[2021_03_22_01]2021年3月20日宮城県沖の地震の評価(地震調査委員会2021年3月22日)
 
参照元
2021年3月20日宮城県沖の地震の評価

発令和3年3月22日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

2021年3月20日宮城県沖の地震の評価

○3月20日18時09分に宮城県沖の深さ約60kmでマグニチュード(M)6.9(暫定値)の地震が発生した。今回の地震により宮城県で最大震度5強を観測し、被害を伴った。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。

○その後、M6.9の地震の震源を含む東西約30q、南北約30qの領域で、3月22日18時までに最大震度1以上を観測した地震が26回発生するなど、地震活動は継続している。22日18時までの最大の地震は、20日18時13分に発生したM4.2(暫定値)の地震である。

○GNSS観測の結果では、今回の地震に伴って、宮城県登米(とめ)市の南方(みなみかた)観測点と栗原市の高清水(たかしみず)観測点が東南東にそれぞれ2cm強移動するなどの地殻変動が、宮城県を中心に広い範囲で観測された。

○今回の地震の地震活動の分布やGNSS観測及び地震波の解析結果から、震源域は牡鹿(おしか)半島沿岸から沖合にかけての領域と考えられる。この震源域は、1978年宮城県沖地震(M7.4)の震源域の西側の一部に重なる可能性があるが、詳細は今後の調査観測結果等を踏まえさらに検討を行う必要がある。

○揺れの強かった地域では、地震発生から1週間程度、最大震度5強程度の地震に注意するとともに、さらに強い揺れをもたらす地震が発生する可能性もあるので注意が必要である。特に地震発生から2〜3日程度は、規模の大きな地震が発生することが多くある。

○今回の地震は、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(以下、東北地方太平洋沖地震)の余震域で発生した。余震域内の地震活動は全体として東北地方太平洋沖地震前の状態に近づきつつあるが、1年あたりの地震の発生数は、依然として東北地方太平洋沖地震前より多い状態が続いており、現状程度の地震活動は当分の間続くと考えられる。

○「日本海溝沿いの地震活動の長期評価(平成31年2月26日公表)」(以下、長期評価)では、日本海溝沿いの領域は、国内の他の海溝沿いの領域に比べて定常的に地震活動が活発で、規模の大きな地震が高い確率で発生すると評価している。今回の地震の震源域は、長期評価で評価対象領域としている宮城県沖の西端に位置しており、宮城県沖の陸寄りの領域では、一般に「宮城県沖地震」と呼ばれるM7.4前後の繰り返し発生するひ生する確率はIIIランク(*)と評価され、海溝型地震の中では発生する確率が高いグループに分類されている。なお、宮城県沖では、この他に、M7.0〜7.5程度のひとまわり小さいプレート間地震が30年以内に発生する確率はIIIランク、M7.9程度のプレート間巨大地震が30年以内に発生する確率はIIランクと評価されている。さらに、東北地方太平洋沖地震の余効すべりによる応力変化の影響で、これらの地震がより発生しやすくなったと考えられることなどから、確率はより高い可能性がある。

○以上のような状況を踏まえて総合的に判断すると、今後も長期間にわたって東北地方太平洋沖地震の余震域や内陸を含むその周辺で規模の大きな地震が発生し、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性があることに注意が必要である。

○なお、2004 年に発生したスマトラ島北部西方沖の地震(モーメントマグニチュード(Mw)9.1)では、3ヵ月後にMw8.6、約2年半後にMw8.4、約5年半後にMw7.8、約7年半後および約11 年後に海溝軸の外側の領域でそれぞれMw8.6 及びMw7.8 の地震が発生するなど、震源域及びその周辺で長期にわたり大きな地震が発生している。また、M5.0以上の地震の発生数は、2004年のMw9.1の地震発生から16年経過後も、地震発生前よりも多い状態である。

*:海溝型地震における今後30年以内の地震発生確率が26%以上を「IIIランク」、3%〜26%未満を「IIランク」、3%未満を「Iランク」、不明(すぐに地震が起きることを否定できない)を「Xランク」と表記している。
注:GNSSとは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般をしめす呼称である。(後略)
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