けて大きくかじを切ることを強く要請する」と締めくくった。
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